少年・男 ~謎そして町~
~光の先~
少年は、光へ向かいゆっくりと歩いていた。
どれくらい歩いただろうか。とても長く歩いたような気がするが、ほんの数分しか歩いていないような気もする。
だが、光は最初はとてもぼんやりとしたものだったが、はっきりと見えるようになっている。
サクッ
サクッ
あと一歩で光に届くような気がする。
一歩踏み出し右手を光の中へ伸ばした。
その瞬間少年は光に包まれた。
そこには、今まで見たことのない世界が広がっていた。
沢山の人がいる。沢山の店が出ている。
とても多くの人がいるのに全ての人が見たことのない服装、顔立ちだ。
「ここは、どこなんだ・・・」
町というには家が一つもなかった。全てが何かの店だった。商店街とでもいうべき場なのだろうか。
これだけの騒がしさなのに、なぜか都会の独特の雰囲気は感じられなかった。
どちらかというと、田舎というふうに感じられた。
田舎にしては栄えすぎているのだが、やさしさがこの場全てを包んでいるような場所だった。
買い物をしている人がいたり、買い物バックを片手に話している人がいたり、老人たちが集まって温泉へ向かっていたりする。
買い物をしている人々は、どうすれば自分がいい買い物をできるかではなく、どうすればお互いにいい買い物ができるかを考えるように、お互いに話し合い買っている。
リンゴの最後の一袋を1人の女性が買った。それを、もう1人の女性が残念そうに見ている。リンゴがほしかったのだろう。
すると、リンゴを買った女性が見られていることに気付き、見ていた女性を呼んだ。
残念そうに見ていた女性はおずおずと、リンゴを買った女性に近づいて行った。
すると、その2人の女性は何か話しだした。だんだんと、見ていた女性の顔が明るくなっていく。
驚くことに、リンゴを買った女性は一袋五個入りのリンゴを、3個もその女性にあげたのだ。
しかもお金など一切もらってない。
さらに、その2人の女性に3人でわいわい話していたおばさんがたが近づき、さらにリンゴをほしがっていた女性に1人2個ずつあげたのだ。
僕は、そんな光景を初めて見た。
普通ならばこんなことはあり得ない。
リンゴをたくさんもらった女性は服がぼろぼろだった。あまり裕福な家庭ではないのだろう。
それを、哀れんだのか。いや、きっとこの町の人は他の人の世話をするのが好きなんだろう。
いたるところで同じようなことが起きている。
そんな光景を見ながら僕はぼうとしていた。
?「見ない顔だね!どこから来たんだい?」
一人の青年にいきなり声をかけられ僕はびっくりしてしまった。
青年「ごめんごめん。驚かすつもりはなかったんだ。」
少年「大丈夫です。すいません。僕は・・・・あれ・・」
僕は後ろの光から来たのです。
僕は、そう言おうとしたのだ。歩いてたらたどり着いたのだと。
だが、僕の後ろには他と同じ店などが並んでいるのしか見えなかった。
青年「どうしたんだい?」
少年「すいません。いえ。ちょっと・・・」
青年はきっと僕の態度が気に入らないだろうと思った。
だけど、青年は心底不思議がっている顔をして、少し考えた後
青年「大丈夫。嫌なことは言わなくていいさ。人は誰だって一つや二つ言いたくないことがあるさ。」
と、僕が今まで見たことのないような心からの笑顔で言った。
~あの場所~
1人の男性が、とあるビルの屋上に立っている。
俺はまたこの場所に来てしまった。「あのこと」があった後数日は来ないようにしていた。
だか、やはりどうも気になってしまう。もしかしたら「あのこと」は本当は起きてないことで、ただの幻だったんじゃないか。と考えては、事実であると確信するためにこの場所を訪れてしまう。
そして、自分の身にも何か起きるんじゃないかと思いいつもここに立っている。だが、今まで何か起きたことはない。
「いつも」というのは違うか。「あの日」と関係ありそうな、例えば曜日や天気、日付などを気にしながら調整しながら来ている。
かなりの努力をしているのだが、その努力はいまだ報われない。後残っていることは、月日・時間・曜日・天気全てを合わせることだ。そんなことをしていたら、俺は死んじまう。月を合わせるのにしても1年かかる。
だからといって、とにかく飛び降りてみるということもできない。
これからどうするか。何を試すか。
そんなことを考えていた夜だった。
俺はいつものように仕事帰りあのビルの屋上へ向かっていた。