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罠罠

 蜥蜴人間リザードマン、奴らの知能は高く倒した人間の武器や防具を身につけ、また集団での狩りも行う。

 人と違うのは魔法を使わない事であるが、それは逆にいうならば脳筋である事に他ならない。

 そして鋭い牙には一瞬にして相手の自由を奪う、麻痺毒が含まれている。


 目撃者の証言では、鎧を着ていたそいつは剣と盾で武装しており、またかなり大きかったと言う話だ。

 まぁ奴らの背丈は大きなものでシグナと同じくらい、また個々の力はさほど高くないため経験を積んだ戦闘職の者なら驚異にならないレベルである。ただし奴等が徒党を組んで現れたなら注意が必要だ。奴等は連携を取りジワジワと獲物を追いたて弱ったところを確実に仕留めるような狩りを行う。

 中には弓矢を扱うものもいるため、不意の攻撃にも注意をしなくてはならない。


 木々が生い茂る中ドリルに続き歩くこと30分、前方上方の斜面に人が入れそうな洞窟が姿を現した。

 その洞窟の入り口上半分は、木の根っこや蔦などで覆われているため、実際通れる箇所はその分だけ小さくなっている。


「お兄ちゃん」

「あぁ」


 この洞窟の少し前から続いていた人ではない足跡と、ドリルの嗅覚がこの中に猪を殺った奴が潜んでいる事を教えてくれる。

 シグナはドリルをカザンと一緒に後ろに下がらせると、1人洞窟の中の様子を伺うために入り口前まで移動する。

 この洞窟、意外に浅そうだ。

 警戒しながら覗けば、奥側の壁の地面に、血で染まった鎧が置かれているのが見えた。

 どういう事だ?


「あっ」

「シグナ、上だ!」


 ドリルとカザンの声と微かに感じた殺気に反応して、風を解放させる。

 横に転がりながらも上を確認すると、木々の間から差す陽光が遮られ、煌めいて見えていた空が黒い塊に占領されていく。そしてあっという間にその黒い塊が視界一杯にまで広がっていくと、シグナが先程まで立っていた地面がドスっと低い音を立て、そして降り立った。


 その黒い塊であるそいつの正体は、蜥蜴人間リザードマンなんてチンケなものではなかった。

 体長はかるくカザンの上をいく2メートルオーバー、素手で木の幹を殴れば薙ぎ倒してしまいそうな左腕には所々凹んで錆び付いている鉄の丸盾があり、右手には先程の猪なら骨ごと真っ二つにしてしまいそうな肉厚片手剣ファルシオン、そして防具の類は装備していないが竜の鱗と同じように硬そうな皮膚がその身を覆っている大蜥蜴人間、将軍蜥蜴ジェネラルリザードマンが憎々しそうに顔を歪めシグナを睨みつけるようにして立っていた。

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