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君の手は雨より冷たい「修正版」  作者: 紡雪
第一章

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第51話 君のいじめられた過去

「行ってきま〜す!お母さん〜!!」

「愛芽!傘は持ったの〜!?」

元気よく叫んで、家から出ていく愛芽にお母さんは声をかける。

「持ったよ〜!!」

こんな何気ない会話だが、愛芽のお母さん、千堂(せんどう)春夏(はるか)は罪悪感を覚える。

(本当にあんなアレルギーをあの子に負わせてしまって申し訳ないと思う。)


「本当に持ったのか?」

「お父さんってば心配症なんだから〜」

傘を確認して改めて愛芽は元気よく言う。

「行ってきます!」

「行ってらっしゃい!!」


今日はいつも通り、学校に行って、学んでではなく、プールの授業があった。

(今日もプールは見学か〜)

泳ぎたいけど”水アレルギー”なので愛芽は水にできるだけ触れることは基本しない。

「あいつこんなに晴れてるのに傘もってるぜ〜」

歩いていると、同じクラスの男の子は指をさして笑ってくる。

「ほんとだ〜おしゃれのつもりなのかな笑?」

その隣で女の子もまたからかう。


(好きで持っている訳じゃないのに……)

最近こういった事が増えている。

(パパとママにはバレないようにしないと……)

そう自分に言い聞かせながら朝は笑顔で振る舞う。

だけど辛いのは変わらない。ましては8歳の女の子なんだから。

プールの授業。

当然愛芽は見学だった。


「お前また見学なのかよ〜笑」

「愛芽ちゃんだって事情があるのよ!!」

「え〜でもさ!」

もちろん受け入れてくれる人もいた。だけど、それ以上にいじめも多かった。


「おい!!泳げよ!!!」

そう愛芽の腕を掴んで、プールに投げ込む。

「えっ?」

気づいた時には水の中だった。

(痛い痛い!!)

痛みで泳げない。小学校のプールは浅いため、何とかプールサイドに上がる。

「ハァハァ……」

「やっぱり見学の理由泳げないだけかよ!!」

苦しそうに倒れている愛芽にそう言って、その男の子は戻る。その後すぐ先生は来る。


「え?愛芽がプールに足を滑らした?」

電話を受け取った春夏はすぐに病院に向かう。


運良く愛芽はすぐにプールから出たので、そんなにアレルギー反応は進んではいなかった。

「3日程で退院出来ます」

「ありがとうございます!」

そう病院の先生から説明を受けて、その後改めて愛芽に聞く。


「何があったの?」

「なんでもない。本当に足を滑らしただけ。」

「そう……」

明らかに無理をしているそんな気がした春夏は間違いなく何かあったと思い、学校を転校しようと考える。


先生は生徒を危険に合わせた責任を取って教師をやめた。3日後学校に愛芽が来る前日


「愛芽の奴のせいで、先生が……」

愛芽をプールに落とした男の子が悲しそうにそういう。

「先生……」

「あいつのせい?」

本当にいい先生だったこともあって、次第にクラスの心配は怒りに変わる。


そして…………

「おい!」

愛芽は男の子に蹴られ、女の子には机にイタズラ書きをされ、クラス全体からいじめられた。

「ほれ!水が苦手なんだろ?」

そう言ってバケツに入った水を愛芽にかけようとする。

(やめて……)

そんな風にしばらくの間、いじめを受けた。


小雨が降る下校中。

目の前に3人ほど同じクラスだった子達がこちらに向かってくる。

「お前の傘借りるな〜」

愛芽をプールに落とした男の子はそう言って愛芽の傘を奪う。

(やめて……)

「なんで……?」

「なんでって…水に濡れるのがダメってお前変じゃん!!」

その男の子の友達であるもう1人の男の子は

「気味が悪いって。学校で噂になってるぜ笑」

女の子は

「傘なんていらないでしょ?」

3人は雨に濡れる私を嘲笑い、帰路に戻る。

(やめて……)


愛芽は下を向きながら重い足を1歩1歩と前に出す。

(痛い……、痛い……やめてよもう……)

やがて視界に靴が見える。

顔を上げると、1人の男の子が立っていた。

(また……いじめられるのかな?)

ぼーっとしながらそんなことを考えると、男の子はこっちに手を出す。

(やめて……)

愛芽は咄嗟に目を瞑る。だが、思っていたこととは違うことが起こる。


「お前!びしょ濡れじゃん!大丈夫か?」

愛芽は目を大きくして彼を見る。

”大丈夫”という言葉が私の頭の中で繰り返し流れる。

「私………」

よく分からないけど、愛芽はその場を離れようとした。

「待てよ!そんなに濡れて、風邪ひくぞ」

男の子はさしている大人用のでかい折りたたみ傘を私に差し出す。

「折り畳み傘……やる!」

男の子が女の子に渡す。

(え?)

「使わないから、お前が使え!」

次第に私の目から小雨が降る。

(私が……?傘を使ってもいいの?)

愛芽は何も言えずに折りたたみ傘を受け取ると男の子は走り出そうとする。


(お礼を言わなくちゃ!)

「あっ……ありがとう!あの!名前は?」

男の子は既に走っており、かすかに何か聞こえる。

正心(しょうしん)!!」


「正心くんか……」

すると、雨はやみ、暗い空は晴れていく……

「また、会えるかな?」

雲から出てきた太陽を見て愛芽は心の底からそう思う。両親以外で愛芽のことを助けてくれた”唯一”の男の子。


その後、学校を転校する事をママから伝えられた。

転校する前日。最後の学校生活はもちろん最悪で、帰り道はママが迎えに来てくれた。

「ごめんね、いつも迎えに来れるといいんだけど……」

帰路、手を繋いで歩いているママはそう言うが、愛芽は「別に大丈夫だったし〜」と言う。

「いじめられていることも我慢せず、ママやパパに言ってくれれば良かったんだよ?」

そう言う、ママに愛芽は本音を漏らす。

「私…迷惑かけたくなかったからこんな子が生まれてきて不幸だよね……」

その本音は小学生が言うようなことではなく、とても大人な気遣いだった。

そんな気遣いに春夏は笑いながら愛芽の頭を撫でる。その真面目に話しているのに、笑っていることに不満を感じた愛芽。

「本気だ……!」

”よ”愛芽がそう言いかけた時、ママは……


「私やパパにとってはね、愛芽が生まれてきてくれだけで幸せなことだから!!」

(私の方こそ、普通の学校生活を愛芽に送らせてあげれなかったことに謝りたい。)

そう感じる春夏


「本当に!?」

「本当よ!!愛してる!!」

それを聞いて愛芽は久しぶりに本当に久しぶりに心の底から笑顔が溢れる。その笑顔は近づいていた雨雲を遠ざけるほどに…………


けれど……その1年後、春夏は交通事故でこの世を去る。

「……ヒグッ……うぅ……」

愛芽はただ、泣いて……泣いて……泣いて……泣いて……泣いて……

涙でアレルギー反応が出る。

「やめろ愛芽……もう泣くなアレルギーが!」

パパは泣きながらそう言い、私の涙をタオルで拭く。

(痛い……このアレルギーは私を全力で泣かせてくれない。ママが死んじゃったのに……”涙が枯れるまで泣かせてくれない”。)


そこからパパはさらに心配症になった。

”私を守るために”

そして……愛芽は自身が水に触れるとダメなことを、より一層、隠すようになった。

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