脳内イメージ、よろ ♪
背負い籠を担ぐドコユキフの後について街の外へと出て更に続くと、街道から外れた草むらに到着する。
そして草が煙を上げ溶け出したかと思うと、その場所にスライムが出現し、次第にコロキノの姿を形成した。ドコユキフがスライムの隣に並ぶように立つと、向こうに見える林に向かって人差し指を差した。
「よし、サーニャル、お前の走りを見せてあげなさい!」
プルプルと震えたサーニャルは、ドンっと地面を蹴りドスドスと野を駆けだす。
体を倒すことなく直立不動の体勢で足をバタバタと動かしているが、結構速い。と言うかパッカラと良い勝負をするかもしれない。
それを見たシャルルも目を丸くしている。
走り終え戻って来たサーニャルに、ドコユキフはコロキノを一つ投げ渡す。それを体で受け止めたサーニャルが消化を始める中、ドコユキフはドヤ顔でこちらに向き直った。
「中々のものだろ?」
「たしかに凄いな、サーニャル」
褒められて機嫌を良くしたのか、ドコユキフの表情が柔らかなものへと変わった。
「サーニャルはあと頑張り屋さんだぞ。ただ急な方向転換を苦手としているから、そこはジョッキーの腕の見せ所だ。頼んだぞ、シャルルとやら」
「よしきた」
とにかく操縦してみないことには始まらないと言う事で、サーニャルが背負う籠の中へとシャルルが搭乗する。
「これって、絵的に凄くダサくない?」
「いや、そんな事ないと思うぞ!」
あまりお目にかからない走るコロキノ、しかもそのビックサイズがせっせと人が入った籠を担ぐ姿、本当はとてもヘンテコです。
そして手綱を握ったシャルルが「いけー」と叫ぶと、先程と同じように中々のスピードで駆け出す。籠は結構上下に揺れているが流石シャルル、中で体勢を崩すことなくしっかりと手綱と一緒に体を左右に倒しコロキノの操作を行っている。
いや、あれは不味い! スピードにのり曲がりきれないサーニャルが、迫る大木の一本に向かいそのまま突っ込んで行く。
そして大木にぶつかり弾けるサーニャル。
シャルルが籠ごと地面へと放り出された。
シグナは風の魔具を解放してシャルルの元へと急ぐ。
「大丈夫か!」
シグナの問いに軽く手を上げて答えるシャルル。
「この子が咄嗟に、助けてくれたみたい」
シャルルの近くでコロキノの形を成していくサーニャルは、プルプルと全体を震わせている。
どうやらサーニャルがシャルルが乗る籠と地面の間に滑り込み、衝撃を吸収したようだ。
籠の中で尻餅をついてしまっているシャルルを引っ張り出そうと手を差し伸べた時、シグナは心の中で叫ぶ!
フウゥォォォォォーオ!!
結論から言おう、純白であったと! そして告白しよう、脳裏に焼き付けた事を!
飛び散ったサーニャルがシャルルの服、主にお腹から下に掛かて付着してしまっており、ズボンに染み込んだところが、あれよあれよと穴となり広がっている。そして見えてしまっている。
そう、下着がガガガガガガガ!
「シグ、大丈夫? 鼻血出てるよ?」
「えっ? ああ」
そして鼻を裾で拭う時、ゴクリと大きな音をたて喉を鳴らしてしまう。そこでシャルルはこちらの視線を辿り、自身に起こっている事態に気づく。
「はわぁ!?」
シャルルは一気に顔を赤らめ、一生懸命に上着を下に伸ばす努力をするが、その仕草、なんか良いです!
ーーいやいや、いかん! このままではシャルルに軽蔑されてしまうかも。
そっぽをなんとか向き羽織っていたコートを差し出すと、シャルルはさっと受け取った。
しかしこのスライムは出来る子である。
そのあとドコユキフにコロキノを貰ったシグナは、サーニャルに感謝の気持ちと共にそれ等を渡したことは言うまでもない。




