第63話 君のわるいこと
愛芽は席に座って考えていた。
(昨日のことは誰にも言わないでおこう……)
そこで、教室のドアがドンッ!と大きな音を立てて開く。クラスの人はざわめき出し、教室に入ってきたのは”見た目が明らかにヤンキーの男性”だった。その男は大輔の元に歩いていき、
「よう!大ちゃん!」と、声をかけるのであった。
(大ちゃん!?)
大輔の横に座っていた零は大輔の知り合いと知り、驚く。
「また来たのかよ嶋行?」
そうその男性の名前は嶋行政宏。
「おう!また誘いに来たんだ!!また”わるいこと”しようぜ!」
「しょうがない…放課後に校門集合な」
2人が約束をかわすと、嶋行と呼ばれた男子生徒は去っていく。
その会話を聞いていた零と稲木は目を点にして。
稲木が「大輔が」続いて零が「悪いこと?」と、つぶやく。
放課後。
その様子を見ていた、零と愛芽と稲木は3人で大輔と嶋行の後をつけることにした。
「今日は何からするんだ?」
大輔の質問に嶋行は「まずは”盗みだな”。」と、答える。
「むぐっ…」
(盗み!?)
零は思わず叫びそうになるが、稲木に口を抑えられて、こらえる。
「サンキュ(小声)」
「気をつけよう(小声)」
そうして、大輔と嶋行に着いていく。すると、近くの公園に着く。
「ここで盗み?(小声)」
愛芽が小声でつぶやくと、大輔と嶋行はビニール袋とトングを取り出して、”落ちている空き缶”や”お菓子のゴミ”などを拾い、袋に入れる。
「こ、これが盗み?(小声)」
零が訝しんだ顔で言うと、
「盗みというより、ボランティア活動?(小声)」
愛芽も不思議そうな顔をして言う。
「悪いことというより、いいことだな(小声)」
大輔の言葉に愛芽と零は頷く。
(ゴミを盗んだってことかな?)零がそんな事を考えていると、2人はゴミ袋を縛り、
「次は、汚しに行くぞ!大ちゃん!」
「ん?ああ、久しぶりだな。」
(汚す?今度こそ悪いことか?)
泥などで綺麗な壁を汚すなどを想像していた零だが。
2人が、壁の前で止まったことで不安になる。
(まさか本当に?)
「ここの掲示板でいいか?」
「ああ、さっさと汚しちまおうぜ!」
大輔と嶋行はすぐにバックから何かを取り出す。そしてそれを掲示板に貼った。
「あ、あれって……(小声)」
「迷子の犬探し?(小声)」
そう、掲示板には、”写真の犬を見つけたらこちらの電話番号におかけください!ご協力お願いします!”そんな文章、犬の写真、そして電話番号が記された紙が貼ってあった。
(これは、掲示板を汚したってことか?てか、無理やり過ぎない?)
零は困惑と驚きの最中でいた。
(やっぱり悪いことじゃなくて、いいことなんじゃ?)混乱する零の隣で愛芽はそう考える。
「あっ、またどこかに行くぞ(小声)」
稲木の知らせで、2人がまたどこかに行くのに気づき、再び後を追う。
そこからは……
ご老人の家の庭に生えている雑草を抜いたり、落とし物を探していたり、土地勘がない人には道を親切に教えたりしていた。
「やっぱりいい事ばかりじゃない?」
疑惑が確信に変わった愛芽は2人に聞く。
「やっぱりそうだよな?」
零も薄々感じてたため、愛芽の考えに頷く。
そこで突然、嶋行が振り返り、叫ぶ。
「おい!いい加減気づいているぞ!つけてきてるのは誰だ!?」
3人は大人しく、姿を見せる。
「誰だ?喧嘩なら売るなよ!」
再び嶋行が叫んだと同時に大輔も叫ぶ。
「零!?稲木?ってか愛芽さんまで?どうしてここに?」
少しの間があって嶋行は綺麗なお辞儀をして
「すまなかった!!大ちゃんの友達だったのか!よく大輔から話を聞くよ!!」
さっきとは打って変わる。
「顔をあげてください。つけていたこちらの方すいません…」
零が申し訳なさそうに謝ると、大輔が聞く。
「どうしてつけてたんだ?」
「それは……」
零はここまでの経緯を説明すると、大輔は笑う。
「そういう事か。俺達の”わるいこと”の”わるい”の意味は……」
「”わ”たし達の町だけでなく”る”ろうのごとく、”い”いことをする。って言う意味なんだ。」
話を聞いた3人は顔を見合せて、安堵のため息をする。
「まぁ!嶋行政宏だ!改めてよろしく!」
「よろしく!」
そして新しい友達ができた。




