ハンマー男
◆ ◆ ◆
くそったれ!
脚の痛みを我慢して、部屋の中央に移動させた机の所まで、俺の身長ぐらいある棚を押して行く。
部屋の外からは何者かがドシドシと階段を上がって来る音と、その階段と俺が今いる部屋を隔てている唯一の砦である木の扉が、先程からドンドンと引っ切り無しに鳴っている。
扉ちゃんよ、頼むからもう少しの間もってくれよ。……よし、これで上に行けるぞ!
棚を移動させ終えたが、息をつく暇もなく机の上に飛び乗る。そして棚の上面に手を掛け、机を蹴り腕の力で上半身を棚の上へと移動させると、そこから左脚を棚の上に移動させ、血で赤く染まっているもう片方の脚を引き上げた。
月が覗く上部の天窓から外に出れば、一先ず小休憩が取れるかもしれない。
そこで、激しい衝撃音が聞こえた。
目を向けると、扉に大きな亀裂が走っており、簡単に開かないように入れていた鋼鉄のかんぬきが少し曲がってしまっている。
そして更なる衝撃音と同時に木の扉に大きな穴が出来破片が部屋の中に転がり込んできた。
そして大きな穴からは、巨大な木製ハンマーを担ぎ、頭にずた袋を被せられた大男がぬっと姿を現す。
その姿から移送中の犯罪者であった事が伺えるがーー、それより急がなければ!
あんなハンマーで叩かれたら、土台となっている棚なんて、一撃で粉々になっちまう。
ハンマー男はその手にしている巨大ハンマーを一度肩に担ぐと、なにやら絶叫しながらこちらに突進して来た。
ファキュッ!
剣で天窓の硝子を叩き割ると、硝子の破片が降ってくるのを無視して天窓に向け飛ぶ。と同時にハンマー男が棚を木っ端微塵に吹き飛ばした。
あぶねー、間一髪セーフ!
天窓から屋根の上に這い上がり先程までいた部屋を見下ろすと、ハンマー男が再度雄叫びを上げていた。そして部屋に雪崩れ込んで来た異形の者達が、血塗れの手を上げ俺を掴もうとする動作をみんながみんなしている。
うげー、夢に見たらどうしてくれんだよ。
しかし、これで助かったわけか。
屋根の上で休むため棟に向かい登っていっていると、腕に痛みが走る。
見れば腕に矢が刺さってやがった!
そして異形達の中にキャッキャッ飛び跳ねて喜んでいる、弓矢を手にしているゴブリンの姿が目につく。
くそっ、やられた!
あいつら飛び道具を持参してやがった。しかしこのままでは、格好の的になっちまう。
取り敢えず身を屈め、飛んでくる矢に警戒しながら屋根の移動を開始すると、一部の異形達がこちらではなく、町の入り口の方に顔を向け始めた。




