ケンタウロス!
『さぁ、ワイバーンの通過が確認されたため、赤旗が取り除かれレースが動き出します。
断崖絶壁前で足止めを受けていたヤカクク、流星のパッカラ、サーベルユニコーンの三者が休めていた脚をフル回転させ、ゴールを目指します。そして現在のトップ、ガトードラゴンは間も無く森を抜け、間も無くゴール前の直線に入ります。
ワイバーンの通過に臆することなく1人危険を顧みず制止することを許さなかったガトードラゴンが、今最後の直線に入りました!
まず、今回の優勝はガトードラゴンで間違いないでしょう。前回の雪辱を晴らすための権利を手にしようとしています!
そして今、ガトードラゴンが1位でゴールしました!
激戦区である予選三組を制したのは、ガトードラゴンです!
勝利の咆哮が会場内であげられております!
本線出場の一つは、ガトードラゴンに決定いたしました!
ありがとうガトードラゴン!
次も楽しみにしているぞ、ガトードラゴン!
そして本線出場残りはあと一枠残っております。それでは中継のパミュパミュちゃん、ヨロシクー!』
『はぁーい、こちら頭頂部で崖道を登ってくるパッカラさん達を、まだかまだかと待ち構えているパミュパミュでーす。
残る一枠を目指しているパッカラさん達ですが、現在先頭は道無き道を登りショートカットをしているヤカクク。そして流星とサーベルユニコーンは正規のルートを爆走中です。見所はやはり、直線に強い流星とサーベルユニコーンがどこでヤカククを捉えるのか、そしてヤカククはゴールまで逃げ切れるのか、ドキドキワクワクが止まらない素晴らしいレースが続いていまーす!』
◆ ◆ ◆
ワイバーンの群れが通り過ぎる間、シグナは断崖絶壁手前の平原で第二師団の連中と一緒になり、足止めを食らっているパッカラ達の護衛をしていた。
これだけの人とパッカラがいればワイバーンが襲ってくる心配はほとんどないのだが、心は落ち着ずそわそわする一方だ。
シャルルとサーニャルの姿が見えない。
前半のあのペースなら、そろそろここに着いていても良さそうなものなのだが、未だに姿も見えない。
もしかしたら落馬でもしているのではと、嫌な想像が頭から離れない。
ん?
目の錯覚かと思い、遠くに見えるそれを二度見三度見と繰り返し、手で目をゴシゴシしたあと、もう一度凝視してみる。
何すかあれ!?
こちらに駆けて来ているパッカラ? みたいなのが、なんか凄い形をしているのです。
皆さんはケンタウロスというのをご存知だろうか? 人間の上半身に馬の下半身を持つ空想上の生物である。
そして正体不明の向かってくる生物は、ケンタウロスと同じ様に上下が別々で、下半身が馬である事は一緒なのだが、上半身部分がそれとは違い、どっからどう見ても、瞬きを何度もして見つめ直してみても、それは立派に育ったコロキノにしか見えなかった。




