1,プロローグ[1]
恐らく初めまして。エアコンです。
これから宜しくお願いします。
俺は今異世界に飛ばされた。
どうしてかって? こっちが聞きたい。
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就職試験に合格した21歳の俺、神木蓮はお祝いに仲間と飲み会をする事になった。
飲み会の集合場所は家から近い居酒屋。その日はお金を気にせず飲みまくった。
夜も更けて来た頃にーー
「そろそろ別れの時だなヘヘへ」
「じゃあさ、ジャンケンで負けた奴は一人で帰るゲームしようぜ!」
「いえーい!!」
「ジャンケン……」
結局一人で帰る事になりました。他の数名はタクシーで帰る事になった。
俺を祝うパーティーの筈が、罰ゲームを受けるとは。
ルール違反だが、あの交差点を渡ったらタクシーに乗るとしよう。
しかし残念ながら俺はもう二度と交差点を渡る事は無かった。もう二度と家に帰る事も無かった。
救急車の音が聞こえて来る。でももうダメかな……
辺りには血の跡が散乱していた。
警官の声が聞こえて来る。
「トラックに轢かれて重体。被害者は就職を控えていた男性。だって。気の毒な事故だな」
あれ……俺意識ありますけど? でも身体が動かない。どうしよ。俺このまま?
訂正。意識が途切れてあ……
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目が覚めると、俺は真っ暗な部屋に居た。勿論前など全くと言って良い程、見えない。
周りを手探りで探索してみるが何も無い。
酔いは完全に覚めていた。お化け屋敷にホラー映画などを制覇してきた俺でも寒気がする。それに伴った症状だが、誰かに見られている感じも。
「やあ!」
「…………!」
やっぱり見られてた……冷や汗が頬に滴るのは前が見えなくても分かった。
「見ての通り君は地球にてお亡くなりになられた」
「あの……誰ですか貴方」
「死んだと言うか、今から転生しようとしてるところだから心配しないでね」
「誰でなんですか?」
「転生の手続きが終われば新たな人生を刻む」
「一体貴方は……」
「今から君に幾つかの質問がある」
「誰ですか?」
「答えてくれれば手続きは終わりなんだ」
「あの……」
「じゃあ答えてくれるね?」
「はぁ」
自分の正体を言う気は全く無いらしい。
個人情報と言う奴ですね。はい分かります。
「まず最初に。君の名前は神木蓮でいい?」
「そうだけど何で知って……」
「性別は男。これは大丈夫だね。そんで……今から転生する世界、何処にしたい?」
コイツっ人の話しなんか聞きやしない。
「例えば女しか居ない世界。男が行ったら間違い無く奴隷にされるよ。後は男しか居ない世界。全然楽しく無いと思うけど」
ふざけているのか? それとも俺を虐めたいのか!?
「他には無いのか? もっとゆったりとした世界みたいな……」
「それならおすすめがあるよ。地球の様に山があったり、海があったり。色んな種族の生物がいるしとても良いと思うよ」
うん。そこしかないな。女だけとか、男だけとかの世界より絶対良いな。
「じゃそこで」
「リョーカイです! 転生した時にポケットの中にこの世界で“人間”として認められるまでのメモを手紙として書いておいたから」
「分かった。ところで誰なの君」
「バーイ」
最後まで憎たらしい奴だったな。
名前も教えてくれない。
他の世界に飛ばされるったら光に包まれるイメージがあるのだが、光の演出なんかは全然無いみたいだな。
これが普通なのかね。
ってなんか意識が無くなって来た感じがする。
転生のお決まりで……す…………よ………………ね……。
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目が覚めると俺は草原に倒れており、明るい大陽があり、青い空があり、白い雲があった。
近くには街らしき物があり、何だか賑わっている様だ。
盛り上がってきたぜ! 暗闇の部屋の時とは思えない程、ワクワクしてきた。修学旅行に行く時のバスに乗る時と感覚が似ている。マニアックでごめんなさい。
俺は無地のTシャツ1枚にとても着ていて気持ちが良いとは言えないナイロンのコート。何故ナイロンか分かるかって? さっきまでの服装と変わってないからさ。それにジーパン、そして運動靴で転生されたみたいだ。
転生前の記憶があるのは珍しいパターンなのだろうが、顔を触ってみたが、今までと顔の形は変わってないようだ。良かった……。良かったと言うのも俺は現代世界で、“イケメン”とか言う部類に入っていたらしく、友人曰く「お前はカッコいいから就職に成功したんだな」とまで言われる始末。
身長とかも特に変化は無い様だし、本当に自分が死んだのか疑ってしまう。
ま、死んでも死んでなくてもこの世界では関係無いな。
第二の人生は何かに囚われたりするような、地球での生活みたいにならないようにエンジョイしてやる!
ジーパンのポケットを探ってみると、紙切れが1枚入っていた。これが手紙か。
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転生は無事完了したみたいだね。
君はこの世界で“レン”という名前を使って生活してくれ。
後これが一番大事。ギルドに行って“ギルドカード”を入手してね。
これの説明はギルドに行くのが早いんだけど、これが無いとこの世界で人間として認めて貰えないみたい。
ギルドカードを貰うにはIDが必要だ。
IDは[1152386595]。
この世界、ゲーム的要素があって大変かも知れないけど、その道具は君を導いてくれる。
ハズ。本当に便利なんだよそれ。僕も愛用してる。転生管理官としてもギルドカードは必要だから。
じゃあまた会う事があれば。
転生管理官専務 ニュクスより。
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ニュクス君だったのか。
取り敢えず人間になるべくギルドカードを作らなければ。
さっき気になってた街に行けばいいんだな。
俺は倒れた身体を起こして街へ向かった。
[用語] 余談です。
・ニュクス……ニュクスと言うのはギリシア神話の原初の神で、夜の女神としても有名です。この作品では男としてでてきますが、ニュクスはギリシア語で夜なので暗闇に登場させました。