表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宇宙最高ブラディ・オン  作者: 蟹谷梅次
第1部 流れ星
27/33

第27話 星、散って

 マイトが宇宙基地の掃除をしていると、近くにあった星が輝くのが見えたが‥‥‥それはどうやら爆発らしかった。


 マイトにスムージーをおねだりしようと執務室から抜け出して近くまで来ていたジャックが足早に窓に近づいてくると、視線はそれに釘付けになった。


「ジャック大将、星の終わりっていうのは‥‥‥」

「そのはずがないな。あの星は人こそいないものの、自然が多く‥‥‥というより、まだ生命が生まれて二億年しか経っていない若い星だし、宇宙連邦の見立てによれば、あと五十億年は生きると言われていたデプーンという星だ。死ぬような星ではないんだ」

「え、じゃああれは」

「いくら自然は予測を裏切ると言ったって、限度があろうに‥‥‥こ、こりゃあスムージーどころじゃないね」


 ジャックはすぐに星の破片に向かって調査隊を出した。


 サンプルを持ち帰らせれば、何かが分かるという算段だったが、専門家はそれに苦言を呈する。


「やめておくべきです!」

「あぁ!? なぜ!!」

「宇宙粒子がプラズマ化しています。あ、ありゃあ‥‥‥デレッシー爆弾の爆発によく見られる特徴です。調査用の小型宇宙船を飛ばすつもりでしょうが、それじゃあ、汚染された宇宙粒子に調査隊が汚染の影響をモロに受けてしまって、この世の終わりのカスみてぇな病気になってしまいます」

「デレッシー爆弾!? 核爆弾よりも危険な!? ありゃあ宇宙平和条例で禁止されてる代物だろ!! 製造もだ!! なんでそんなものがあるんだ!! あ、ありゃあ何様の仕業だ! 俺がゼロワンで出る! 忠言ありがとうね!」

「大将も! 無茶ですよ!」

「俺は補完者だ、汚染されてようが宇宙粒子ごとき、俺なら操れる。完璧にだ! 生体電気は飾りじゃない‥‥‥!」


 デプーンには生き物がいた。


 人類が生まれる可能性だってあった。


 それなのに破壊をするというのは、それは‥‥‥これが尋常維持機構の仕業であったとするならば、「おかしい」と思うのが普通だった。


 尋常維持機構のれんじゅうは核を使うから、デレッシー爆弾くらい普通に使いそうなものだが、しかし表向きの作戦は用意するはずで、こんなモロに「侵略行為ですよ」というようなことはしなかった。


 《それとも、上の方針が変わったのか?》


 サブローは思いながら、メインブリッジでコックピット内のジャックに通信をかける。


「ベイムくん、もし生物の遺体がのこっている状態であれば、それをいくつか回収してきてくれないか。気になる事がある」

「わかりました」

「先頭になるかもしれないからビリーも連れていきなさい」

「嫌です」

「は? あれ? 通信切れた‥‥‥」


 宇宙警備隊時代の同僚や、スキャットピード元操縦士たちは「そういう人ですから」とサブローをなだめた。


 ジャックはサブローの願いを聞き入れて、生物の遺体のサンプルをいくつか持ち帰った。


 ウサギに似たギブィという生物と犬に似たレベレベという生物で、サブローは専門家とともにこれを解析したが、その結果何らかの生物に寄生された痕跡が発見された。


「デレッシー爆弾で痕跡を星ごと焼き切ろうとしたんでしょうが、失敗だったようですね。見てください、神経を支配されたような跡がある。このモヤだ。これは、地球産寄生型生物兵器『ガイア』です」

「‥‥‥‥‥‥なぜあの星に?」

「尋常維持機構の仕業だ。ご本人に聞いてみたいところだが、奴等何処に行った?」

「ウチのレーダーにも引っかからなかったんですよ」

「サライナー社製のうちのいくつかがレーダー探知を逃れようとしていたはずだ」


 サライナー社。


 尋常維持機構との「毟り合い」を経て、その実態があらわになった宇宙船の製造企業であり、尋常維持機構に肩入れをしているという噂のあるあまり白くない企業である。


「れんじゅう、やっぱり黒じゃないか」


 バベルは怒りを向けた。


 イプシロンや宇宙連邦の捜査官が何度訪問しガサ入れをしても「わたしは無実ですねぇ」と開き直っていた。


「奴等、何をしようとしてると思う?」


 ビリーがそばでスムージーを飲んでいたジャックに訊ねた。


「どうでしょうな、れんじゅうはずっと何がしたいのかわからん。思いつく限りの悪行をしているだけで、明確な意義のない‥‥‥つまり子供のママゴトのように思える」

「当初の『死をなくす』すら守ってませんもんねー」


 ジャックのそばで資料を読み込んでいたオーゲも唇を尖らせて言う。


「お前がいた頃は?」

「カーミーさんを中心に『死をなくす』に忠実でしたよ。毟り合いで二つの派閥があるのに気が付きました。尋常維持機構、最初から人の命なんてどうでもいいと思ってんじゃないかな」

「クソどもめ」


 この時、ガラーキーは大宇宙出版という出版社の新聞アーカイブを確認しており、怪しげな動きがないかというのを、隈無く探していた。


 大宇宙出版は宇宙全土様々な出版社を子会社化しており、アーカイブには太陽系地球の新聞までもが収められている。


 ほんとうに、何もなかった。


 尋常維持機構の、星ひとつ潰すような大規模な作戦の尻尾などというのは、何処にも見当たらず、何もない日常だけがそこにあった。


「尋常維持機構‥‥‥」


 サブローは訓練室の壁に背をかけながら目を細めて呟く。


「どうしました?」


 訓練室の常連だったザナジィ・サン・ララサイが汗を拭きながら訊ねた。


「今更ながらに、こちらを馬鹿にする名前だと思ったんだ」

「尋常維持機構か。たしかに‥‥‥『何事もないですよ』‥‥‥だなんて、鼻で笑われているみたいだ」

「そういうことだよ。レベリアスさんに伝えておかないとな。今度の戦いは『毟り合い』のような、ガキの喧嘩じゃあなさそうだって」

「そうなんですか?」

「最悪、俺も出る」

「教官自らが? 止してください、教官はもうセカイダーには乗らんでください!」


 ザナジィは慌てながら言った。


 サブローはほほ笑み、まだ十六歳ほどの少年の頭に手を置いた。


「殺し合いは‥‥‥殺し合いは、怖いものな」


 ザナジィは頭の上のゴツゴツした力強いはずの手が震えているのが分かり、何も返せなくなってしまった。


 それから、サブローはシコームが操縦する小型の移動用宇宙船で、コーマの跡地に向かった。


 そこはかつて「レディカノン」シャルル・サブグッドと興行的に戦った思い出の地でもある。


 ‥‥‥。


 まだ戦いを楽しめた時代。


 そこに行けばまだシャルルがいるのではないかという淡い期待で、なんなら、自分がいない分の戦力になってくれないかという期待があったが、もうステージはなかった。


 そのかわり、固定グラウンド──宇宙座標に合わせてその場に留まるように百年バッテリーがもつ特殊な十メートル✕十メートルのブロック状の建材があり、それを固定グラウンドという──があり、どうやらステージ用に使われていたものを転用したものらしいが‥‥‥そこには、ガラスのドームがあり、いろいろな星のいろいろな花が植えられていた。


「レディカノン」


 サブローは笑うように呟いた。


 シコームは久しぶりに彼の笑顔を見たので、安堵しながら、宇宙服に着替えると、そのガラスドームに降りた。


 小さな看板が花畑の前に刺さっている。


【クールガイ、お前のそうだんには乗れない】


 日本語で。


「ずいぶん勉強し直したらしいな」

「どうするんだ? こいつ以上にお前、あてあるのか?」

「どうしようか」

「シシドや俺じゃ足らんのか?」

「ブランクがあるからな。鍛え直しても‥‥‥俺が出るしかないんじゃないのか?」

「お前にもブランクはあるだろ。それに、ブランク以上のものも」

「俺は天才だから、たぶん‥‥‥」

「もうセカイダーや‥‥‥ファイターに乗るのはやめてくれ」


 サブローはそれに応えようとしなかった。


 シコームは尾を落として、「頼むよ」と念を押す。


 サブローは本来であれば宇宙に出る人ではなかった‥‥‥それが今に至っても宇宙で「戦力集め」をしているのは、シコームとしても嫌な感覚だった。


 まるで、操り人形のように、サブローが地獄への道にしがみついているように思えてならなかった。


「タキ、地球の戸籍をとるよ。‥‥‥俺の家族も呼んでさ、地球に旅行にでもいって‥‥‥気に入った田舎があれば、そこに住もう。おまえの故郷(くに)でもさ‥‥‥」

「ダン、やめろ」

「タキ、俺はお前のこと」

「やめなよ」

「‥‥‥‥‥‥」

「コーマの花が見てる。船に戻ろう」


 結局、ゴローに戦場の感覚を思い出してもらう他ないな、という話になり、ジャックは苛立ちとともに「イプシロンはまだ弱いな」というのを実感していた。


 ジャックが見ていたのは、隊員の身体能力を、専門家が鑑定した結果の表である。


「動体視力」「反射神経」「パイロット適正」「身体性能」「エスパー能力」「補完能力」の六つの項目があり‥‥‥それぞれ、「A」から「G」‥‥‥そして、「なし」のランク付けがされている。


 《補完者がいないのはまぁわかっていたとして‥‥‥エスパー能力がみんな軒並み低いな‥‥‥タキさんに至ってはエスパー能力は『なし』だしな‥‥‥ウウウウウム‥‥‥困るな‥‥‥》


 エスパー能力と補完能力は実力者あるいは才能を持つ者になるにつれて、比例していく。


 そういうのでないと、片方がなし、片方が「EからG」というようにクッソ情けないことになっている。


「どうです?」


 マイトがジャックの資料を覗き込んだ。


「ザナジィ・ララサイの‥‥‥ほら、いつも訓練室に入っている、あの少年だ。奴にも補完能力が芽生えかけているらしいが、今のうちに覚醒することはなさそうだそうだ」


 今のうちにザナジィ専用のワイヤーブレードを作っておくのもいいかもな、と思いながらジャックはマイトのほうを片目で見た。


「自分が言えたことではないけど、みんなまだ戦場に連れていけるようなれんじゅうではないですよね、たぶん。‥‥‥自分の父が軍人でした。だから、なんとなく理屈は分かります」

「いいんだ、これで。最初から持っている人間が明日を担ったらカスみてぇなことにしかならない。当人が壊れるか‥‥‥世界が壊れるか、だ。俺は、彼らを導きたい。マイト、スムージー頼めるか?」


 机仕事にある程度区切りがつくと、今度はシミュレーションマシンに二時間ほど籠る。


 帰り際、ログを見るとサブローが練習をしているらしいのがわかるので、舌打ちをした。

サブロー  187センチ

バベル   180センチ

ジャック  196センチ

ビリー   170センチ

ガラーキー 160センチ

ハイ    158センチ

マイト   165センチ

ゴロー   180センチ

オーゲ   179センチ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ