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忍び猫ミケ

 図書館の中に入ると、すぐさま建物の奥からの音を捉える。館内がじっとりとしているためフィルターがかかったように鮮明には聞こえないが、男性の笑い声、それと木材で製作された家具が破壊されるような乾いた音が立て続けにしている。

 私は細心の注意を払いながら、その音がする方へと吸い寄せられるようにして進む。

 中でも戦闘が行われていたんだ。知らず知らずの内に足早になる。そして先程から男達の奇声や物が散らばる音がする、大きな観音開きの扉の前で足を止めた。

 扉は僅かだけ開いている。

 改めて弓矢を握り直すと、扉に背を預け少しだけ開いた扉の隙間から覗くため、顔を近づけていく。

 とその時、嫌な感じがして覗くのを一瞬躊躇った。

 すると部屋の中から飛び出たなにかが私の目の前を通りぬけ、後方の建物の入り口の方の壁に穴を開けた。そしてそのすぐあと、私が背を預けるとは別の扉を押し開きながら、武装した男が後ろ向きにたたらを踏みながら廊下まで出てきた。

 なんとか踏みとどまったその男に思わず釘ずけになっていると、胸には大きな穴が、そして顔には火傷の痕がある事に気付く。

 そして胸から夥しい血を流す男もこちらに気付いたようで、目と目が合ってしまう。

 その生へとしがみつく亡者のような顔に、声にならない悲鳴が上がりそうになっていると、一筋の光が通り過ぎた。その光は吸い込まれるようにして男の顔面に。

 そして男は私に血を吹きかけながら、廊下へと仰向けに倒れていった。


「あっミケ姉! こっちは今終わったとこですよ! 」


 入り口でへたり込んでいる私に気づいたトロが、部屋に散らばるまだ使えそうな自身の矢をせっせと回収しながら、大声で報告をしてくれる。

 そんなトロの隣でボー立ちをしている蜘蛛は、大きな欠伸をすると眠そうに目をゴシゴシと擦り出した。


「……あんた達を心配してた、私が馬鹿だったよ」


 顔に付いた血をポケットから出したハンカチで拭いながら、大きな溜息が盛大に出る。


「そうそうミケ姉、こっちには生存者と例の布はいなかったよ。外はどんな感じ? 」


 トロは完全にゾンビに対して免疫がついているようで、ハキハキと明るく話す。ーーじゃなくて!


「そうよ! 外はゾンビの群れが押し寄せて来てるの! 急いで外のドリルと合流するわよ! 」


 私の言葉に真剣な顔つきになるトロ、といつもの無表情のままの蜘蛛。

 私はそんな二人を引き連れて、窓からの月光で明と暗に分けられた廊下を、小走りで戻っていった。

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