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黒い何かの塊

 足を引きずるエリーさん。

 シグナ達は彼女の安全のため、一度シャルル達がいる入口の広場にまで戻る事にした。

 そして元来た扉を開いて、シグナは愕然とする。


「坂……道?」


 扉は一枚しかないため間違えるはずがない。

 しかし部屋に入って来た扉を開くとそこに螺旋階段があるはずだったのに、目の前には今まで通った事のない上り坂があった。

 この世界、もしかして一度通った道はもう通れないとかなのか?


 そして延々と続いている歌声に混じり、獣のような息づかいが聞こえたかと思うと、反対側の扉がけたたましく開いた。


 そこには赤い鎧の化け物、と言う表現がしっくりくる人ではない物がいた。

 中肉中背であるそいつのフルフェイスの兜には横へ一本亀裂が走っており、それが生き物の口のように涎を垂らし開いている。またその亀裂から荒い息も漏らしているそいつは、身の丈以上の長さの鋭い槍をこちらに向け構えを取るとジリジリと間合いを詰めてきている。


 カザンは臆することなく一歩前に出ると、そいつと対峙する。シグナもエリーさんを守るため魔竜長剣を構えた。

 ビシビシと皮膚を刺されるような威圧感、それに腰には各々一本ずつ剣も見えるが、こいつが噂の赤騎士か。

 そしてこの鎧が肌のようになっているような、肌に金属が生えているような奇妙な一体感、こいつは既に魔宝石の力で完全に魔物になってしまっているようだ。

 そんな赤騎士を見ていると、ストームとの地下での戦闘が蘇り、無いはずの左目が疼き出す。

 と、突然その場にへたり込むエリーさん。


「あ、あぁぁあ!」


 エリーさんが声を漏らし指差す先を視線で追いかける。先程扉を開けた上り坂に何かが見える。


 何だあれ?


 坂道を滑るようにして、うごめく闇の塊が悲痛な呻き声をあげながら迫って来ていたのだ。その闇からは何本も黒い人の腕のようなものが見え隠れしている。

 なんか非常に不味そう!

 どうすれば、ーーとにかく今ここに入って来られたら収集が付かなくなりそう。

 赤騎士に警戒しながらも急いでその扉を閉め、扉を破られないように全体重を扉に預ける。エリーさんもシグナに習い扉に体を預けた。


 ……。


 …………。


 暫く経つが扉に衝撃が来ない。呻き声もパタリと聞こえなくなった。


 助かったのか?

 ……確認しないと、だよな。

 開けたと同時に手を掴まれたりしたら洒落にならない。

 逃げ腰で恐る恐る扉を開いて覗いてみると、そこには黒い塊はいなかった。そして坂道もなく、そこは初めて見る小部屋となっていた。

 もしかしてこの扉って、開け閉めすると他の場所に繋がる仕様なのか?

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