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第13話

 食事が始まって10分くらいたった。みんなおいしそうに食べている。


 食べ始めたときはみんな無言だったけど、しばらくしたらいろいろ話し出した。


 ご飯を食べながら話すってすごく楽しい。お腹も幸せだし、話してる俺たちも幸せな気分になる。


 「やっぱジャイファルって言ったらトマトチキンステーキだよな」


 颯人がうまそうにチキンをほおばる。


 「何言ってんだよ。チーズチキンステーキの方が断然うまいって」


 俺と颯人は、客観的に見たらとても低レベルな争いをしていた。でも本人たちは本気だ。


 「どっちでもいいでしょ。どっちもおいしいし。でも、私はサラダうどんだけどね」


 夢乃はつるつるとサラダうどんをすする。うまそうだ。


 いやいや、ダメだ。俺はチーズチキンステーキ派だ。揺れちゃダメなんだ。


 「私はチキンステーキはレモン派かな。今日はドリアにしたけど」


 花音、惜しい。そうじゃないんだよ。やっぱチーズなんだよ。


 「ほんと、どっちでもいいよな。な、愛瑠」


 「ほんと、どっちでもいい~」


 珍しく、彼方と愛瑠の意見が合っている。今日は意見が分かれることが多かったんだけど。


 彼方はハンバーグをきれいに食べ終わり、愛瑠はパスタをおいしそうに食べていた。



 

 食べ終わった後は、みんなでポテトをつまみながらドリンクバーで話ながら過ごした。


 「もうすぐ夏が来るけど、みんなでやってみたいことない? せっかく6人で集まったんだから、何かイベントやりたいよね」


 夢乃は両肘をテーブルについて、手と手を組みながら前のめりになってそう言った。


 その仕草、ちょっとかわいすぎないか。


 「いいね。夏休みになったら部活も余裕あるだろうし」


 「だよな彼方。俺みんなで海に行きたい! やっぱ夏って言ったら海だろ」


 彼方の言葉に、颯人が食い気味に反応する。海って、お前女子の水着が見たいだけだろ。まあ、俺も別に見たくないなんて思ってはないけど?


 「颯人~。私たちの水着見たいだけでしょ~。ヘンターイ」


 愛瑠がそれはそれはうれしそうに颯人をいじる。


 「いや、ほんとそんなんじゃないって。夏と言ったら海でしょ、って思っただけで」


 颯人も開き直っている。俺にもそんな恥ずかしいことを堂々と言える度胸がほしいかもしれない。


 「慎一も~、あたしの水着姿見たい~?」


 ちょっと、ここで俺に振らないでくれ。何て言っていいか分からないだろ。


 「いや、えっと、その」


 「ふ~ん。慎一って案外ムッツリ~」


 答えられないうちに、愛瑠にそう断定されてしまった。


 「海、かー。家に帰ったらお兄ちゃんに聞いてみるね。お兄ちゃんならいいとこ知ってそうだし」


 夢乃の兄さん、帰ってきてるんだな。大学サッカーで活躍してるはずだけど。


 「決まったら、3人で水着買いに行こうよ、ね花音」


 ずっと緊張した表情だった花音を和らげるように、夢乃は言った。夢乃のこういうスキル、俺もできればほしい。


 「水着? 俺もほしいんだよね。一緒に行ってもいい?」


 おい颯人、間違ってもそれだけは言わない方が良かったんじゃないか。


 夢乃と花音があきれたような、軽蔑したような表情で颯人を見ている。当然だよな。


 「じゃあ海でけって~い。時期と場所は、また連絡するね~。いいよね慎一~」


 どう考えても愛瑠が仕切ってるのに、俺に確認するのね。これってリーダーなのかほんと?


 「みんながいいならいいよ。俺も、夏どこか行きたかったし」




 夏のイベントが決定した後は、それぞれ話したい相手と話したいことを話した。


 颯人は隣の愛瑠の方をずっと見て話している。一生懸命気を引こうとしているけど、愛瑠は余裕の表情でのらりくらりとかわしていた。時々俺の方をチラチラ見てくるけど、俺は気づかないふりをすることにした。


 目の前の颯人が愛瑠の方を向いているからか、花音は俺に話しかけてくる。


 話してみると、いろいろな新しい発見があった。


 「え、花音の家ってお医者さんなの? すごいね」


 「ありがとう。お父さんとお母さんが一緒にやってて、子供の頃から憧れてたんだ。だから、将来は医者になって病院の跡を継ぎたいと思ってるの。私、1人っ子だしね。医学部受かるか分からないけど」


 花音は控えめな感じに言った。だけど、その奥に誰にも曲げられない強い意志を持っていると感じた。


 改めて、今日のガーリー? って言うんだっけ、女の子らしい格好が、部活で見てる姿といい意味でギャップがあって、近くで見てると自分の心臓の鼓動が早くなっているのが分かる。


 聞いた話だと、花音は成績も相当優秀らしくて、成績優秀な夢乃より更に上らしい。


 「すごくいい夢だと思う。俺って夢っていう夢がないからうらやましいよ」


 「慎一のお父さんお母さんって先生なんだよね。先生にはならないの?」


 俺は思いっきり首を横に振った。


 「いや、両親を見てるから、先生には絶対にならないって決めてるんだ。先生ってブラック過ぎだよ」


 いやほんと、父さんも母さんも常に忙しそうだしね。


 「それに妹にも『お兄ちゃんには先生は絶対ムリ』って言われてるし」


 「そんなことないと思うけどな。いいなー妹さん。私も妹ほしかったんだ」


 花音は両手のひらを自分の前で縦にして重ね、少し指を交差させながら本当にうらやましそうな表情を見せた。


 そうかな。あんなうるさかったら優しい花音でもさすがに嫌になると思うんだけど。


 「ほしいなら、うちの妹あげようか? 花音の妹になら喜んでなると思うよ」


 「もう。そんな冗談言っちゃダメだよ」


 俺はふと右側を見た。夢乃が彼方と話している。


 2人の話している様子は、友達の俺から見てもとても絵になるものだった。


 「彼方って、サッカー以外の趣味ないの? なんか、サッカー以外のこと考えてなさそう」


 「そんなことないよ。アプリで海外サッカー見るのも好きだし、サッカーゲームも好きだしね」


 夢乃は彼方のサッカーバカっぷりを知って苦笑いしている。


 「サッカー好きなんだろうな、とは思ってたけど、そこまでとは知らなかったよ」


 夢乃はおかしそうに笑っている。彼方はそれを優しく見守っている。


 いやー、これはお似合いって言われても仕方がないわ。俺なんかが入る余地なんてなさそう。


 夢乃が俺の視線に気づく。


 「どうしたの、慎一」


 「いや、2人が話しているの楽しそうだなって思って見てた」


 「じゃあ、一緒に話そうよ」


 それからは4人で楽しく話した。時々、愛瑠や颯人が入ってきてたけど。


 


 気がつくと時計は3時を回っていた。もう4時間もいたのか。あっと言う間だな。


 「じゃあ、そろそろ帰ろうか、慎一。いいだろ、愛瑠」


 彼方は全体を見て帰る時間だと判断したみたいだ。一応俺に聞いてるけど、明らかに愛瑠に気を遣ってるよね?


 「ま~、最初にしては良かったかな~。次は来月ね~」


 「来月って言うと、次はテスト明けかな?」


 「それもだけど、みんなでテスト勉強しようぜ」


 「それいいな。やろう」


 そんなことを言い合いながら「しんいち会 第1回オフ会」が終わった。


 ジャイファルから出ると、俺たちは二手に分かれた。花岡市組と、ひなた市組だ。


 彼方と愛瑠は南ヶ丘中、颯人が轟中で、方向としては同じだった。


 「じゃ、俺たち帰るから。またね」


 「またな!」


 「また後でね~。女子LANEで今日のこと振り返ろ~」


 そう言って、3人は帰って行った。ていうか、女子LANEってあるんだ。男子も作らないとな。


 「じゃあ、俺たちも帰ろうか」


 「うん」「そうだね」


 そう言って、俺たちは自転車に乗って花岡南駅を目指した。


 何か、今日の俺たちって、色んな絵の具がきれいに混ざったみたいでいい感じだったな。

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