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大国民記念祭とは

 大国民記念祭は四年に一度行われる国を上げてのお祭りで、その開催期間は二ヶ月間にも及ぶ。

 祭り期間中は大陸中の一割の人が訪れることもあり、近隣の町々もこの期間中は宿が予約で一杯になる。そして城下街は、この期間にのみ集まる貴重品や珍品を求めて訪れる買い物客でごった返し、また大道芸人が路上パフォーマンスをしたりととにかく街全体がお祭り騒ぎになるのだ。

 そして興行から賭博の収益と全てを取り仕切るのがレギザイール王国であり、前回の祭り同様、今回の祭りでも大きな利益を出し、一気に財政難を解消させると言う目論見があるそうだ。


 また大国民記念祭には多くの出し物があるが、パッカラレースは大陸剣闘士大会に並ぶ人気の競技で、祭り期間中に入ると同時に八つの街で予選が始まり、各ブロックの出場者が決まれば休憩を挟んだ1ヶ月後に本戦が始まるのである。


 そしてシグナ達はそのパッカラレースが行われる街の一つであるヒナイールに到着していた。

 多くの人がこの街にも訪れており、この競技の人気の高さを再認識させられる。


 この街のレギザイール兵の詰所を訪れ今回の任務の打ち合わせをした二人は、明日のレースまで時間があるため街を探索することにした。


「パッカラに乗るのは、初めてだな」

「そうなの? まー大人しい動物だし問題ないと思うよ」


 パッカラ、正式名称パッカラ馬哺乳類。四足歩行でその背に人を乗せたり数頭で荷車を引かせたりと、人々の交通の手助けをサポートしてくれる動物である。

 頭に角を生やしていたり、また鎧のように硬い皮膚を持つもの等様々な種類がいるが、どのパッカラも穏やかな性格のものが多い。

 今回の任務は、ワイバーンの飛行予定地を競技用のパッカラ達が通る際、警護としてシグナ達もパッカラに乗り一時的ではあるが追走するものである。

 よってワイバーンが眼下のパッカラ達に襲いかかろうものなら、注意を引きつけレースに支障が出ないようにしないといけない。


「あっ、本屋さんはここを左じゃなかったっけ?」

「おぉ、すまんすまん」


 ん?

 通りを曲がり進んでいると、両手で大きな木箱を抱え辺りをキョロキョロしながら小走りをしている白衣姿の不審人物を見つける。

 その不審人物は、背丈がシャルルの肩までしかないがその腕や体は分厚い筋肉に覆われている、所謂ドワーフ症候群の男であった。


「シグ!」

「あぁ、後を追うぞ」


 人混みに紛れながら跡をつけて行くと、ドワーフがそこから一本路地に入った所にある地下への階段を降りて行った。

 時間をあけその後に続き、その石段を降りていくと一枚の鉄の扉に出くわした。

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