揺れる一戸建て!
その内の1つと眼が合ってしまう。足が地に着かない。
「ぬぎゃーー! 」
すぐ隣で甲高い声が上げる、トロも覗く者達に気がついたようだ。
そして玄関の扉のノブが、ガチャガチャと頻りに動きその度に音を立て始める。十中八九、覗いている者達の仕業であろう。鍵を掛けていて助かったがいつ扉を破られるかわからない。
この場から逃げる事を模索する私達。そこへ握りこぶし程の穴から、血塗れの手が伸びた。それを機に次々に出てくるそれは、まるで私達を捕まえようとしているかのようだ。その蠢く腕々は、私達の血の気を奪う。そして至るところの壁がドンドンドンドンと叩かれ始め、民家が大きく揺れ始めた。
『ガシャラン!』
『どさっどさっ』
新たに別の部屋の窓が破られた音。そしてその部屋と、またリビングの方からそれぞれ鈍い音が聞こえた。
「おおおお、お姉様! 」
蜘蛛にしがみつくトロ。蜘蛛はどうしたものかと言った感じで、私の方を見る。
「いっ、いや、どどど、どうしよう!? 」
考えが纏まらない私。そこでドリルが声を上げる。
「皆様、地下室が外と繋がっています! そこからなら! 」
「あっ、案内して! 」
「はい! 」
返事をすると、ドリルは地下室の階段を凄いスピードで下りて行く。私達は、藁にもすがる思いで後に続く。地下室に降りると、既にドリルが部屋の奥にある鉄扉の方へと手を伸ばしていた。そして鍵を外すと扉を押すドリル、しかし開かない。
「えっ、なんで、えい! 開け! 」
肩を鉄扉に当て頻りに押すが、少し扉が押し上がるのみで開く気配はない。
もしかして外から鍵を掛けられたとか?
その時、一階の方から玄関の扉が破られる音が聞こえて来た。そしてどっさりと雪崩れ込んでくる足音。
「はっ、早く早く! 」
トロが危機迫る顔でドリルを急かす。
「こうなったら! 」
ドリルは一歩だけ後方に下がり扉との距離をあけると、ファイティングポーズをとり発声と共に気合いを入れる。そして思いっきり扉に向け蹴りを繰り出した。そのあまりある威力で無理矢理外側へとくの字に曲がった鉄扉が、ガランッガランッと外の草むらを跳ねていった。
よし、開いた! 私は弓に矢を番えると、待ち伏せに対応するべく覗き込むようにして外を伺う。
……気配はない、よね。そしてふと気がつく。この鉄扉、外ではなく、内に開く構造になっている事に。
いや、ここはドリルを責めてはいけない。彼女は声には出さなかったが、私達と同じように怯えていたのだ。
「皆、行くよ! 」
そこから外へと脱出した私達は、どこからともなく聞こえる不気味なうめき声や笑い声の中、町の内壁へと行き着く。そして人一人が通れる通用門を見つけると、そこから町の外へと飛び出し、途中転びながらも悪夢を振り払うかのように疾走した。ただひたすらに、死に物狂いで通れそうな道を進んでいく。すると、道がいつの間にか山道へと変わっている事に気がつく。
雨こそ弱まってきているが空は何度も光り、辺りは暗い上に足場がぬかるんでいる。神経を磨り減らしながらも進むと、今までの頑張りが報われたのか、僅かにだけ光りを漏らす小屋を見つる。
私達は互いの顔を見合せると、安堵の表情を見せあった。
このお話で連載200回となります。
短いお話の連続なため、トータル文字数は他の作者さん方の足下にも及びませんが、モチベーションを上げるためにも一人でお祭り気分になり色々やってみました。
と言う訳でまずは、蜘蛛とトロとドリルが絡む短編を書きました。良ければドゾゾであります。
それともう一丁、みてみんの方に画像を追加しています。その中には蜘蛛とトロとドリルのイラストもありますので、興味がある方はこちらも見てあげて下さいデス ♪
キーワードは、時の狭間の魔ほぉ〜石、立花黒、どちらでもヒットするようになっております。




