9,獣の夜[3]
第八話の最後に登場する人物を一人変更しました。
詳しくは活動報告にて。
「で……どうしてお前らこんなとこに居るんだ?」
「いや……モンスターから逃げて来まして。一応追って来た奴は退治出来たんですけどね」
“退治”という言葉を聞いた時、知らない3人は驚いた様な顔を見せた。
「生きてて良かったな。じゃ、死ぬなよ〜」
「あなたたちは一体……」
「俺らか——ギルドに所属しない討伐隊みたいな」
「……」
そう言い残して去って行った。女の方は喋らない。討伐隊って事は、悪い集団じゃ無いのかな。でも服装も怪しいし、ギルドに所属しないのも怪しいし、夜中に祠に来るのも怪しいし、要するに怪しい集団って事で良いか。
こうして俺はその集団の事を頭の片隅に追いやろうと——
「あの人たち、ギルドカードを持って無かった」
追いやろうとは出来なさそう。だってギルドカードが無いって事は、人間じゃ無いって事だよな。
「どうして分かった?」
「見りゃ分かるでしょ」
そう言ってアコはギルドカードを取り出した。
「なっ……お前!」
アコが見せて来たのはさっきの集団の写真。数枚なんてもんじゃ無い。
「盗撮だろ!」
「人間じゃないんだから良いでしょ」
「んな事言ってもなぁ……。でも人間じゃ無いかは分からな——」
また俺の顔に液晶画面を押し付ける。
「ほら、赤いマークが出てるでしょ? うーん、説明しにくいんだけど、ギルドカードで撮影する時って撮影される側のギルドカードはプライバシーの保護の為に反応するの。ギルドカードに機種は無いから反応しない事は絶対無いわ。反応が無かったと言う点と、普通ギルドカードを持ってると緑のマークが表示される筈だから赤いマークが出るのはおかしい、と言う点からあの集団は人間じゃ無いわね」
「お前……良くそんな事知ってんな……」
「え? 学校でそう言う授業無かった?」
「うッ……いや俺昔病弱で学校に行かなかったからな。ハハハ」
クソっなんて酷い嘘を突いてしまったんだ……
「そうなんだ。まあ、あの集団の事は1回忘れよ」
アコの心配そうな言葉がグサリと刺さる。
「そうそう、レンさっきの狼どうやって倒したの?」
これは——言って良いか。
「“覚醒”ってのを使ったんだ」
「何それ?」
とアコは頭にクエスチョンマークを浮かべる。
「それじゃあ、やってみるか?」
「でも今は夜だからここに居ないと危なくない?」
「——! 残念だ。ここに居ても危ないと思うよ」
「へ?」
前を見るとそこには、さっきの倍近くに増えた狼さんが出入り口を塞いでいた。
はぁ、いつの間に居たのだろうか。歯を食いしばって今にも襲い掛かろうとしている。
「アコ、覚醒使ってみたら?」
「うん」
「それじゃ、覚醒! って叫んでみろ」
「ふ——っ、覚 醒 !!」
覚醒、と叫ぶとやはりアコの周りに魔方陣が出現、しかし時は止まってないみたいだ。
アコの近くには、猫が1匹佇んでいた。小さな猫で、三毛猫かな? 暗くてハッキリとは見えないが。
「これ……私の召喚獣?」
「そうだ、早く指示を出せ」
「そんな……言葉は通じてないみたいよ」
「ええ? もう俺が殺るしかない。覚 醒 !!」
魔方陣が出現するや否や、バンクルさんが現れる。勿論時は止まって……アコは動いてるだと?
しかし狼は今にも飛掛かって来そうな体勢のまま、止まっている。
「こ……これがあなたの召喚獣?」
バンクルさんは天井ギリギリの身長で非常に窮屈そうだ。
「また喚ぶとは思わなかったわぁ。ま、仕事があるのは良い事ね。あの狼でし……」
「どうした、バンクルさん」
「その猫、この娘の?」
「そうだけど」
そう言うと、猫はトコトコとバンクルさんへ寄って来た。
「この猫、シルクちゃんって言う、獣界での友達みたいなもんよ。獣界に帰ったらシルフちゃんと話したい事が沢山あるから、アイ《狼》ツらは抹殺よ!」
シュンッ
いつも思うが、“抹殺”の速度がハンパ無い。何者なんだ。
バンクルさんの攻撃が終わると、小声でじゃね〜と言い残して消えた。シルクちゃんも。
「まさかさっきの狼もこんな感じで……」
「そう言う事です」
ちょっと短かったかも知れません。
今日は用語は無しです。次回もお楽しみに。では……