【プロローグ】 レギザとイール
今から三百年前、長きに渡り幾度も衝突を繰り返してきたレギザとイールと言う国があった。
隣国同士であった両国は、当時の王達の話し合いにより併合、それに伴いレギザイールと言う一つの強大な王国が産声を上げた。
それから世界の秩序を守る事を口実に、大国ゼルガルドから星の魔法石を奪い取ったレギザイールは、我が国こそが世界の中心であると星の魔法石を掲げ全世界にアピールをした。
両国民は文字通り人が住む大陸の中央部を支配する事となる王国の誕生に、手を取り合いこれを祝福するのであった。
しかしその併合には、血生臭い物語が存在していた。
当時のレギザ王国は年老いた父に代わり仲の良い兄弟が統治していた。戦争では先陣に加わるほどの血気盛んな兄と、病弱ではあったが頭の切れる弟。
そしてイールの王には、血気盛んなレギザの兄と幼馴染であり万人から愛される、こちらも若い王が治めていた。
大国であるゼルガルドや、ドトールやダイセンといった強国に囲まれた両国は、若き王達の話し合いにより、両国の安全と発展のためにと一つの国になる運びとなる。
しかしイール王の画策により、強い兄に羨望の眼差しを向ける弟の元へと魔宝石が転がり込んだ。
何よりも力を望んだ弟は、進んで力を酷使し続ける。そして兄は魔宝石で体が肥大化し超回復を有する化け物に成り下がっていく弟に命を落としかけるが、目眩ましのために家宝である白銀の魔宝石を使用した。そして魔宝石で超回復を奪われた弟は、兄から受けた今までの傷が蘇り絶命。兄は自身が手にしていた血塗られた剣を床に落とし、弟を抱き寄せ嘆き悲しんだ。
そこへ騒ぎを聞きつけたイールの軍師達とレギザ軍の配下の者達が現れる。そして殺害現場を目撃されてしまった兄は、追われるようにして城から飛び出した。
このままだと一族諸共罠に嵌められ抹殺されてしまうと考えた兄は、妻と信頼出来る数人の部下を連れ王都を後に。
しかしイール王が差し向ける執拗なまでの追撃に晒され、一人また一人と倒れていく部下達。
そして従者を含め残り三人となってしまった時、兄は我が子を身籠っている妻と部下を先に行かせ大立ち回りを繰り広げる。
命の炎を強く、さらに強く、全てを焼き尽くす劫火として燃え上がらせ命を燃やし尽くすと、兄はついにその命に幕を下ろした。
妻はと言うと、子供と一緒に託されたお守りのおかげか、無事従者の故郷の村へと辿り着き難を逃れ、そこで身分を隠しひっそりと暮らした。
レギザ王の死の噂が流れる中、イール王はレギザ人の心を逆撫ですることがないようこの事実を隠蔽し偽の情報を流す。何者かに暗殺された兄を英雄として手厚く埋葬し英雄の墓所へと祀る事を。
そして二度とこのような事が起こらぬよう、これを機にレギザイールを中心として全ての人間が平和に暮らせる世界を作り上げる事を高々と宣言し、それから幾つもの小国を吸収していった。
そして星の魔法石はと言うと、亡き弟が施していた魔具のトラップが発動しており、それから三百年後の現在、シグナの妹セレナが封印を解除するまで眠り続ける事となる。
これらは歴史の闇として隠されてしまったため、今後陽に当たるような事は訪れないが、全て真実の物語である。
連載は週末迄には。
あと今回は15〜16時の読み手様の獲得を狙います。(キリッ)




