表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
234/316

笑顔でバイバイ

 ◆ ◆ ◆



 やっとここまで帰ってきた〜、なんか途轍もなく旅をした感覚だよ〜。


 バラガの町を出発してから三日、私達はレギザイール王国の城下町へと続く街道を歩いている。すでにレギザイール城が目と鼻の先に見えるところまで来ている事もあり、行きかう人達の数がちょっとした町の大通り並みとなっております。

 ふぁ〜と大きく伸びをした後、トロ達を見やります。


「たしかにあの時、告白されてたよね? ね?」

「あれは違うと……思います」


 さっきからトロがドリルをからかっている。この話題は何回目だろうか。思わず、はぁ~、と溜息が出ちゃいます。

 あの子達、あの時はあんなに息が合ってたのに。


 そう、ネクロマンサーであった黒布がヒラヒラと舞い逃げ出そうとした時、ドリルが追いかけ特大のジャンプをした。しかし攻撃は避けられてしまう。そこへトロが、どうにかしろー、っと叫びながら上空へ矢を次々と射り、絶妙の位置とタイミングで放たれた矢をまるで階段を駆け上るかのように足場にしたドリルが、ついにはその燃え盛る拳を黒布に当て焼き尽くしたのだ。

 あの時の二人のコンビネーションと技術は、曲技ならぬ極技だったですよ。

 そんな事を考えていると、いつの間にか城門を潜っておりレギザイールの城下町内に入っていた。


「……んでさ、そこにはメニュー表に載ってない料理があって、ってドリル聞いてる? 」


 トロの問いかけに、ドリルは思いつめた表情を見せている。そして立ち止まるとーー。


「パラディン様! 」


 ひときわ大きな声で、先頭を行くパラディン隊長を呼び止めた。


「ドリルさん、どうされましたか? 」


 優しく声をかける隊長に、ドリルが緊張をした面持ちで、しかし真っ直ぐな瞳で話し始める。


「ボク、軍に戻らないといけないので、……この辺でお別れになります」

「そうですか、……それでは無理をせずにお体を大切にされて下さいね。それと皆さんによろしくお伝え下さい」

「はい! 」

「それとドリルさんには申し訳無いことをしました。私達のせいで色々な厄介事にーー」


 隊長の話が長くなると察した私は、ドリルの背後から頭に手を乗せると、彼女の髪の毛を揉みくちゃにして話を引き寄せる。


「ドリル、いつでも遊びに来るのよ」

「はい、ミケ様」

「ドリル! 」


 少し離れたところで立ち止まっているトロが、俯きながら少し照れくさそうに話し出す。


「私達は……友達なんだから、レギザイールにいる時は顔ぐらい出しに来なさいよね」

「待ってる……よ」


 トロと蜘蛛の言葉に、ドリルは薄っすらと涙を浮かべる。


「……トロ様、クモ様」


 ドリルは飛びっきりの笑顔を作ると、城に向かって歩き出した。そして十数歩進んだあたりで立ち止まると、勢いよくこちらに振り返った。

 その場で元気よく手を振るドリルの笑顔に、涙が流れた。涙を拭うとまた城へと歩き始めた彼女は、その姿が見えなくなるまでこちらを向いたまま私達のほうへと手を振り続けた。

 後方から迫る人の波を器用に避けながら。


 あの子、やっぱり只者ではないわ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ