表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
163/316

逃げ場なし?

 暗闇の中を走るが、いたる所から鈴の音が聞こえてくる。そして人の悲鳴も。

 皆完全にパニック状態に陥ってしまっているようだ。


 その時、地面とは違う柔らかい感触が足の裏に広がった。見れば綺麗に横へと輪切りにされた者の死体。

 これも死者の仕業なのだろうか?


『チリーーン』


 近くで鈴の音が鳴った。

 私は急いでその場から離れた。

 それから時折見かける死者から逃げるようにして走りその間ずっと頭を働かせていく内に、このような異常な世界を何度か体験していることに気づく。

 それは魔宝石の世界。


 クロムが話してくれた一つに、使用者が力を得る代償に魔物となると、殻である世界を作り上げ、またそこへ人を閉じ込めてしまう魔宝石があった。

 どうやらいつの間にかその殻の中に、あの者達と一緒に迷い込んでしまったようである。


 セスカの悪夢は水晶に、古城の歌姫は鏡、今回は……あの闇なのだろうか?

 何かしらの条件を満たせばここから脱出出来るのであろうが、どのようにして引きずり込まれたのかわからない以上、そこからの脱出方法を見つけるのは難しいだろう。

 ただしこの世界が考えた通りの魔宝石の世界であるならば、一つだけ脱出の方法がある。

 それはこの世界の主を倒すことだ。

 どれくらいいるのかわからないが、あの死者のどれかが主で倒して行けばここから出られるかもしれない。


 そう言えば、先程の死者が現れる直前に『ミレディの仕業』と話している者がいたのを思い出す。

 ミレディとはその時にいなかった、黒衣の女なのだろうか?

 そしてあの者がこの世界の主?

 人間のようだったが、……その後魔宝石で魔物化したのか?


 その時、遠くの闇に小さな明かりが浮かび上がっているのに気がつく。

 何か手掛かりがあるのではとそちらに駆け寄って行くと、その明かりは木々が燃えることによって出来たものであり、結構な範囲が火に包まれていることがわかった。そしてその炎の木々の間から、絶叫を上げながら人が飛び出した。炎に包まれたその者は、明後日の方へと走っていき、その後を追うようにして炎の中から死者の姿が現れる。


 風が吹き込んでいるのか、時折木々を燃やす炎が大きくなる。……いや、風は全く吹いていない。

 そこで気づく。鈴の音が聞こえるたびに、火の勢いが増している事に。


 大きくなる炎の熱に押され後ろによろめいてしまうと、バシャッと水気を含んだ地面を踏んでしまう。

 水気?

 足元を見やるとそこには多量の鮮血が広がっており、この血を流したであろう者の姿がすぐそこにあった。その者の全身は潰れた状態で、手には砕けた木の棒がある事から、どうやら弓を握っていたようである。


『チリーーン』


 すぐ近くから鈴の音が。

 咄嗟に振り返れば、何本もの矢が顔面部分に突き刺さっている死者が、すぐ近くの暗闇からぬっとその姿を現すところであった。


 大剣を構える。

 炎の方の死者はこちらに気付いていないようであるが、どうやら死者達に挟み込まれる形となってしまっているようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ