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君の手は雨より冷たい「修正版」  作者: 紡雪
第二章

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第60話 君の前では格好つけたい

「この後は2年生対抗リレーを始めます!」

(次はリレーか…俺以外のみんなは出るから暇だな〜」

自分には関係ないと零は観客席に戻ろうとした。その途中、クラスの女子2人から声をかけられる。

「零くん!!ちょうど良かった!!」

「アンカーの津上(つがみ)くんが前の競技で怪我しちゃって…治療を受けている間だけ代わりに一応リレーの列に並んでくれない?」

「リレーには出なくていいんだよな?」

「うん!”多分”間に合うから」

(リレーに出なくてもいいなら)

「わかった」

そう思った零は引き受ける。


リレーの入場の列の方に向かうと、愛芽達がいた。

「あれ?零リレー出ないんじゃなかったっけ?」

「それが……」

そこで零は事情を説明する。


「なるほどな、しかもアンカーか……」

「でも津上くんはそのうち来るんでしょ?」

心配する大輔と、のほほんとしている愛芽。

「ああ、早く来てきてくれるといいんだけどな……」


そのまま入場が終わり、

「よーいっ!!」

「ドンッ!!」

スターターピストルの音と同時にリレーはスタートする。

「頑張れ〜!!」や「ファイト〜!!」などと応援の声が四方八方どの方向からも聞こえてくる。

出だしは、零達のクラスの青組はトップで、他のカラーとの差を広げていた。

「青組速いです!!」

「赤組頑張ってください!!」

そんな盛り上げる放送が流れる。


(リレー、もう始まっちゃったんだけど…)

大丈夫だよね?そう思って、周りを思わずキョロキョロしてしまう。

すると、目に先程の2人が何かサインをしている姿が映った。

手でバツ印を作って、頑張れと言わんばかりのグッチョブの手のを見せつける。


(マジかよ……でもまぁ、勝ってるしこのまま差を広げてくれれば……)


「おっと!!ここで青組バトンを落として最下位だ!!!そして黄組がトップに躍り出る!!」

(……まじ?この状況でアンカー?)


そして青組のバトンは愛芽に渡り、

「頑張れ愛芽さん!!」

「かわいい〜!」などと多くの声援が起こる。


「頑張れ……愛芽」

零は走っている愛芽の姿を見て、小声でつぶやく。


愛芽は差をかなり縮めて、バトンを美結に渡す。

これまた愛芽と同じぐらいの人気さで、多くの声援が起こる。

「頑張れ……美結」

零はまた小声でつぶやく。

美結は赤組を追い抜かして、バトンを託す。

「青組3位に浮上してバトンを渡す!」

「そして黄組と白組はどちらも譲らず、トップを取り合う!!ここでリレーは中盤に入りました!」


(本当にアンカーの人は来ないのか……?)

零はそろそろ走る覚悟をしなきゃと思う。

(でも……いつも通り”やる気”なんて出ない……)


「零…アンカー大丈夫かな?」

走り終わった愛芽は美結と観戦していた。

「大丈夫大丈夫!零は本当はめちゃくちゃ足速いから!!……昔は!」

(昔か…)


「大丈夫だと思う!」

後ろから大輔が来る。

(騎馬戦で愛芽さんが落ちた時……零は騎馬から降りて、とんでもないスピードで走って、落ちる愛芽さんに追いついた。)

零は何かを隠している気がする。


バトンは次々と渡り、終盤に近づく。

必死に走る黄組の女子に必死に応援する親。その様子をみて零はこう思う。

(親が見に来てたら俺のやる気も少しは出るのかな?)

目立つから走りたくない。それは理由の1つとしてある。だけど、”親にかっこいいところを見せたい”とかそういう思いが湧かない。つまり、”やる気が出ない”とどうしても感じてしまう。


(まっ、本気で走ることなんて最近ないし、今走っても速いとは限らないけどな……)


バトンは稲木、そしてアンカー前の大輔にわたる。

「いけー!青組!!!」

「大輔〜!!!」

「青組速い!黄組と白組に追いついて来ている!!」

そんな放送もかかり、”責任重大”という言葉が零の脳内で循環する。


(でも…)

零はバトンを受け取る場所に立つ。

(親……か…)


俺にはもう”いない”。いい所を見せたいと思う人も……


零は(別に負けてもいいや…)(でも責任が……)(勝たないと…)(どうせ誰も見てはくれない)そんな言葉が脳内を埋め尽くす。



「頑張れ〜!!!!!零!!!」

その悩みを一瞬で晴らすかのようにその声は一直線に零に聞こえる。

「愛芽の声…」


零は目を閉じて、ゆっくり深呼吸をし、しばらくして目をゆっくり開ける。そしてゆっくり走り出す。


「零〜!!!!!」

大輔は叫びながら零にバトンを渡す。バトンを受け渡していい白線。テイクオーバーゾーンギリギリで、しかも零はスピードに乗ったままの完璧なバトンパス。


(やっぱり本気で走るよ……俺!)

親はもう”いない”けど…いい所を見せたい人は”いた”!!

(君が……)


愛芽は目を見張って零を見る。


「こっ、これは!?青組速い!!!黄組と白組を捉えて……そして!!抜かした!!!青1位!!1位です!!」


うぉぉぉと運動場中で歓声が上がる。

(こんなことを思うなんて……俺やっぱり…)

そして零は前に誰もいないレーンを走り、ゴールテープを切った。

「ゴーーール!!!1位は青組です!!!」


(愛芽のことが”好き”なんだな……)


「やったぁ〜!!零凄い!!」

愛芽ははしゃぎながら零のところに走っていく。

だが、クラスの人だけでなく、青組の3年生や1年生も零の元に集まり始めた。

(なかなか進めない……)

そう愛芽がおどおどしていると、零は胴上げをされ始める。胴上げで2回目に宙に浮いた零と愛芽は目が合う。


愛芽は口パクで”お疲れ様”と言う。

零も真似して口パクで”ありがとう”と返す。

(でもそれを素直な伝えられない……去年の夏、改めて伝えるって決めたのにな。)

でも今は……

愛芽に手でVを作って見せる。


「は〜い、ひとまず落ち着け〜」

「閉会式だ。」

担任の先生はニコッと笑う。

そんな担任の先生の話は青組のみんなの騒ぎでかき消される。


「さっさと!並べ〜!!!」

「「「はい!!!!」」」

2度目のセリフはよく聞こえたようで、はしゃいでいた青組は素早く整列に向かう。


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