第48話 君の番
ホテルではトランプをした。
2人でやることなんて”スピード”ぐらいだ。
それにしてもとても気まずい空間が広がっていた。
そりゃあ男女2人っきりだから。
途中大輔から電話があった。
父親は無事で朝には戻ってくるらしい。
そしてやがて…消灯の時間となった。
「まだ……起きてる?」
そんな愛芽の質問に
「ああ」
「少し話をしよ?」
「突然だけど、なんで私が入学式初日から異常なまでに馴れ馴れしかったのか分かる?」
「わからない……」
本当に零には身に覚えがない……
「それはね、何故か君に親近感が湧いたからかな?」
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれないし、私にもよく分からないや笑」
「なんだ…そりゃ。」
零は急に眠気が襲ってくる。
微かな記憶……
小雨が降り出し、私は傘を広げる。周りには”ゴボウの花”が咲いていて、懐かしい光景だ。
目の前に3人ほど同じクラスだった子達がこちらに向かってくる。
「お前の傘借りるな〜」
8歳ぐらいの男の子はそう言って私の傘を奪う。
「なんで……?」
「なんでって…お前変じゃん!!」
その男の子の友達であるもう1人の男の子は
「気味が悪いって。学校で噂になってるぜ笑」
女の子は
「傘なんていらないでしょ?」
3人は雨に濡れる私を嘲笑い、帰路に戻る。
私は下を向きながら重い足を1歩1歩と前に出し、やがて視界に靴が見える。
顔を上げると、1人の男の子が立っていた。
(また……いじめられるのかな?)
ぼーっとしながらそんなことを考えると、思っていたこととは違う出来事が起こった。
「お前!びしょ濡れじゃん!大丈夫か?」
私は目を大きくして彼を見る。
”大丈夫”という言葉が私の頭の中で繰り返し流れる。
「私………」
よく分からないけど、私はその場を離れようとした。
「待てよ!そんなに濡れて、風邪ひくぞ」
男の子はさしている大人用のでかい折りたたみ傘を私に差し出す。
「折り畳み傘……やる!」
男の子が女の子に渡す。
(え?)
「使わないから、お前が使え!」
次第に私の目から小雨が降る。
私ら何も言えずに折りたたみ傘を受け取ると男の子は走り出そうとする。
(お礼を言わなくちゃ!)
「あっ……ありがとう!あの!名前は?」
男の子は既に走っており、かすかに何か聞こえる。
「正心!!」
愛芽は目を覚ます。
「夢か…」
(最近この夢をよく見るな…)
太陽の光が差し込んでいる、時計を見ると午前5時30分だった。
愛芽は起き上がり、ホテルの外へ出る。
午前5時50分頃、零は目を覚まし、隣をみる。
(あれ?愛芽がいない…)
その事に気が付き、布団から飛び起き、近くにあった薄い上着を来てホテルの外に出る。
走って愛芽を探し出す、
海の方の砂浜に1人の女の子が立っていた…
心の中で安堵した零はその女の子にゆっくりと歩み寄る。
「風邪ひくぞ〜」
零は着ていた薄い上着を”愛芽”の肩にかける
「貸してくれるなんてやっぱり優しいね!」
少しの間の後愛芽が何かを決心したかのように口を開く
「私が引っ越すのそんなに寂しいの〜?」
「ああ、寂しいよ」
いつものようにからかって聞いたんだろうが、零は素で本音を言ってしまう。
ザブーンと波の音が響くほどに空気が静まり返る。
「だって…友達だから、寂しいに決まってるだろ?ずっとこんな日常が続くと思ってたから…」
(あらためて聞くとやっぱり悲しい……)
少し顔が笑顔になった愛芽が
「隣……座りなよ。」
砂浜をポンポンと叩く愛芽の言われた通り隣に座る。
夏祭りの時詳しくは話せなかったけど、
「キャンプの日、帰ったあとお父さんに言われたんだ。」
「引っ越すことを」
(あの人が言っていたことはあらためて本当だったのか…いや、本当だということを知っていたがそれを否定している自分がいたのかもしれない……)
「そうなのか…」
波の音が鮮明に聞こえる…それほどまでにぼーっとしているのだろう。少し風と波が強くなっている気がする。
その言葉に愛芽はニコッと笑い
「日本に心残りがあるとすれば2つかな…」
「話は変わるけど…私さいつもちょっと小さい折り畳み傘を使ってるじゃん?あれ…ある子に貸してもらってから、ずっとその子に見つけて貰えるように使ってるんだ!」
「そうか…」
確かに愛芽はいつもあの折り畳み傘を使っている
「見つけて貰えるといいな…」
「うん!」
「あと一つは……」
「へっくしょん!」
大きなくしゃみを零はする…
(まぁ、帰ってくるかもしれないし、そんなに悲しむ必要はないかな)
そう思い、ニコッと笑った愛芽は
「戻ろっか!」
そう言いながら薄い上着を零の肩にかけるその時何か腰に当たった気がした。
「そうだな…」
(しんみりしててもしょうがない今はこの日常を楽しもう!)
零はそう思い、愛芽に微笑み返し、愛芽の背中を追った。
その時……波が高くなって愛芽を飲み込む。
ザブーン!時間差で零の耳にその音が伝わる。
(嘘ださっきまであんなところまで波は来てなかった)
「愛芽!!」
零は…そう叫びながら愛芽のいたところに走る
最悪だ!
雨と風が現れ初め、やがて嵐となる
暴風に足を持ってかれそうだ!
(なんでこんなに天気が急変しっ)
「!?」
波に飲まれる愛芽の姿を見つける。
(天気なんてどうでもいい……今は愛芽を助けなきゃ!!)
「今度は俺が助ける番だ!」




