6,逃走[2]
どうにか本を購入出来ないかと、それから様々な策を試した。
取り敢えず借金は可能なのかを聞く。自分自身もそんな事はしたく無いが、今は話が違う。
借金は可能らしいが、ここでは出来ないらしい。今外へ出るのは危ないだろう。他の策を考える。
次は駄目元で口上を試す。
「いや〜お金を忘れてしまいましてね」
「じゃあ取って来て貰えれば……」
「そう言う訳には行かないんだよ」
「……」
失敗。こうなりゃ食事券と宿泊券をプレゼントしてしまおう。
「……ここだけの話、これを私にタダでくれたら、食事券と宿泊券を上げようかとも考え……」
「そう言うの興味無いんで帰って下さい!」
「はぁ」
店から締め出された。出禁かもな。しょうがない、白状するかぁ。
俺が宿に向かって歩き出す。怒ってるなんてレベルじゃ無さそうだ。
ガチャっと部屋のドアを開ける。鍵を部屋に忘れた筈だが、空いていた。まさか……
「あら、何処行ってたの?」
居たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
「お前こそどうやってこの部屋入ったんだよ」
「お前じゃ無くてアコよ!」
「アコこそどうやってこの部屋入ったんだよ!」
「ベルさんに合鍵を借りたの」
……なんて奴だ。ベルさんを味方に付けたか。そんな事より、白状するぞ。
「あのさ……」
「さ、行きましょ」
終わった。第二の人生GAME OVER。
こうなりゃ最後の手段……
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「本当にこれで良いの?」
「ああ。サモナーは食事が第一だ。まずは喰いまくる。これが鉄則」
「分かった!」
最後の手段は実に簡単だ。嘘を貫き通す。俺の“勘”と“ギルドカード”を生かす。
ギルドカードにあるサモナークエスト通りに事を進めれば良い話では無いか。
薄手のコートにジーパンの俺と、アコが居る。アコは大きくて丸い目を輝かせ、こちらを見ていた。茶色に伸びるその髪は何故だか神々しくも見える。ま、俺のタイプとは違うんで興味は無いけど。レザーで作られた鎧にブーツに下半身は見えないがレザーで揃えている。
実は周りもそんな感じの人が多く、変な目で見られたりはしない。寧ろ弱々しい身体だと言うのに最低限の服しか着ない、こちらの方が変な目で見られてる気がする。
そうそう、食事券とか言うのは、お金では無く、全国の殆どの店で共通のチケットだ。その為勿論本屋で使える訳が無いのだ。
「沢山食べるのね……」
「うんうん。最近全然食べてなかったからな」
いやーここのチキンは美味い。腹が減り過ぎて字を見ている暇は無かったが、何とかバードの肉らしい。気になる。
「そろそろ作戦会議と行こう。まずはギルドカードのサモナークエスト☆0を開いてくれ」
アコがギルドカードをいじっている間に、こちらもサモナークエスト☆0を開く。
えっと……☆0は3つだな。
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サモナークエスト☆0
クエストナンバー0ー1 散策 フィールドを散策して下さい。報酬……100ベルク
クエストナンバー0ー2 装備 報酬を使い、武器屋で短剣、防具屋で鉄の鎧を購入して下さい。報酬……100ベルク
クエストナンバー0ー3 討伐 その装備でフィールドに居る何かしらのモンスターを討伐して下さい。報酬……100ベルク
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……取り敢えず召喚に付いては触れないみたいだ。で、一度にクエストの受注は3つまでだから一気に全部受注と。
「まずこの☆0のクエストを全部こなそう」
「分かったわ。レンもそうだとは思うけど、このクエストはサモナーの下級職、“占い師”でもやったわよね〜。今となっては懐かしいわ」
そうか。占い師って言う職業で条件を満たさないと、サモナーにはなれないんだな。
「そっ、そうだな〜」
「あらレンも占い師からだったんだね。最近占い師の職業をやってる人少ないからね。占いゲームしない?」
「うっ……今日は遠慮するよ。クエストへ向かおう」
あ……危なかった。占いゲームって一体なんだよ……もしかして、占い師って事は俺の事も見抜かれてる……?
有り得ないか。
[用語]
・サモナークエスト……その名の通り、サモナー用のクエスト。始めの方は、サモナー初心者用に紹介されたクエストだが、段々と難易度は上がり、時には緊急クエストと言う、人命救助をする事もある。