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第12話

 「次は、私の番、かな」


 花音が話し出す。表情を見ると、少し緊張しているようだ。


 それもそうだろう。花音は夢乃とまだ知り合ったばかりだし、彼方や愛瑠に至っては、全くと言っていいほど接点がなかったはずだからだ。


 「高山花音、です。は、颯人と同じ6組です。陸上部で短距離が専門。陸上以外で好きなのはピアノで、今でも家で弾いてるよ」


 言い終わると、花音はふぅ、と息を吐いた。


「緊張しなくて大丈夫だよ、私たちもう友達だし」


 すっと、夢乃のフォローが入る。夢乃のこういう、周りを見てうまくサポートをするところを、俺は中学のころからすごくいいなと思っていた。


 「そうだよ~。緊張しなくていーから~。それで~、好きなタイプは~? この中にいる~?」


 愛瑠も気遣いを……って、それじゃ逆に追い詰めてるじゃないか。


 花音は顔を真っ赤にしてうつむいている。恥ずかしいんだろうな、きっと。


 「花音、無理して言わなくて大丈夫だからな」


 俺も、精一杯の言葉をかける。それぐらいしか、俺にはできない。


 「ううん。大丈夫。好き、なタイプは、……優しくて、かっこいい人」


 花音も言ったよ! そして出た、「かっこいい人」。やっぱだよねー女子って。


 「そうなんだ~。この中にはいるの~?」


 愛瑠が追撃をやめない。彼方が心配そうに見て何か言おうとしたが、愛瑠がそれを目線だけで制した。


 「……この中、には、いない、かな」


 花音は震える声で、何とかしぼり出したって感じで言った。


 「もうそこへんでいいだろ、愛瑠。花音が困ってるって。次は俺の番だ」


 「待ってました~。楽しみ~」


 愛瑠から熱い視線が伝わってくる。その愛瑠を颯人がじっと見つめている。何なんだこの状況は。


 「俺は園山慎一。陸上部で短距離が専門。初心者だけど颯人と花音のお陰で楽しくなってきたよ。好きなことは……、ベタだけどゲームかな。最近あんまりできてないけど」


 「好きなタイプは~?」


 すかさず愛瑠がツッコんでくる。分かってるよ、言うよ!


 「好きなタイプか。あまり考えたことなかったけど、一緒にいて楽しい人、かな」


 我ながら無難な答えだな、と思っていたけど、思いのほかみんなは真剣に聞いてくれている。


 「ふ~ん。この中にはいないのかな~?」


 きたきた。愛瑠からの追撃。分かってるって。


 「本音を言うと、このグループの誰といても俺は楽しいよ。みんな、いい奴ばかりだし。だけど、今はまだ、この中で誰とかそういうのはないかな。俺、もっとみんなと仲良くなりたい。そっちの方が先だよ」


 「何かごまかされた感じ~。でも、いいこと言ったかも~」


 珍しく、愛瑠が褒めてくれた。結構うれしい。


 「私も、慎一と同じで、もっとみんなと仲良くなりたい」


 花音が同調してくれた。


 「そうだよな。ありがとう花音」


 「ううん」


 花音はなぜか少し恥ずかしそうな顔をしている。何でだろ?


 「ほんと、慎一にしてはいいこと言ったかもね」


 夢乃は、冗談めかしながらも俺を認めてくれた。でもなんか言い方が気になるんだよな。


 「なんか、慎一だけいい思いしてないか?」


 「別にしてないって」


 颯人の声色はうらやましそうだ。いや、そんなことないからね、絶対。


 「実際に、結構いいこと言ったからね。いい思いをしたかは分からないけど」


 彼方は常に冷静だ。俺と同い年なのに落ち着きがある。友達だけど、ちょっと憧れるわ。


 「じゃあ、私で最後かな。雛崎夢乃、慎一と同じひなた市の西園寺中出身だよ。部活はサッカー部のマネージャー。大変だけど、毎日すごく楽しい。好きなことはお菓子作りで、週末は結構作ってるんだ」

 夢乃はすらすらと自己紹介した。大体知ってる内容だけど、休日にお菓子作りをしているのは知らなかったな。


 「好みのタイプは~?」


 愛瑠って必ず聞くよなこれ。やっぱり気になるんだろうか。


 「好みのタイプってあんまりないんだけど、そうだね、ずっと一緒にいられる人かな。一緒にいてもお互いを尊重できて、いい意味で気を遣わなくていい人がいい」


 へぇ、そうなんだ。夢乃、なんかいいこと言うな。


 俺も、そういう相手がいい。なんて、みんなの前で言えるわけないけど


 「へぇ~、この中ではどーなの~? 夢乃も告白を断りまくってるじゃ~ん」


 確かに俺の知っている限りでは、夢乃はもう4回は告白を断っている。ひょっとしたらそれ以上かも知れない。


 夢乃は愛瑠の言葉を想定していたみたいで、余裕の表情で笑った。


 「この中にいるのかなんてまだ分からないよ。でも、私も彼方と同じで焦ってない。中学でいろいろあったから、高校ではちゃんと自分から好きになれる人を見つけたいって思ってて。だから、私のことよく知らないで告白してくれる人は、申し訳ないけど断ってる」


 みんな、夢乃の言葉に素直に感心していた。


 しっかりしてるな、夢乃って。自分にも他人にも誠実、って感じがする。


 「私、すっごくいいと思う」


 花音は特に共感した様子で、夢乃に熱い視線を送っている。


 「俺も、いいと思うな。何となくだけど、俺と考え方似てると思う」


 彼方がそう言う。言われてみれば、この2人は色んな意味で似てるんだよな。


 すかさず、愛瑠が言葉を差し込んでくる。


 「2人ともお似合いじゃ~ん。付き合っちゃえば~?」


 うわーそれ言うか今。え、これどうなるの? まさか、とか?


 見ている側は何が起こるんだろうとそわそわしている。


 でも、2人とも冷静だった。


 「彼方って確かにイケメンだしいい人だけど、今んとこないかな、って気がする。考え方は似てる気がするけど、同じ部活でいい友達って感じだし、そっちの方が今は大事だと思う」


 「俺も同意見だよ。夢乃はマネージャーもすごく一生懸命だし、話してても明るくて楽しいけど、夢乃とはできればいい友達でいたい。周りからは、なんで付き合わないんだって何度も言われるけど、そんなの他人が決めることじゃないよな」


 2人とも、周りから「お似合いだ」とかさんざん言われ慣れてるのか、さらっと同じような答えが返ってくる。


 本当に、今のところはお互いを友達以上には思っていない感じだった。でも、お似合いだとは思う。


 全員の自己紹介が終わったころ、注文していた食事がやってきた。


 「おっけ~。自己紹介も終わったし~、食べよっか~。慎一号令ね~」


 愛瑠からリーダーっぽく言われるのも、だんだん慣れてきた気がする。


 「いただきます」


 みんなお腹すいていたみたいで、それまでワイワイ話していたのが嘘みたいに無言になった。


 やっぱりジャイファルのチーズチキンステーキはうまいよな~。なんでみんな、チーズチキンステーキ注文しないんだろ。

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