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7,獣の夜[1]

 ……やって来たフィールドと言う名のただの原っぱ。

 重装備のアコと軽装の俺が立っていた。さっきまでのやり取りにより、もう夕方だ。

「もう夕方だけど、大丈夫か?」

「大丈夫な様な気がしないでも無いのよねぇ」

「あっそ。クエストやってくぞ」 

 フィールド散策って事は、歩いてれば良いんだよな?

 俺の問い掛けに、意味不明な回答をよこしたアコは草原を散歩気分で歩いていた。俺もつられて歩いていると、


 ピーーーーッ

 ギルドカードが鳴った。人が少ない草原では音が遠くまで響く。ギルドカードの画面には

【クエストをクリアしました。報酬を獲得しました】

 クエストをクリアしたのか。

「私もクリアよ。早速次の目的地へ行きましょ」

 何かアコがリーダーに見えるのだが気のせいだろうか? 取り敢えず次は報酬で武器屋と防具屋か。さっきギルドの近くにあった気がする。


 

 …………俺の微かな記憶もあってか、無事武器屋と防具屋に辿り着いた。武器屋と防具屋で一つの建物らしい。

「いらっしゃいませ〜」

 カウンターには女性が一人立っている。青いバンダナを着用し、後ろに髪を纏めている。

「短剣と鉄の鎧一つづつ下さい」

「クエストね〜。合わせて200ベルクです」

 ん? どうやって金渡すんだっけか?

(アコ、まずお前から払って)

「分かった。何で?」

(声でかいんだよ!)

 アコはギルドカードを店員に渡し、店員は何かにギルドカードを通した。


「それ、何ですか?」

「知らないの? この読み取り機でギルドカードを通すと、お金が振り込まれるの。クエストなんかの報酬金はギルドカードに入って来るのよ。ま、命、身体、ギルドカードがあれば人生生きて行けるって言うものね」

 って事は、ギルドカードを渡せば勝手にお金が払われるんだ。便利だな〜。


 店での用事は済ませ、装備を着用する。鎧はピタリ、と身体に収まる。でも鎧だけってのも気持ち悪いな。

「んじゃ狩りに行くよー」

「ういー」

 俺たちが街の外へ出た頃にはもう陽は沈み始めていた。


「早くしないと外危険になっちゃうからさっさと済ませちゃおう」

「モンスター、居なくない?」

 外にモンスターはまるで居なく、狩りが出来ない。

 遂には大陽は完全に沈んだ。沈むのって早いんだよな〜、なんて言ってる場合じゃ無いな。

「今日は帰ろうぜ」

「分かった」

 フィールドをしばらく歩いたので街へは時間が少しばかり掛かる。


 街の門まで辿り着いた俺たちは驚愕した。

「門、閉まってね?」

「閉まってる」

 これはまさか……宿に帰れないパターンか?

 ああ……近付けば近付く程現実味が増す。


【6時を過ぎたので門を閉めました。明日の朝6時に門は開きます】

「まっ……まさかこのフィールドで12時間過ごせと?」

「そうね」

「はぁ!? 無理に決まってんだろ!」

「あなたサモナー上級者なんでしょ?」


「うおっ……まあな。アコを助けられるかが怪しい所だったからな」

「本当……」

 死ねなくなりました。どうして俺はここで変な事を言ってしまうんだよ!

 照れているアコの顔ももう暗闇で見えなくなった。よく見ると、遠くでは怪しい光を放った眼がこちらを見ている気がした。


「アコ、あっちに居る何かがこっち見てる気が」

 と、俺が指を指したのは街の門から一直線に行った場所だ。

「錯覚かしら、向こうにも向こうにも居る」


 ああ、囲まれたのかな。召喚の仕方も分からないんだぞ。

 しかも段々と近付いている。逃げながら策を考えよう。

「逃げるぞ」

 俺たちは一目散に逃げ出した。逃げる方向は決めていない。召喚、どうすりゃ出来るか。……あっもしかすると!

 逃げながらもギルドカードを取り出し、クエストのページを開く。

 俺の考えとしては……もう分かるかも知れないが、☆1のクエストを見れば良い話では無いか。手順が載ってる筈……!


「後ろ見て!」

「う……」


 後ろには狼が3、4、5……異世界に来て初めて戦うのは凶暴化した狼さんですか。このままでも追い付かれるんだし、どうせ死ぬ位なら足掻いてやろう。

 恐らく剣は効かないだろうから……ギルドカードを投げ付けて物理的に攻撃……絶対やりたくないし、殴る蹴る無謀。そう考えると、アイツらに追い付かれてでもギルドカードのクエストから召喚の仕方を調べるしか……

「アコ、——」

「?」

「止まれ」

「??」

 アコの頭にクエスチョンマークが増えた気がする。それでもアコは止まった。狼は徐々に間を詰めて来る。

「止まって……良かったの?」

「待ってろ」

 えっと……剣や杖で円を描き、その中に星を……んな事してる場合か!

 他に無いのか……ん? 更に簡単に召喚する上級者向けの召喚だと!? ふむ……覚醒。「覚醒!」と雄叫びを上げながら上空へ剣や杖を掲げ……

「危ない!」


 飛び掛かってきやがった。アコが逸早く気付いていなければ死んでいたかも知れない。

 覚醒をするか。でも覚醒してから何をすれば良いんだろうか? 自分に害は無いのか? ……ええい!


「 覚 醒 !!」

[用語]


・凶暴化……夜になると、今までいたモンスターが凶暴化する、最近起きた謎の現象。人間は勿論、モンスター同士で喰い合う事もある。凶暴化したモンスターは眼球が赤いと言うのと、日光に弱いという特徴を持つ。この為街では夜を迎えると門を締め切り、住民は家に逃げ隠れる。街から帰って来なかった人で生きて帰って来た人は指折り数える程。

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