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一対多数

 ◆ ◆ ◆



 なんなのあの剣!

 黒騎士が振る黒の大剣が、墓石をバターのように斬り裂いていく。そのため二人の足元には、大小様々に切り分けられた石がゴロゴロと転がっている。

 しかしイールの騎士はよくあれを躱したものだ。

 黒騎士の初大刀、それを剣で受けてしまったイールの騎士は、大剣のその部分から先を無惨にも失ってしまい、なおも進む強撃を咄嗟に躱し兜を斬られるだけに留めた。

 と言うか、普通躱せないよね! 流石イールの騎士、と言ったところなんだろうけど。

 しかしあの黒の大剣、黒騎士が攻撃をする度に刀身部分が歪んで見えるんだけど、魔法剣を収納しているわけだしやっぱりあの剣も魔具で、その効果で歪んで見えるんだろうか?

 でもそうなると、最初の風の刃とこの斬れ味が異常な攻撃を共に消費魔力1で計算したとしても、軽く30を超えてしまう。

 もしかして黒騎士も、しゃるるんや千年前の大魔道士と同じ特異体質であるとでも言うの!?


 その時耳が捉える、そんなに遠くはない場所から呻き声が聞こえた事に。

 我に返り視線を向けると、町の入り口から溢れ出した一団、ゾンビ達が力なくこちらへ近づいて来ていた。

 ……大変、このまま行けばあの大群が道なりにあの角を曲がり、この図書館前を通り過ぎる! しかしあの数では相手にするのは危険すぎるし。


「ドリル!」

「はい!」

「ここまで登って来て、ゾンビの大群が来るわよ! 」


 そう言いながら、私は屋根から矢を放っていき、その度にうめき声が減っていく。


「何してんの、早く! 」


 もしかしたら、ゾンビ達を私に引きつけさせて図書館を素通りさせる事が出来るかもしれない。

 兎に角そこに居たら、ドリルは危ない。

 そうこうしていると、通りの角を曲がったゾンビの一団がドリルを発見したようで、全速力ではしりはじめる。


「死守します! 」


 そしてなんと、ドリルはその群れに向かって突撃する。


「ドリル、なにやってんの!」


 私は矢の残数を気にすることなく立て続けに放っていく。


 そして……。


 ドリルが近づくと鮮血が上がった。壁に打ち付けられたり、首から上を失ったり、と次々とその形を失っていくゾンビ達。

 ドリルはゾンビ達を相手に、完全に圧倒していた。

 マジですか!?

 あまりの凄い光景に思わず手が止まってしまう。

 いや、そう言えばそうだった。蜘蛛とトロもズバ抜けているが、ドリルも国から勇者と呼ばれるほどの逸材。改めて十代後半でトップクラスの実力を持つ三人と共にいることを、まざまざと実感させられてしまう。


「ここはボクに任せて下さい! 」


 ドリルの声で我に返る。そう言えば私のプランは強制却下されてました。

 ドリルは頑張ってるけど、いつ何が起こるかわからない! それに万が一建物に雪崩れ込んできたら、それも大惨事に繋がってしまう。


「ごめん、すぐ戻るから! 」


 私は図書館内に突入するため屋根から飛び降りる。すると、誰かに見られた気がした。

 さっと視線を感じた上空を見やるが、夜空と小高い町の建物しか見えない。

 気のせいか、それより急がなきゃ!

 私は弓矢を各々の手でしっかりと握ると、肩で扉を押し開き中へと突入した。

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