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必殺剣、驀進悪鬼羅刹!

 と言うか、これって完全に迷い込んだってことでもありますよね。

 不味い、シャルル達の所に帰れない。しかもいつ新手の化け物が襲ってくるかもわからない。

 それよりまずはあいつをどうにかしないと。


『ダンッ!』


 均衡を保っていたカザンと赤騎士に動きが出た。赤騎士が地を蹴り間合いを詰めたのだ。

 赤騎士が槍を活かした長い間合いからの連続突きを放ち、カザンが大剣でそれらを防いでいく。

 今はこいつを倒すのが先だ!


「エリーさん、壁際に避難していて下さい」


 そしてシグナも戦いに加わる。カザンに向かって槍を繰り出していく赤騎士。シグナが近付いているにも構わずこちらには目もくれない。

 野郎、余裕かましていたらどうなっても知らないぞ。

 赤騎士の槍の間合いに入り、更に近づきシグナの間合いに入った。まだこちらを警戒すらしていない。シグナが殴打面での攻撃を繰り出すべく両の手でさらに握り締める中、何故か赤騎士は槍を持っていた片手を外すと胸元に持っていく。

 くたばれ!

 鎧を破壊するべく下から上へとドラゴンソードを振り上げる。


 その時赤騎士の兜に瞳が一つ浮かび上がった。シグナの攻撃は、赤騎士との間にある見えない何かに受け止められてしまったようで魔竜長剣は空中で止まってしまう。

 そこに赤騎士が胸元にやっていた手をこちらに振り払い、赤い礫をこちらに向かいばら撒いた。カウンター気味だったためくらいそうになるが、咄嗟に風を解放させることにより踏ん張り、その反動で魔竜長剣を戻し何とかそれらを防いでいく。堪らず尻餅をついてしまったが。すぐ様体勢を戻し床に落ちた物を目の端で確認すると、飛ばしたのは金属の切れ端のようであった。赤騎士の胸元の鎧が剥げていることから、その部分を投げつけたのだろう。そして赤騎士は何事もなかったようにカザンと攻防を続けている。

 そういえばクロムの奴が壁を作る魔宝石とか言っていた。赤騎士は魔物となった時点で握り締めることなく、魔宝石に封印されている魔法を解き放つ事が出来るようになっているようだ。そう言えばストームも詠唱なしで風の刃を降らせていた。


 赤騎士はカザンとの攻防でも見えない壁を作っているが、その一瞬兜に瞳が出ては消えている。魔宝石の力を使うときにあの瞳が出ているっぽい。

 カラクリがわかれば後はどう崩すかだが、これならどうだ!

 シグナは再度間合いを詰める。

 続けて攻撃の瞬間に風を解き放つ事により強攻撃を行う。

 赤騎士の兜に瞳が現れる。

 そして見えない壁に接触した、がバツンと音を立て破ることに成功。しかし魔竜長剣は赤騎士に届く事なくまた見えない壁に止められてしまった。見れば赤騎士の兜には新たな瞳が浮かび上がっている。


 この見えない壁は、何か粘着力の無い弾力のある蜘蛛の糸のような感触で、その耐性を上回ると破壊出来るようだ。そして最初に浮かび上がった方の瞳は血を流している。最初の壁を破壊したからなのか? しかし二重に張る事が出来るとは。

 夥しい量の殺気がシグナにも流れて来る。

 そして赤騎士がこちらに槍を向けた、やっとこっちに意識を向けたか。

 これで終わりだな。


 そう、その瞬間を見逃さずにカザンがある構えをとったのだ。


 右手一本で持った大剣の切っ先を相手に向けたまま後方に真っ直ぐ引くと、左手を刀身の下部に添える構え。

 あれはカザンの必殺剣、驀進悪鬼羅刹ばくしんあっきらせつの構えなのである。


 いつも人の良いカザンであるがこの必殺技を目の当たりにした人々は、カザンが恐ろしい魔物に取り憑かれてしまったのかと思ったと口々に漏らす。それ程の気迫と殺気がカザンからダダ漏れする剣の破壊力は、まさに悪鬼そのものである。

 因みにこの名前はそれを見た同僚からカザンの許可なく付けられたものであるのだが、レギザイールの軍に所属している者ならば一度は聞いた事がある名前でもある。


 構えのまま体勢を落とすと、カザンの巨体が赤騎士に照準を合わせ驀進を始めた。あまりの眼光のため、その瞳が青白い光の尾を引いているようにさえ見える。

 赤騎士の槍から繰り出される攻撃は、カザンから発せられる闘気にまるで押されているかのように軌道がずれてしまい擦り傷を作るのみ。

 そしてカザンの突進から突きが繰り出される。

 瞬間赤騎士の兜には無数の瞳が瞬時に現れた。

 恐らく見えない壁が何重にも出来たのであろう。

 しかしカザンの必殺剣はバツバツッと音を立てそれらを突き破ると、赤騎士の鎧へと安々と到達するのであった。

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