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少年 ~町の謎~

~ランダおじさんの話~

僕は、ランダおじさんの家で暖かいスープをいただいた。

このスープにはこの町でしか取れない木の実が入っているらしい。



ランダおじさんは、まず僕のことを聞いてきた。


ランダ「君はどこから来たか、教えてくれるかい?」

少年「お話したいんですが、僕もよくわからないのです。」

ランダ「それは、どういうことだい?」

少年「まず、僕は多分こことは違う”世界”でとある建物から飛び降りました。そして、落ちている途中で気を失いました。次に意識が戻った時には暗闇の中にいました。」

ランダ「なるほど。それで君はどうしてこの町にたどり着いたんだい?」

少年「ぼんやりと光が見えたんです。最初は本当にそこに光があるのかわからないくらいぼんやりとしていましたが、近づくにつれてその光はしっかりとしたものになりました。そして、その光に入った時には、この町にいました。」


僕が話すと、ランダおじさんは興味深そうに僕の目をじっと見つめそれから、納得したようにうなずいた。


ランダ「君のような者を私は、昔一度だけ見たことがある。」

少年「えっ!」

ランダ「その者と、私は話をした。今の君とのようにな。」

少年「・・・・・」

ランダ「その者は、ここではない”異世界”で、希望をなくしとある建物から飛び降りて自殺しようとした。だが、tpび降りている最中に体が動かなくなり気を失った。」

少年「僕と、同じだ…」

ランダ「そうだ。あの者も君と同じような目をしていた…。その”異世界”によって心を殺されてしまったような。そんな光のない目をしている。」

少年「確かに、僕は前の世界で希望をなくしました。心も死にました。」

ランダ「それで、君も自殺しようとしたのに、この町、この世界へやってきてしまったと。」

少年「はい…。」

ランダ「私の祖先が生きていたときにもそんなことがあったらしい。話を聞いたことがある。だが、その建物から飛び降りたものがすべてここへたどり着けるわけではないようだ。」

少年「そうなんですか…何かしら条件があると?」

ランダ「きっとそうだろう……この町には大きな木がある。」

少年「え?」


いきなり話題が変わったことに僕は驚いた。

もっと話を深めるのだろうと思っていた。


ランダ「この町は大きく分けて3つの場所から成り立っている。一つは、君が最初にいた沢山の店が立ち並ぶあの場所。二つ目はここ住民の家が立ち並ぶ場所。そして、三つ目は我々の守り神である大きな木があるここからさらに奥へ行ったところにある場所。」

少年「大きな木…。」

ランダ「我々はその木から生まれる。」

少年「どういう意味ですか?」

ランダ「言った通りさ。我々はその木から生み出されるんだ。」


僕は理解できなかった。木から生み出される。理解できない。


少年「もう少し説明してもらえませんか?」

ランダ「いいだろう。私たちは木から産み落とされる。そして、木がこの町に新しい命を授けようとするとき男女1人ずつ木の下に呼ばれる。」

少年「木は言葉を話すんですか?」

ランダ「そんなことはない。ただ。子供をこれから授かる男女は。木に呼ばれているような気がするんだ。」

少年「そんな、不正確な…」

ランダ「この町の人間ではない君はそう思ってしまうだろう。だが、この町の人間にとってはそれは運命のお告げなんだ。木の下に呼ばれる男女は必ずしも愛し合っている2人ではない。」

少年「では、全く知らない人との間に子供ができるということもあるんですか?」

ランダ「そのほうが多いだろう。そして、木の下にその男女が出会うとき2人の間に一つの大きな卵が落ちてくる。」

少年「卵…ですか?」

ランダ「そうだ。」

少年「その卵の中に赤ちゃんが入っているんですか?」

ランダ「そうではない。」

少年「え?」

ランダ「その卵の中には老婆か老父が入っている。」

少年「…?」


そんな馬鹿馬鹿しいことがあるか。


ランダ「我々は、老人の姿で生まれそして、若返っていく。赤ん坊の姿まで戻り、そしてまた年をとっていく。」

少年「そ、そんな…」

ランダ「信じがたいとは思うがこれは事実なんだ。」

少年「・・・・・」

ランダ「我々は、若返っている時間を”子供”といい、年をとって行く時間を”大人”という。」

少年「だから、大人に見える人々が子供に見える人をさん付けで呼んだり敬語を使ったりしているんですね?」

ランダ「そうだ。これで、この町の人々についてはわかっていただけただろうか…?」

少年「…はい」

ランダ「この町の人間ではない君にはとても理解しにくいことだろうが、これはすべて事実なんだ。」

少年「そうですか…」

ランダ「君は、これからどうするつもりだね?」

少年「特に、決めていませんが…。」

ランダ「そうか。なら、少しこの町に住んでみるのはどうだ?」

少年「え・・・・」

ランダ「もし、君が人生をやり直したいと思っているなら君が元いた世界に戻れるように私も協力しようと思う。」

少年「今のところ、そのつもりはありません。」

ランダ「そうか…なら、やはりこの町に住みなさい。」

少年「え?」

ランダ「私の家の隣に空き家がある。そこに住みなさい。先ほどその家に住んでいたものが死んだ。」

少年「え…そこにですか?でも、僕が勝手に住んでは…」

ランダ「大丈夫だ。この町は家の持ち主が死んでしまったとたんその家はだれが住んでもいいのだ。」

少年「そうなんですか…」


僕は、もう何が起きても驚かないような気がしていた。


少年「その人が死んでしまったのなら今頃皆さんは忙しいのではないのですか?その…処理というか…」

ランダ「それは、必要ないんだ。」

少年「・・・・」

ランダ「この町の者は死ぬ時が来ると体がだんだんと薄くなる。そして、魂となり木へと還る。」

少年「なるほど。」

ランダ「もう、驚くことはないようだな。」

少年「この町には理解できないことが多すぎます。一つ一つ驚いていてはもちませんから。」

ランダ「君の眼が少しばかりか変わったよ…」

少年「え?」

ランダ「いや。何でもない。それじゃ案内しよう、君の家へ。」


僕は、この町に住むとは言っていないのに、勝手に住むことになってしまったようだ。



どうやら、僕はまだ生きるようだ。

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