み〜つけた
カザンの必殺剣を腹部に受けた赤騎士は、鎧を粉々に打ち砕かれ吹き飛んでいく。そして無様に後転しながら地面を跳ねて行き、隣の大部屋の壁に衝突してやっと動きを止めた。
赤騎士の腹部にはぽっかり穴が空いていた。
流石カザン!
仕留めたか!
いや、動いている。
赤騎士は床に片手を付きこちらを見据えると、怒りの咆哮のようなものを上げ必死に立ち上がろうとしている。
あれを喰らって生きているのか。ただダメージはかなりあるようだ、そしてこのチャンスを逃す手はない。
シグナは風を解放し、まだ立ち上がれないでいる赤騎士に向かい駆け出す。
すると赤騎士がいる大部屋の明かりが、突然落ちた。
そしてーー。
うわっ!
思わず声を出しそうになってしまった。それは扉からヒョイと顔が飛び出したからだ。
そいつは、朱色で短めに裁断された子供用のドレスに身を包んみ、漆黒の肌に腰まである銀髪を重力で下へと垂らす少女であった。そしてその少女の顔には口しか存在しない。
少女はキャハハハと笑いながらこちらへ開かれていた扉にスッと手を伸ばす。
しまった!
閉じられてしまったら、こちらと向こう側が離れ離れになってしまう。
『バタン』
思ったのも束の間、時すでに遅し。
閉じられてしまった扉を急いで開くも、赤騎士はそこにはいない。扉の先は全く違う通路へと変わってしまっていた。
トドメを刺し損なった。
……それよりこれからどうしよう?
闇雲に進んでも迷うばかり……いや、それしか手がないか。
……カザンなら、どう判断するかな?
「カザン、これからどうする?」
「そうだな、ここは進むしかないだろう」
やはりそれしかないよな。
そこでガチャリと音がした。
シグナ達は開いた扉から避けるように飛び退き、獲物を構える。
そして固唾を飲む中、入って来たほうの扉が音を立てゆっくりと開いていった。
新手の化け物か!
脚に風を纏わせ剣を握る力を強める。
そして僅かに開いた扉から覗き込むようにして片目が現れた。
奴はこちらを確認したのだろう。そこから一気に扉を開け放つと、その涅色の肌に銀髪の整った顔が露わになりそのままこちらを睨みつけた。
この目つきの悪さは……ク、クロムなのか!
「クロムー!」
あまりの嬉しさに抱きつこうとしてしまったところ、本気のグーパンチをされてしまった。
「キモイ、それと俺様に触れようとするな」
痛かったけど夢じゃない事がわかった、あとこの毒舌は本物のクロムである。
「何を目を輝かせている、取り敢えず死んどけ」
そうしてクロムはカザンに向き直った。
「先生、遅くなりました。してその後ろの人は?」
まずシグナ達はエリーさんの話をし、そしてこれまでの大まかな流れを話した。
次にクロムのほうの話を聞いたのだが、最初の時点でクロムはすぐ後を追いかけて来ていたらしい。しかし地下に下りてすぐの扉を開けるとすでにシグナ達の姿はなく、戻ろうと来たほうの扉を開けると違う場所に変わっており二進も三進も行かなくなったそうだ。
そこで登場したのが例の鑑識魔法もどき。それを頼りに何度も扉を開け閉めしてはカザンの反応が近い部屋を選んで進んで来たらしい。ちなみにガレリンとローザさんの石もあるらしく、これからはそれを頼りにまずシャルル達と合流する事が決定した。
ナイスだ、クロム!
そこから四人で古城内を進み何度かトランプ達を蹴散らした後、シャルル達がすぐ近くにいるであろう二階の長い通路まで戻って来ることが出来たのであった。




