第62話 君の寝顔
体育祭を終え、学校は通常の授業に戻る。6時間目開始のチャイムが鳴り、歴史の先生が授業を始める。
「久しぶりの授業ですね。今日は徳川家光の参勤交代を行った理由についてから説明していきます。教科書168ページを開いてください!」
愛芽は教科書を開く。周りを見ると、6時間目+体育祭で疲れきったのか普段寝ていないような生徒も寝ていた。
(まぁ…6時間目で歴史はキツいよね。)
愛芽はあくびを手で隠しながら思う。
ふと右を見ると、愛芽の席の隣の席で零が顔を伏せて眠っていた。
(零、爆睡してる……)
歴史の先生が黒板を向いたタイミングで愛芽は零の手の甲を人差し指でつんつんと触る。
すると……
「うぅ……」
と、うめき声をあげて再びすーすー眠ってしまう。
少し可愛い…そう思った愛芽はもっといたずらをしたいと考える。
「では…このページの本文を、大輔さん読んでください……って、」
そこで大輔を向いた時に、大輔が眠っていることに気づいた先生は
「起きてください!」
そう大輔に呼びかける。
その声で目を覚ましたのか、大輔は立ち上がり、
「はい!!唐揚げにレモンはかけない派です!!」
寝ぼけて意味不明なことを言う。
「何を言ってるんですか?」
的確に先生はツッコミを入れ、愛芽は心の中で、(唐揚げのことまだ…)そう呆れる。
(まぁ、私はデスソースをかけるのがいいと思うけど……)
そんなことを考えていると、隣の零は
「レモンをかけた方が美味しい!」
と、周りの席、つまり愛芽には聞こえる声でつぶやく。
「じゃあ、ここの音読は…”れ”」
そこまで先生が言って、愛芽は(まさか、零が呼ばれる?)そう心配になるが、
「麗美さんがお願いします。」
「はい!」
愛芽は零じゃなくて少しほっとする。それと同時に良い案を思いつく。
麗美さんが音読をしている間、愛芽は隠れて自分の手で冷たい水筒を触る。
麗美さんが読み終わった時
(そろそろいいかな?)
愛芽は先生が黒板を再び向いたタイミングで水筒から手を離した。そしてーーー
零の首元へ冷えた手を近づける。ピタッと愛芽の冷たい手が零の首元に触れた瞬間。
「冷たっ!!」
零は起きて、立ち上がる。
「どうした?」
先生は声に反応して振り返り、零に聞く。
「すいません!なんでもないです。」
「そうか…」
零は席に座り、愛芽がくすくす笑っていることに気づく。それを零は細目で見て、
「愛芽の仕業か?(小声)」
「そうだと言ったら?(小声)」
「寝てた俺が悪いけど、普通に起こしてくれないか?(小声)」
「いつものお返しよ(小声)」
(いつも?)零は疑問に思う。
「次寝たら、もっと驚かせるわよ(小声)」
その愛芽の脅しに零は肩をせばめて
「すいません……(小声)」
と、気迫に負けてしまったのだった。
(まぁ、眠い歴史の授業が楽しくなったし、それに……)
「零の寝顔かわいかったな……(小声)」
ふと呟いた愛芽のセリフに零は気づき
「何か言ったか?(小声)」
愛芽は首だけ横に振る。
そして甲高いチャイム音がなる。
放課後の時間。
部活の道具を忘れた愛芽は教室に戻っていた。すると教室から声が聞こえる。思わず愛芽は足を止める。
「美結さん!体育祭の時に言おうと思ってたけど、好きでした!付き合ってください。」
「好きな人いるので無理です。ごめんね。」
その男子生徒の告白を美結は即答で断る。
それを聞いてしまった愛芽は考える。
(美結ちゃんの好きな人って……)
……零?




