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無数の扉

 暗い城内に浮かび上がるようにして、大鏡はその光を強めていく。そしてその眩い光は七色に輝き始め、その輝きに照らされた、壁、瓦礫、そしてシグナ達人間は、例外なくその七色の光に染まっていく。


 眩しい。

 目を開けていられない。

 固く閉じた瞼の先から届く、移り行く光が瞳に焼きついて行く。

 そして気が付くと、いつの間にか輝きは終わりを告げていた。

 現状を把握しようと薄目を開くが、まだ薄い靄がかかったようにしか見えない。そして次第に慣れてくると、辺りが一変している事に気が付く。

 瓦礫の山であった城内は埃一つ落ちておらず、廊下に敷かれた赤絨毯が艶やかに光る。

 そして明かりは今まで時折差し込む月明かりと松明が頼りだったのだが、城の白壁に備え付けられた照明器具達が暖かな橙色を灯す。そしてその明かりのため明暗がハッキリと区別され、所々光の当たらない場所が闇として存在していた。


 元来た入り口、外の方を見てみれば、鬱蒼と茂っていた草木は既に無くなっており、代わりに闇がそこに広がっていた。地面があるのかどうかさえ疑わしい、ここには下手に足を踏み入れないほうが良さそうだ。

 例の歌声の方はより鮮明に、それに加えて微かに楽器の音まで聞こえ出している。

 そして視界を一回りさせて気が付く。先ほどまで光を放ちそこにあった大鏡が、古びた木製の板へと変わっていることに。

 ここは間違いなく魔宝石で作られた世界。夢の時と同じでカラクリを解かなければ簡単に外へは出られないと考えた方がいいだろう。

 ホールを見おろせば、皆は踊り場に固まり警戒を行っている。


 しかしこれで仮説が実証された。

 そして魔宝石の世界がここに存在している以上、行方不明者はこの世界に来ているはず。次は生存者を探しながら脱出もしくは魔物の撃破である。

 このままじっとしていても拉致があかない。生存者の手がかりを見つけるためにも上を確認してみなくては。

 途中まできていた石段を警戒しながら上がっていく。そして上りきり二階の廊下へと顔を覗かせた所で目を疑ってしまう。

 それは昼間来た時の古城と構造が変わっていたからなのだが、その変わりようが異常すぎた。

 廊下は延々と伸びており、行き止まりが見えない。その廊下には等間隔にある心許ない弱い明かりの下、右に左にと無数の扉が存在している。

 改めてここが異空間なのだと思い知らされる。


 何か有益な情報が無いものかと目を凝らしていると、遥か先の右側の扉がこちらに向かい大きく開いた。そしてそこから小さな、ちょうど旅人が履くブーツくらいの高さの何かがゾロゾロと出てきては、左側の開いた扉に雪崩れ込んでいく。

 そして扉はパタリと閉じられた。


 今のはなんだったのだ。

 その小さき者達は、子供の遊びから大人の賭博までと多岐にして扱われるトランプに酷似しており、またその紅く薄いカードには手足が生え、上部には金属製の兜を乗せていた。

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