にっしっし、昇格していました ♪
バックから水晶を取り出し光る水晶に手をかざすと、水晶の中にカザンの姿が浮かび上がる。
「おお、シグナ。二人とも元気にやっていたか?」
「あぁ、元気だよ」
「それは何よりだ。それで早速で申し訳ないんだが、また急な任務が入ってな。それをそちらに回したいんだが、明後日までにヒナイールに飛べないか?」
「なんかあったの?」
「実はワイバーンの群れが別れの山脈を飛び立ったという報告が入ってだな、それがパッカラレースのコース上を通過するかもしれないそうなんだ。そのためコースで重なりそうな周辺の警備を強化したいらしくてな」
「いいよ、コロキノ狩りも目処がついたんで今日にでも連絡しようと思ってたとこなんだ」
「それは助かる。では3日後におこなわれるパッカラレースに間に合えば良いんだが、後は任せて大丈夫か?」
「オッケー」
「すまない、では頼んだぞ」
水晶の光と共にカザンの姿が消えていく。
「今度はヒナイールか」
「旅立ちはいつになるの?」
「そうだな、明日の午前中に出発するか」
現在シグナ達はカザンと別行動中である。ちなみにシグナは一人でも大丈夫だというお墨付きをカザンから貰い、それに伴い本部に申請を行ない特別にカザンの、特務部隊の別働隊として認められる事となった。そして嬉しい事に階級も上がり、一等兵の三つ上である隊長補佐に昇格することになっている。
特別な処置として形式上での昇格であるがため、給料が以前と全く変わらないのであるが、それより昇格出来た事が嬉しすぎてさほど気になってなかったりする。
浮かれるシグナに、「いつか特務部隊から転属する時に、ポストの空きがないと言う理由で降格させられなかったらいいね」とシャルルに冗談めいて言われたが、それでも上等騎士である。長い間不遇の対応を受けていると、はたから見て酷い扱いであったとしても然程気にならないものである。因みに正式な辞令は大建国記念祭の後に行われるそうだ。
そして別行動をするにあたってトータルの任務量は増えてしまっていたが、二組でこなすスピードがそれを上まっているため以前と比べて少し時間に余裕が出来てきていたりする。
そしてシグナはその出来た時間で、最近は推理物の本なども手に取るようになっていた。
「時間があるなら、今晩の『キノコの火』は見に行けるね」
「そ、そうだな」
キノコの火、毎年コロキノ狩りが終わるとその最終日の夜に催されるイベントで、コロキノを使って起こした火の周りを皆で囲むというものである。
今回多くの人達がキノコ狩りに参加していたので、その多くの参加者を睨んでいつもより出店が並ぶそうだ。
そして「時間があれば一度見てみたいねー」などとシャルルが以前話していた。




