2,プロローグ[2]
街へは思ったより時間は掛からなかった。なんとか到着。ギルドカードを貰いに行こうか。
入口にあった門から街に入って行った。頑丈そうな入口だな。
普通に正門を通ると正門の前で立っていた兵士2名が俺に槍を向けて来た。
「この街の者では無いな? 人間でも無いだろ貴様」
失礼な。人間に決まってる。
「失礼ですねぇ。人間ですよ」
「では何故ギルドカードも持たずに堂々と正門から入って来るのだ?」
知らねぇよ!
「ギルドカード持ってないんで」
「ギルドカード持たずして人間と名乗った勇気は認めよう。お前ら、警察の所へ持って行け」
「はいっ!」
近くに居た兵士が威勢の良い声を挙げ、返事をした。
どうしてかは分からないが兵士たちに腕を掴まれ、強引に連れて行かれた。
この世界ではギルドカードを持っていないだけで犯罪者扱いされるのか。
だから俺は逮捕されたのね。…………大変な事になってしまった。
牢屋にぶち込まれたりなんかしたら……気付いた時には遅かった。
交番と思われるところに入らされ、ハ……頭が綺麗な状態の恐そうな男が居る。
「ほう、お前が変人か」
変人!? いつからそうなったんでしょうか。
「変人じゃ無いんですけど」
「ではギルドカードを見せたまえ」
皮肉っ……このハゲが!
「無いです」
「牢屋にぶち込んどけ!」
早いでしょ。
「いやいや待って下さいよ。ちゃんとIDとか言うのもありますし、今からギルドカードを貰おうとしたんですよ」
「何処にID何か書いてある」
俺はニュクス君に貰った手紙の存在を忘れていないぞ……
俺は手紙を突き付けた。しかしやがて警官たちは笑いを堪えられなくなり、吹き出した。
その笑いは俺の顔を真っ赤に変え、恥ずかしいでは済まなかった。
「ハッハッハ! 古代文字じゃあないか!」
古代文字ってそんな。俺普通に読めてたし、ニュクス君古代文字書ける訳……
「読めますよ」
「面白い、それでギルドカードを貰ってみなさい。執行猶予1時間の懲役300年だ。……ハハハハハ」
馬鹿にすんなっ古代文字だか何だか分からないけど、釈放してくれた。
さっさとギルドを探してハゲをぎゃふんと言わせよう。
それにしても……この街凄い入り組んでるな。くねくねとした坂道や、裏路地が沢山。現代のビルや商業施設は皆無に等しいが、宿屋や中には武器屋等特殊な街作りが目立っている。まあここも俺にとっては異世界だけど、他の人にとっては現実世界だもんな。異世界人が街に乗り込んで来たら確かに捕まえるわな。地球で言う、身分証明書を持っていないんだし。
お、宿屋の3階にギルド発見。通りで見つからない訳だ。
アパートの様な建物に木で造られた看板が見えた。
薄暗い階段を抜けるとドアを開ける前からワイワイした声が漏れていた。
中へ入ると数人の集団が話しをしたり、武器を持った男たちが酒を飲んだりと凄い状態。大広間には優しいライトの光が差し込んでいて、奥にはカウンターがあり、受付嬢も配備されていた。
「いらっしゃいませー」
「ギルドカードを作りたいのですが」
「新規ですね? IDは持ってらっしゃいますか?」
俺はまた手紙を見せた。
「申し訳ございません。古代文字は得意ではありません」
やっぱり古代文字だったか……
「ごめんなさいね。IDは1152386595です」
IDを言うと受付嬢はペラペラと本を捲って答えた。
「特殊なIDですね。転生されましたか?」
「そうですけど」
「やはり。貴方のご職業ですが、“サモナー”でございますね。上級職です。サモナーだけが集まるギルドがございますので、そちらに入られても良いかと思いますよ。強豪ギルドとして有名です」
「入りますっ」
「しかしこのギルド、入団条件がございました」
「何ですか? 何でもしますよ」
「サモナークエスト☆2までクリアが最低条件です」
恐らくサモナー専用のクエストだ。
これをこなして行くと召喚出来る物も増えて行くんだと予想する。
「クエストは何処にあるんですか?」
「ギルドカード作成までお待ち下さい」
どうやらクエストはギルドカードを手にしてからの様だ。
サモナーって確か“召喚士”だよな?
そんな人が集まってみんなで召喚したら……大変な事になるな。
周りには色んな種類のギルドがあるみたいだ。
どれも10人程から構成される組み合わせであり、みんな同じ職業でも無いのか。
奥に掲示板がある。行ってみよう。
電光掲示板に記されたモンスターの情報らしい。
《モンスター速報!》
・氷河の山にサキュバスが発生。数は増えて行く一方。討伐願う!
・始まりの草原奥地にドラゴンナイト3匹発生。討伐お願いします!
…………どうやって伝えているんだこれ? 技術が発達してんだな。
「レンさ〜ん」
ギルドのカウンターに居る女性に呼び出された。
どうやら出来上がりかな。
「ギルドカードを発行しました。クエストの内容についての説明も搭載されておりますので活用して下さいね」
「どうも」
渡されたのは地球で言う、“スマートフォン”。タブレット型の端末。割と小型だ。
四角い画面をタッチするとメニューが表示された。クエスト、ギルド、メモ帳等の基本的要素もある。
取り敢えずステータスだな。ステータス画面と思われる物に触れると、自身の状態が表示された。
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名前:レン(男)
種族:人
装備:無し
職業:サモナー
ギルド:無所属
受領中クエスト:無し
追加要素:有り
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追加要素が気になるという事と、装備はどう読み込むのかが不明かな。
まだまだやることがありそうだな。次はクエストだ。
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サモナークエスト☆0:未クリア
サモナークエスト☆1:未クリア
サモナークエスト☆2:未クリア
サモナークエスト☆3:未クリア
これ以降のクエストはギルドに所属しないと出現しません。
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これはまずはレベル0から受けてく奴だな。
情報収集をしながらクエストを受けるか。ギルドカードを持っていない人間は捕まるって事は、みんながギルドカードを所持してるって事だから、街で情報収集をしなきゃな。
それにしてもニュクス君の言ってた“導いてくれる道具”はこのタブレット型ギルドカードなのかな?
取り敢えず情報収集が必要だ。あのハゲの所へ向かうしかないか。
[用語]
・ギルドカード……現世で言う、タブレット端末。アップデートにより、追加機能が増えたが、昔は自分の身分を証明する為だけに作られていた。これを持っていないと人間以外の人種と見なされ、処分を受ける。10歳から所有する事が決められている。