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君の手は雨より冷たい「修正版」  作者: 紡雪
第二章

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第64話 君の相合傘

卓球場ではインターハイを終えた日向が、最後の挨拶をしていた。

「2年生は2年間、1年生は半年ほど、ありがとうございました!!」

深くお辞儀をして再び前を向く。

(日向先輩も引退か……つらいな…)心の中で零は考える。

「明日からは君が部長だよ〜零くん。」

真面目な顔だった日向の顔は笑顔に変わり、

「頑張ってね!!」

「はい!!」

零は大きな返事をして部長の称号を受け継ぐ。

その後、最後の試合をすることになる。

「愛芽ちゃん、手加減なしでいくわよ!」

「勝ちますよ!」

日向が気合いに愛芽も負けずと意気込む。


「頑張ってください。愛芽様!」

「そこ!星香ちゃん!様呼びじゃなくて先輩呼びにして!」

零はびくっと反応する。

星香は相変わらず愛芽のことを”様”呼びする。零は自分で蒔いた種なので、心が苦しくなる。

「すいません。なんか呼び慣れちゃって」

そう謝る星香の隣で角笛はラケットを持つ。

角笛のその行動に気づいた零は

「それじゃあ俺達も試合をするか?」と、試合に誘う。

「はい!ぜひ!」


そうして日向先輩との最後の部活は終了した。


部活が終わり帰ろうと、廊下を歩いていると

ザーーーーー

雨の音が聞こえる。

(今日は晴れの予定だったはずだけどな……)

そう思いながらバックから折りたたみ傘を取り出す。

そして、靴箱で靴に履き替え、帰ろうとした。

「愛芽… 」

厚い雲で太陽は遮られ、外は真っ暗。明かりは学校の小さいライトのみ。その明かりはこの暗い靴箱全体を照らしきれず、悲しげに空を見上げる愛芽の姿を僅かに照らしていた。

愛芽は突然雨が降る外へ走ろうとしていた。

「待て!いくら治療したからって水はダメだろ!?」

叫ぶ零に気づいた愛芽はこちらをむく。そして苦笑いで……


「傘…忘れた……」

こう言うのだった。


「忘れたって…愛芽……傘をか?」

「うん…パパは今日仕事で迎えには来れないから走って帰るしかなくて……」

「なんだ、そういうことなら話は早い。」

零は傘を広げて愛芽に近づくと


「傘入れよ、送ってく。」

「へっ?」

頬を赤くして素っ頓狂な声を上げた愛芽。その動揺した対応に対して何事もなく零は傘を近づける。

(零は何も思わないの?)

その……”相合傘”について……


1度どうしようか迷って愛芽は「……ありがと」と、言いながら傘に入る。

暗い中、ちゃんと顔が見えなかったため、近づいたことで零は愛芽が顔が赤いことに気づいた。

「どうした?顔が赤いぞ?」

「いや…」

「まさか!アレルギー反応か!?」

「だ、大丈夫。」

「そ、そうか?」


愛芽は改めて思い切って傘に入り直し、2人は歩き出した。

ドクンッ!ドクンッ!

愛芽の心音は騒がしかった。

(零は…ドキドキしないのかな〜?)

ふと零の方に目を向けると、零はなんともない顔で歩いていた

(はっ!!)

(まさか…相合傘を知らない?)

確かめなければ!そう思った愛芽は早速行動に移す。

「零、零!!」

「なんだ?」

「こういうのって…なんて言うんだっけ〜?」

ちらっと再び零の方に目を向ける。

「えっと……お天気雨?」

少し迷ってから絞り出すようにそう答える零。

(そうだけど!そうだけれども!!)

ずこっと、心の中でツッコミをいれる愛芽。


(いつものようなかわいい反応が見えない…)

少しムキになりかけたが、今日は助けて貰っているので、からかうことを躊躇う愛芽。


先程のかわいい反応が見えないというのもひとつの理由だが、愛芽にはもうひとつ理由があった。

(やっぱりドキドキしているのは私だけだったのかな?)

再び愛芽の頬はほんのり赤くなる。


(あっぶねぇ〜!!!気にしないわけないだろう!?助けるためとはいえ、好きな人と”相合傘”だぞ!?)

心の中では零はテンパっていた。

次からかわれたら確実にボロが出てしまう。そんなことは分かりきっていたため、これ以上からかわれないことを祈るばかりだった。


ここで雨の勢いはさらに強くなる。

(あと少しでいつも愛芽と別れる道だ。)

不幸中の幸いだと思う。

零は無意識に愛芽が雨に濡れないように、愛芽の方に傘を寄せていたため、肩の部分が少し雨で濡れていた。

ただ、零は無意識だったが、愛芽はその事に気づいていた。

(零は優しい…さっきまでからかおうとしていた自分が恥ずかしい……)


「ありがと……」

愛芽の口元は緩み、つぶやくように言う。

「うん?何か言ったか?」

その愛芽の言葉は雨の勢いが増したことによって零には聞こえていなかった。


「ありがっとう!!!」


今度は、愛芽は雨の音にも負けない声で、そして暗い空にも負けない笑顔でそう言う。


「ああ!」


零はその言葉を絞り出す。

(その笑顔は……ずるい…)

零の頬はほんのり赤くなっていた。もう片方の手で零は口を隠す。その様子を愛芽は前を向いていたので見ていなかった。

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