憧れの職場
普段はめんどくさがり屋な彼だが、これでも社会人だ。自分で稼ぎ、食って、生きている。こんな彼でも生きていけるのは、この時代だからだ。
彼は冒険者。サラリーマンなどとは違い、自分の好きな時に仕事をし、一度で莫大な報酬を得ることもできる。モンスターを狩る正義の味方。自由気ままに生きる風来坊。生と死が隣り合わせのロマンあふれる開拓者。誰が憧れないだろうか。老若男女問わず、一度は夢見たことがあるはずだ。普通の仕事では安定した給料、安全な暮らし、平和な日常を謳歌できるだろう。これで十分なのだが、人間とは欲深いものである。あえてそれを捨て、スリルを求める。一度きりの人生だというのに、命という火を激しく燃やしてしまいたいと思うのだ。冒険者にはリスクが大きい。しかし、見返りも大きい。
冒険者はどんな人でも活躍できるチャンスがある職場だ。それは誰でも力を得ることができる時代だからだ。人は牙も羽もない代わりに、頭脳が与えられたという。今まではそれでよかった。しかし、今はそれだけでは足りない。だから能力を手に入れた。世界が変わったあの日から、止まっていた進化が遅れを取り戻すように爆発的に進んだ。その結果が能力。才能は先天型と言われ、人間の限界を超えたことができるようになった。才能がない人でも、魔法や武術を身につけることができ、その能力を使いたくなった。ある力を使いたくないと思えるのはごく少数である。
人に向けるのはダメだ。じゃあどうするか。敵に使えばいい。モンスターはあふれるほどにいる。人に害をなすのがほとんどだ。倒してもいい敵だ。そんな思いが爆発し、モンスターに無謀な挑戦をする前に人をまとめたのがギルドだ。冒険者はギルドに管理されている。ギルドは情報を集め、冒険者をサポートする。ギルドに登録せず、モンスターに挑む人もいる。それは単に馬鹿なのか、ギルドに管理されるのが嫌な本当の強者だけだ。
「クエストは……いいのがないな。んじゃ、俺も新大陸とやらに行くかな」
新大陸が出たせいか大陸でのクエストが少ない。一時的に膠着状態となっている。それでも新人は大陸から出れないので、新大陸は中堅者と高位者が行くところだ。ギルドにはランクはないのだが、ある程度は区切られている。自由探索許可証を持つと中堅者。二つ名がつくと高位者。大体なので同じ高位者でも実力が離れているのはよくあることだ。その為、高位者の中でも特に強い者は王と呼ばれている。実質、王は強い権限を持ち、勝手に島を自分の領土にしたり、一帯のモンスターを消し炭にしたりと、好き勝手やっている。
「ほい、カードと許可証。新大陸行くんで承認を」
「かしこまりました。少々お待ちを」
大陸内なら待つことはないのだが、新大陸の行く場合は色々と必要で、一人一人確認をしなければならないのだ。
「承認しました。では、ご武運を」
新大陸は太平洋にあるので、一度海を渡らなければいけない。転移壁も繋がっていないので、行路は海か空だ。どちらもモンスターがいるので、特別な方法でないと行けない。
「向こうにあいつがいたら跳んで行けるのだが、いたらいいなぁ」
行く方法としては魔法障壁で守られる特別な定期船と飛行船があるのだが、まだ帰ってきていない。運良くあいつがいることを願い、連絡符を使った。
未だにやる気が湧かない甲羅です。高校の課題ももう少しで終わりそうなので、息抜きに投稿しました。
気まぐれなんですがまたいつか。
感想、誤字脱字もよろしくお願いします。