なにか良い手は?
「これからどうする?」
ガレリンの問いに、クロムは腕を組み考え込んでいる。
あれっ?
そう言えば……聞いてみるか。
「クロム、その鑑識魔法で赤騎士とかの位置を探れないのか?」
「お前は馬鹿か? それが出来ていたらお前等に会うことなく古城の位置を割り出していたという事に気付かないのか?」
「でもおおよその位置が分かっていたからあそこらへんまで来てたんだろ?」
その質問にはローザさんが答える。
「確かに途中まで鑑識魔法で追跡していたのですが、反応が雪山で消えてしまいました。なぜかわからなかったのですが、今考えればその時に魔物化が始まったのでしょう」
そう言う事か。でもそれだと八方塞がりになってしまう。また闇雲に進むしかないのか。
「あの!」
その時、エリーさんが意を決したようにクロムに話しかける。
「これで夫の行方を捜せないですか? 夫がいつも使っていた物なんです」
エリーさんの手には一枚の布が握り締められていた。
たしか正規の鑑識魔法ならばそれで追えたはず。しかしクロムのそれはどうみても劣化版のようなもの。
出来れば良いのだが。
しかしクロムの答えはNO、エリーさんにキッパリと断る。しかしそれでも彼女は食い下がる。もしかしたらと言う気持ちがそうさせているのだろうが。
そしてクロムは諦めさせるためにも、一度その布を使って鑑識魔法を使う事となった。
手で握るには数秒で良いことを伝えた上で、布を例の石に包むこと数分、クロムの「そろそろいいだろう」の言葉で布を剥ぎ取る。
「闇の館に住みし識者よ、汝の差し出されて得た知識の一部をーー」
そして呪文の詠唱を始めながらその石を握るクロム。
「どうだった?」
クロムに問うと、エリーさんもクロムの返事を息を凝らして見守った。
「ーーなんとか、なりそうだ」
「本当か!」
エリーさんの顔に明るさが宿る。
一方でどうして石が反応したのか分からない様子のクロムは首を傾げる。
とにかく一行は、エリーさんの旦那さんを捜して古城内を移動する事が決定した。




