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君の手は雨より冷たい「修正版」  作者: 紡雪
第二章

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65/65

第65話 君のお彼岸

「お邪魔します〜」

そう言って勝手に零の家に来た美結。それに対して零はリビングから大声で「勝手に入るな〜」と言う。

「ダメだった?」

「別にいいけどさぁ〜」

零はため息を着きながら、やれやれと言った顔で美結を迎える。

「何しに来たんだ?」

リビングからの質問に美結は

「今日はお彼岸でしょう?」

そう、今日は9月20日。秋のお彼岸だ。

「お盆の時来てくれたからわざわざ来なくてもいいのに…」

(あんなクソ親父のためにこんな……)

零はそう思いながらリビングから玄関に来ると、そこで初めて美結が1人で来たのではないと気づいた。

「あの…お邪魔します」

「愛芽も来たのか?」

美結の後ろにひょこっと顔を出していたのは愛芽だった。


「美結ちゃんに誘われて…お邪魔だった?」

(お彼岸だから愛芽も…家にいた方がいいんじゃ……)

そこまで考えるが、零はせっかく来てくれたのにそんなことを考えるのは良くないと感じる。

「いや…とりあえず上がれよ。昼飯は食べてくか?」

「食べてく〜!!」

手を上げながら元気よく言う美結。

「まぁ、その前に…」


そう呟いて零の家に来た目的を果たすべく、零の母親と父親の写真立ての前にゆっくりと座る。

そして、ロウソクに火をつけ、線香を近づけ火を移す。線香を少し振って、立てる。

最後に”おりん”を鳴らす。

甲高い音が長く続く間、美結は両手を合わせて目を瞑る。

(久しぶり…おばさん、おじさん。)


しばらくして、美結は目を開けて立ち上がる。同様に愛芽も同じようなことを行い、立ち上がる直前愛芽は写真立ての隣に1句の短歌が飾られているのに気づく。

(短歌?)

疑問を持ちながら読んでみると、


今の世は 季節は二つ 照してる 玲瓏の先 今夏と冬


(少し言葉が変なような……)


「ご飯できたぞ〜!!」

出されたご飯はとても美味しそうなカレー。

愛芽は美結と共に席に着く。

「まさか…」

カレーを見た美結はつぶやく。そして一口食べた美結はさらに叫ぶ。

「おばさんの味だ!!」

そして一口食べた愛芽もまた、「美味しい!!」と叫ぶ。そしてすぐに美結は

「零!おばさんの味再現できたの!?」

「ああ、何度も試行錯誤してな!」

改めて知った美結は静かに愛芽に悟られぬように涙を流す。

(懐かしい…あの時のカレー………)


零は席から立ち上がり、母の写真立ての前に行く。

「でも、まぁ、母さんの味には敵わないな」


ご飯を食べ終えた3人は解散し、しばらくして零はお墓参りに向かった。

「母さん……」

目を細めて空を向く。一瞬でも忘れたことのないあの出来事。無慈悲にも母さんを奪ったあの”病気”

(でもその”病気”にかかったのは偶然ではない)

零は握りこぶしを強く作り、身体を震わす。


原因はあの”クソ親父”だーーーーーーーー


13年前……

「お父さん!!見て!!雪だるま作った!!」

家の庭で雪だるまを作って遊んでいる零の家族。

「おぉ…よく出来てるじゃないか!」

そこで零はお父さんがたばこを吸っていることに気づく。

「お母さん!またお父さんがたばこ吸ってる〜!」

零は逃げるようにお母さんに抱きつきに向かい、飛び込む。

「あらあら…」

逃げられてしまったお父さんは頬をポリポリかいて、たばこの火を消す。

「お母さんのお手てずっと冷たい〜」

零はお母さんに抱きつき、不思議そうに小さな手でお母さんの手を触る。

「そうねぇ〜」

お母さんは零の頬に人差し指でちょんっとつつく

「冷たい〜」

あはは〜と笑いながら指を掴んで楽しむ零を見てお母さんは笑顔になる。


「ほら!お父さんたばこはもう消したから!こっちにもおいで〜!!」

遠くで手を広げて叫ぶお父さん。


こんな平和な時がずっと続けば良かったのに……その次の年……


「あれ?零?」

零はその愛芽の声にびっくりして思わず後ずさる

「そんなにびっくりしなくても〜」

「ちょっと……考え事してて」

そこまで零が言うと何か変に感じたのか愛芽は

「そっか…」

人差し指を零の頬に優しく当てる。

「でも、何かあったら気軽に話してね〜」

そう言って愛芽は帰る。


そしてしばらく零は人差し指で触れられた頬を触って立ちすくんでいた。

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