第59話 君の騎馬戦
借り人競走はとても盛り上がり、終了した。
「休憩時間が終了したら、騎馬戦だな!誰がでるんだ?」
稲木が聞くと、稲木以外の零、大輔、愛芽、美結が手を上げる。
(え?俺以外全員?)
「騎馬戦に参加する選手は集合してください!!」
放送が流れて稲木以外は席から立ち上がり、収集場所に向かう。
「頑張れよ〜!」
稲木は一人で見送る。
(怪我しないといいけどな……)そう心の中で呟いて深く席に座る。
「この騎馬戦私たちの勝ちよ!」
「そうね!」
「なんでそんなに自信満々なんだ?」
急に笑い出す愛芽と美結に対して零と大輔は不思議に思う。
「騎馬戦のチームが私と美結ちゃんと奏音と……」
「麦村さんよ☆」
その名を聞いた零と大輔どころか、周りの人まで目が点になる。
「……確かに勝ち確だな」
しばらくして零が賛同する。
「本校では安全のために、騎馬の上に乗っている一人がハチマキをしているので、そのハチマキをとった数が多いチームが勝ちです!なお、騎馬が崩れると失格です!」
同じカラーのハチマキをしている人は味方。男子2チーム女子2チームが各カラーごといて全16チームで一斉に騎馬戦が行われる。
零達のチームは大輔とクラスの波状敬直と蒼井圭吾が騎馬を作り、零が上に乗る。
愛芽達のチームは美結と奏音と麦村が騎馬を作り、愛芽が上に乗る。
「よ〜い!スタート!!」
「大輔重くないか?」
零は大輔が非力であることに心配する。
「大丈夫だ!それより来るぞ!!」
黄組の男子がこちらに猛スピードで向かってくる。
「青組は今全体的にリードしてるからな、狙われるぞ!」と蒼井「カウンターをお見舞いしてやれ!」と波状が言う。
黄組の人の手が零のハチマキに触れようとした瞬間、
騎馬を作っている3人の息が合う。3人は少ししゃがみ零の頭の高さが落ち、黄組の人の手は空振る。だが、その手はハチマキを追い、下に向かう。その前に素早く零は手を伸ばして黄組の人のハチマキを取る。
「しまったっ!」
黄組の人は短く叫ぶ。ハチマキを取られたことを焦って、上を向き、少し伸ばせば取れる零のハチマキを見逃してしまう。
「ナイスだ零!」と大輔。
「よしっ!撤収だ!」と蒼井が言って、素早くその場から去る。
「おおぉと!早速青組リード!!そして、あちらの青組は果たして騎馬戦なのか!?」
愛芽の乗っている騎馬はほぼ麦村が支えていて、騎馬なのか怪しい。
「タンマタンマ!麦村さん!息吸えない!」
スピードが速くて少し涙が出ている愛芽は笑いながら叫ぶ。
「ほらどんどん取るよ」
愛芽は叫んでいるけど、なんだかんだ言って、どんどんハチマキを取る。
「青組またしても強い!!」
「こちらでは赤組ハチマキ獲得ー!!」
「おおっと!白組転落か!?いや!ギリギリで踏みとどまりました!!」
「さぁ残り3分!」
「うぉら!!」
零達は順調にハチマキを取って、現在2本。
体力が無くなってきたのか、騎馬が崩れて失格になっていくところも少なくは無い。
愛芽達は現在3本。順調だったのだが……
(ふざけないでよ!!あの女子達調子に乗って!!)
そんな順調な愛芽達を不満に思う人もいた。
(あの騎馬を崩してやる!)
「残り1分!!」
「もう一本とって優勝よ!」
白組の女の子は意気込む愛芽達に近づいて、バレないように麦村の足に自分の足を引っ掛ける。
「あっ!!」
麦村は勢いよく走っていたので、止まれず足に引っかかり派手に転びそうになる。そして、体勢が崩れて上に乗っている愛芽の危機を感じる。
「えっ…?」
愛芽も自分の危機を実感し、素っ頓狂な声を出してしまう。
「青組危ない!!」
放送の人が叫んで、その危機に全員が気づく。
(このままじゃ愛芽さんは頭から転んでしまう!!)
咄嗟にそう考えた麦村は愛芽をめいいっぱい力を込めて……
「誰か愛芽さんを!!」
そう叫んで愛芽を上空に優しく投げる。そうして騎馬は崩れる。
「うわぁ〜!!!」
宙に放り出された愛芽は目をつぶる。このまま地面に落ちると思っていた。だけど……
(あれ?痛くない?)
そう感じて目をゆっくり開ける。
「大丈夫か?」
愛芽は零にお姫様抱っこされていた。
「なんと!姫を助ける王子様登場か!?」
放送委員が言う。観客席からもひゅーなどと声が出る。そこで愛芽の頬は赤くなる。
(あれ?零も騎馬から降りてる?)
いや…私を助けるために降りてくれたの?
「ありがとう!零!!」
零は愛芽をゆっくり地面に下ろす。
「怪我がなくて良かったよ!」
「大輔達も悪いな。せっかく高順位だったのに失格になっちゃって。」
波状は「いや君は正しいよ」蒼井も賛同する。
「愛芽さんは怪我は大丈夫か?」大輔も心配する。
「私は大丈夫!ありがとう!」
後から麦村さんがやってくる。
「愛芽さん!ごめん急に投げて!」
「いやいや、むしろありがとうだよ!!あのままだったら私、頭から倒れてたもん!!」
「ここで試合終了〜!」
「ちょっといいですか!?」
大輔は放送の人に叫ぶ。
「零が間に合ってなかったら愛芽さんは大怪我をしていた。白組の行為はとても危険な行為だ!」
観客席でもブーイングが鳴る。
「わかっています!!」
判定の結果、白組の人は失格負けをした。
「ごめんなさい…あそこまで大変なことになるとは……」
「もういいですよ」
愛芽が遠慮していると零が後ろから来る。
「ひとついいですか?体育祭で楽しんで盛り上がるのはいいけど。最低限の常識は守ってください!!」
「すいません……」
そう一言言って、愛芽の手を掴んで
「行こうぜ」
零と愛芽は歩き出す。
「零、あらためてありがとうね!!」
笑顔でそう言う。
「午後に向けて昼休憩を挟みます!」




