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地下牢へ

 手配書の申請書類をユアンから預かったシグナは、王都の内壁の中にあるレギザイール軍の施設が立ち並ぶ区域に来ていた。

 無論会食の席での件があるため、同僚であるレギザイール兵からは一定の距離をとり、違和感を出さないようにしたうえで顔を見られないよう警戒して進んで行く。

 それとコートで隠れてはいるが、念のため魔竜長剣には布を巻きつけている。

 こいつ自意識過剰だな、なんて言わないで下さい。


 しかし二年ぶりに帰ってくると、あまり良い思い出がないこの場所でさえ、懐かしい気分になるもんなんだな。

 行き交う兵士達の片隅でトレーニング後なんだろう、頭から井戸水を被る者や、腰を下ろして楽しそうに話している者達が見える。


 カザンから人として色々と学んだ今なら、自然とあの輪に入る事が出来るだろうか?

 そんな事を考えながら歩いていると、目的地である建物の前に辿り着いた。

 他の建物は一つ一つレンガを組み重ね、入り口付近や窓枠に装飾を施したりしているのだが、目の前の建物には頑丈が売りの黒重石のみが使用されており、また窓も光を取り入れるためだけの横長の小さなものがいくつかあるだけで、建物全体から冷たい印象が伝わってくる。


 違和感を出さないよう、人の波に溶け込むようにして建物に入り、ロビーを素通りし奥へと続く廊下を進んで行くと、目の前に地下へと続く階段が現れた。

 その階段を設置されている魔法の光源を頼りに降り、一つ下の階に到着すると一直線に伸びた通路をそのまま進んで行く。そしてその通路の途中、進む者を阻むかのように正面に隙間なく広がる鉄格子が現れた。


 その鉄格子に設けられた通行用の小さな扉の前には、一人の看守が立っていた。

 看守は突然現れたシグナを、舐め回すように上から下へとジロジロと観察を開始。そしてシグナの胸元に縫い付けられた一等兵の階級章に気づくと、明らかに怪訝そうな面持ちになり問いかけてきた。


「なんだお前は? 」


 シグナは背筋を伸ばし、敬礼をする。


「特務部隊所属、シグナアースです。カザン連隊長に早急の用があるため、入牢の許可を頂きたいのですが」


 あっ、面倒臭くてついつい受付通さなかったけど、不味かったかな?


「おぉぉ、お前があの双頭の魔竜殺し(ドラゴンバスター)なのか! そうだ、魔竜殺しなら、剣を持っているんだろ? 見せてくれよ! 」


 話が通じたのは良かったけどここの看守さん、意外に新し物好きなのかな? とにかく興奮気味である看守さんの気が変わってもなんなので、魔竜長剣ドラゴンソードを覆っていた布を剥ぎ取り渡してみる。


「よかったら持ってみますか? 」

「いいのか! うお、軽いなこれ! 」


 看守は手にした魔竜長剣を、お礼を言いながらシグナに返してくれる。


「カザン連隊長から、お前が来たら通すように言われていたんだ。案内するからついて来てくれ」


 そう言う事か、カザンが気を利かせてくれていたようです。

 看守が鍵束から一本を選び鍵穴に差し込み回すと、冷たい通路にガチャリと音が響いた。そしてシグナが鉄格子を通過すると、看守は施錠ののちシグナを引き連れ前を進み出す。そして看守は進んですぐにあった大部屋に顔を出すと、最下層まで行くから代わってくれと、部屋の中にいた同僚達に声を掛けた。


 大部屋を過ぎると通路の両サイドに個人用の牢がいくつも並んでおり、どこも人で埋まっていたのだが中には狭い牢に二人も収容されている所もあった。

 大規模の摘発でもあったのだろうか? ……聞いてみるか。


「いつもこんなに多いんですか? 」

「ん? あぁ受刑者達の事か。いや優秀な警備兵がいるそうで、この殆どはその者が一人で捉えたらしい」


 もしかして、シャルルの事なのだろうか?


「名はたしか、ゴールドとか言ったかな」


 よし、今度会ったらシャルルの頭をナデナデしてあげるとしよう。

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