男性・少女 ~謎の少女~
~チャンス~
俺が屋上への階段を上っていると、上からものすごい速さで駆け降りてくる人物がいた。
それは、男性だった。
何事かと思いながら、男性を引き留めた。
俺「どうしたんですか?」
男性「と、飛び降りたはずの、しょ、少女が消えたんです!!」
普通の人ならば、この駆け降りてきた男性は狂っていると思うだろう。だが、今のおれは異常だ。なぜなら、同じことが目の前で起こったことがあるからだ。
俺は、不謹慎ながらこれは二度とないチャンスだと思った。腕時計を見た。午後11時03分。俺は思わずにやけてしまった。
男性「どうしたんですか?あの!聞いてます??」
俺は、男性を落ち着かせて今見てきたことを説明してもらった。
まとめると、
小学4年生くらいの少女が屋上にやってきた。
男性は上司への怒りを抑えるために屋上でたばこを吸っていたこのビルの従業員。
少女が来て不審に思った男性は少女に声をかけた。
少女は声に反応せず柵へと向かった。
男性が危ないと思い少女を捕まえた。
少女は「帰らなければならない。だから離して。」と言っていた。
男性は少女がなにかしらあって、パニック状態にでも陥っているのだろうと思っていた。
男性は少女を何とか説得して交番へ行こうと考えていた。
だが、少女はとにかく離してくれと言ってきかなかった。
男性がしかたなく一度手を離した。
すると少女は、柵に手をかけのぼりだした。
男性は焦って少女を引き留めた。
だが、少女は体半分が柵から出ていた。
男性の努力もむなしく少女は柵を飛び越えて行ってしまった。
男性は、まずいと思い柵から身を乗り出し下を見た。
そこには、飛び降りたはずの少女はいなかった。
男性「自分は気がおかしくなってしまったと思ったんです。飛び降りたはずの人がいなくなるわけがないじゃないかと。でも、何度見ても少女はいないし、人1人飛び降りたというのに何も騒ぎが起きない。なんだかだんだん不気味になってきて、思わず階段へ向かって走って逃げてしまったんです。」
俺「なるほど。ありがとうございました。ちなみに、それは何時くらいだったかわかりますか?」
男性「はっきりとはわかりませんが、少女と会話をしていたのは10時57分くらいです。そこから何分かしてから少女は飛び降りたので…11時くらいでしょうか。」
上々だ。
俺「ありがとうございました。今日見たことはだれにも話さないでください。離せばきっとあなたがおかしくなったと思われるでしょうからね。」
男性「そうですよね…。ありがとうございました。あの…少女は大丈夫でしょうか?」
俺「確信を持って大丈夫とは言えませんが、きっと大丈夫でしょう。」
男性「そうですよね…。あの、あなたにお話しできてよかったです。良かったというのは良くない表現だとは思いますが…。きっと、誰かに話さなければ気が狂ってしまっていたでしょう。」
俺「はい。では、もう会わないとは思いますが。お元気で。」
そこで、俺と男性は別れた。
俺はそのまま屋上へと向かった。あの不可解な現象がまた起きた。しかも、今回飛び降りた少女は「帰らなければならない。」と言っていたのだ。ということは、少女は”向こう”を知っているのだ。
そして、大事なのは「時間」だということもわかった。
俺は、にやけがおさまらなかった。
これで、少年がどうなってしまったのかわかる。
ただし、少女がただの気の狂ったものではないという仮定での話だが。