8,獣の夜[2]
超重要キャラクター数人登場!
「 覚 醒 !!」
俺が大きな声を挙げる。
……何が起きたかは分からないが、足下に巨大な魔方陣。まるで、自分の中の何かが抜けたのでは無いか? とも思える約3秒。俺は気付いた。
「何も動いていない」
襲って来た狼さんは勿論、アコやそれまでに吹いていた風全てが停止している。何が起きた、俺は「覚醒」って言っただけだが。でも時間が止められるって相当便利じ……
「貴方ね。勝手に私を呼び出したのは」
現れたのは……何だコイツ? 身長の二倍はある巨体のくせに、可愛い目しやがって。オマケに胸には宝石まで付いてんぞ。色や、細かい部位は暗闇で分からない。
「誰?」
「知らないのに喚んだの!?」
「うん」
「あたしはカーバンクル。カーバンクルちゃんで良いわよっ」
あなたにそれを言われた事で、カーバンクルちゃんと言いたく無くなりました。
「じゃあバンクルさんで」
「何それ〜。……で、何で喚んだワケ?」
「初めてだから良く分からないけど、取り敢えずその狼をやっつけてよ」
シュンッ
「完了よー。次は?」
「たった今頼んだ筈ですが」
目の前に居た狼は消えていた。
「抹殺完了だって。そうそう、名前何て言うの?」
「レン。狼さんは何処?」
「天国よっ!」
何だと!! コイツ何者だ!?
「そうそう、貴方の足下にある魔方陣が“制限時間”。魔方陣が消えると、私は消えるの。正確に言うと、“獣界”に帰る。時間が経つとまた召喚が出来るからね」
「まだ魔方陣デカイけど……」
「制限時間を節約したら得よ」
「んじゃあ今回はさよならって事で。じゃね〜バンクルさん」
「あ、最後に。これは時間が止まってるんじゃ無くて——」
行ってしまった。何だあのカーバンクルとか言うヤツは。しかも最後に何か言い残しやがった。時間が止まってるんじゃ無くて何とかかんとか。
でも俺凄いのを召喚した訳だよね? それって、アコに嘘を隠し通す事が不可能では無いって事だな? 希望の光が見えたぜ……
「レンがやったのこの狼!?」
「ん?」
そこには、横たわった狼がバタバタと倒れていた。いや、正確に言うと死んでいた。息をしている様子は無く、赤い眼は戻っていた。
「ま、まあな。一瞬でやっちまった。ゴメン(さっきバンクルさんが居た時は死体は無かったのに……)」
「何か言った?」
「いや。何でも無い。安全な場所へ行こう」
と、言う事で向かったのは、小さな祠。さっきの狼さんの場所から5分位は歩き、着いたその祠はとても小さく、石で造られており、ハッキリ言わせて貰うと、貧相だった。
本当にこんな場所に退避して良いのだろうか? まあ出入り口の鍵は閉めたし大丈夫か。鍵だけでもあって良かった。貧相とか言ってごめんなさい。
「……で、どうやって退治したのよ」
アコが追求するような目付きでこちらを見て来た。と言っても前も見えない状態だから眼を凝らしてみたんだが。
「どうって……上級者にもなればねぇ……」
俺は嘘を突いても怖じけないって決めたんだ。だからもう俺は上級者だ(サモナーなって一週間も経ってないけど)
「へぇ〜上級者になるとあんなの一瞬なんだね」
「そゆこと。てか外に誰か居ない?」
俺たちが気の抜けた会話をしていると、祠の外で物音がした。
ガチャ、ガチャガチャガチャガチャガチャガチャ
「チッ、鍵閉まってる」
「誰か居るのか? 抹殺する」
「止めろ。神聖な祠なんだろ。へへヘッ」
「それじゃ、俺がアンロックする。お前ら、誰か居てもくれぐれも危害は加えるな」
「…………」
「おいアコ、外に誰か居る。恐らくは3人。静かにしてろ」
(分かった)
「……」
「…………」
「………………」
「お前ら誰だ」
「えっ俺ですか?」
マズい、絡まれた。どちらかと言うとこっちが不審者なんだが。
「俺たちは最近夜に出没すると言われる、凶暴化したモンスターを討伐するギルドだ。良く生きてたな」
1人の男がそう話すと後ろから2人の男が後を追って来た。皆が黒いローブを着用し、顔はとてもじゃないが、暗闇で見えない。
「俺はノワール」
「私イシス」
「俺ニュクス!」
ニュクス!?
[用語]
・獣界……召喚獣や、幻獣が共存する世界。サモナーによって異世界に召喚される。その力は強大で、中途半端な能力の獣では生きて行く事は不可能に近い。