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生存者エリー

 部屋には来た扉とは別に左右一枚ずつ扉があるが、つい今しがた咆哮が聞こえた方の右側の扉前に立つと思い切って開いた。

 とそこには下りの階段しかない。

 あれ? 確かに物凄く近い感じがしていたのだが。……なんか目眩がする。

 感覚が麻痺する中、階段を下って行くとまた扉があり、そこを開くと今度は螺旋状の下りの階段があった。そしてその階段も下りきるとまた扉があり、そこを開くと正面に扉がある小さな薄暗い小部屋に出た。

 とそこでふらついてしまい、横へ数歩よろけてしまう。

 そして足裏に何かを踏んだ感触が広がる。


「カザン、これは……」


 部屋の片隅には、キタカレの町の人達であろう。折り重なるように多くの人の死体があった。

 手遅れだったか。いや、まだ町の警護をしていた第二師団の連中がいるはずだ!

 その時、町の人達の死体が微かにだが動いた。カザンもそれに気付いたようで、互いに剣を構えつつ死体に近づく。そして魔竜長剣で一番上の死体を押し退けると、そこには頭を抱えて身を潜めている旅人風の女性が隠れていた。女性はこちらを一切見ようとはせず、ただ体を震わせている。


「大丈夫ですか?」


 カザンが声をかけると、女性は恐る恐るこちらに顔を向ける。歳は二十代半ばあたりのそばかすがある人で、両手で抱きしめるようにして剣を握りしめている。


「……ゆ、勇者カザンなの? 助けに来てくれたの!?」

「ここは危険だ。まずは安全な場所に移動しましょう」


 カザンが手を差し伸べると、女性は硬直させていた顔を少しだけ緩めたが、すぐさま顔を強張らせる。


「夫が、まだ夫がいます! 夫も助けて下さい!」


 話しを聞くと隠れていた女性、エリーさんは夫と2人で旅をしていたらしい。そして途中で道を間違えこの辺に来てしまったらしく、あたりが暗くなり始めたため近くに見えたこの古城で朝までやり過ごすつもりだったそうだ。しかし気が付くとこの意味がわからない世界に来てしまっており、あのトランプ達に襲われ現れ離ればなれになってしまったらしい。

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