第47話 君の初めての海
零たちは朝早いってこともあり、席に座ることができた。
(ここから6駅ぐらい待つことになるな…)
「そうえばホテルの予約は大輔がしてくれたんだよな?ありがとうな!」
「ああ、俺と零は同じ部屋で愛芽さんは1人部屋で予約したぞ。」
(大輔は本当に気が利くな〜)
そう思っていると
「まもなく〜○○駅〜」
(この駅は発展している街だからたくさんの人が乗ってくるはず)
予想通り多くの人が乗ってくる。
そこでおじいさんが空いている席がないか探していた。
(ここは席を譲るべきかな)
と思い声をかけようとすると…
「ここの席座ってどうぞ!」
という愛芽の声が聞こえてきた。
だが…愛芽が席を座った瞬間……
「ラッキー」
と若者が割り込んで座る。
(最悪だな…)
「ちょっと?そこはあのおじいさんに譲ったのよ?」
「知らないね〜」
若者は席を譲る気はない。
(これ以上もみてもしょうがないか)
「おじいさんこっちの席を使ってください!」
「おじいさんこっちの席を使ってください!」
零に合わせて大輔も言う。
「大輔は座ってな、俺が立つよ」
零は大輔には座っていてほしいと思う。
今回色々予約とか諸々大輔はやってくれた感謝の意味で。
「そうか?お前がそういうなら…」
そう言うと俺はおじいさんに席を譲り
「ありがとうね!そちらのお嬢さんとお兄さんも」
零と大輔と愛芽の方を向きお礼を言う
(愛芽は立ち損になっちゃったな。)
「愛芽さん座る?」
と大輔は聞くが、愛芽は首を横にふる。
「大丈夫よ〜」
しばらくして再び放送が流れる。
「まもなく〜○○駅〜揺れが激しいため、近くの物にお掴まりください。」
周りに掴むもの…そこで席の上についている手すりを掴む。
キィーーーーという急ブレーキの高い音に電車車内が縦横無尽に揺れる。
(!?)
愛芽が零の服の裾を掴んでいた。
「ごめんね…掴むものがなくて倒れそうになったから。」
(それはしょうがない……問題はそこじゃない。揺れは収まったはずなのにまだ裾を掴んでいる。またからかってるのか…)
少し心臓の鼓動が早くなった気がした。
「次は〜○○駅〜」
「おっ!着いたな。」
そこで俺たち3人は電車から降りる
その時やっと……愛芽が裾から手を離した。
(それよりも…初めての海だ!)
「まずはホテルに荷物を預けに行くぞ〜」
という大輔について行く
荷物を預けたあと
「海だ〜!」
(広いな…)零は目を見張って海を見る。青い空に青い海。
「子供みたいね笑」
(愛芽の言葉を聞き流す、仕方ないだろう?初めて実物を見たんだから。)
「私は今回も泳がないから零と待ってるわ。大輔は泳ぎに行ってらっしゃい。」
(あれ?3分の2が泳げないのに俺たちなんで海なんか来たんだ?)
今になって思う。
「そう言うと思ってな…ビーチバレー用のボールを持ってきたんだ!これならみんなで遊べるだろ?」
「さすが大輔。できる男!」
「ちょっとまってて」
と愛芽が何かを薄い上着から取りだし肌に塗り始める。
キャンプの時に使っていた日焼け止めだ。
(やっぱり女子はそういうの気にするんだな。)
「よし、これでオッケー行こう!」
砂浜に行くと……
「3人しかいないしラリーをやろうぜ!」
その後3人はビーチバレーを楽しみ。
砂浜で砂の城を作り、海鮮丼は食べてとても満喫していた。
日が沈みかけた頃、ホテルに向かう途中
ブーブー
電話の音が聞こえる
「誰か電話鳴ってるぞ?」
「あ…俺だ」
大輔が電話に気づく。
「少しここで待っててくれ〜」
「了解〜」
大輔はすぐに戻ってくる…けれどいつもと少し違って暗い顔をしていた。
「さっき電話で親父が倒れたって連絡が来た…俺はこのまま帰る。ごめんな!俺が誘っておいてさ、しかも最後の思い出作りだったのに。」
自分の親が倒れてしまったら当然優先する。
大輔にも親を優先して欲しい。
「仕方ないよ!大輔の父親の無事を祈るよ」
「ええ…ここから病院まで距離は大丈夫?」
と愛芽が心配しながら聞く…
「電車で1駅先だからすぐに着く、心配してくれてありがとうな2人とも!悪いがここからは2人で楽しんでくれ。早めに事が済んだら戻ってくるから荷物はホテルに置いておいてくれ。」
零と愛芽は大輔の背中を見送る。
(あれ?これって……ものすごく気まずい状況では?)
「無事だといいな」
「そうね…とにかく連絡を待ちましょ」
その後、零と愛芽はホテルに着く
ホテルの人に大輔の事情を説明した後、部屋に向かおうとした時に突如ホテルの人に止められた。
「すいません。先程お電話で急遽このホテルに泊まりたいという人がいまして、ホテルの部屋が空いてなかったため断ってしまったのですが……おふたり方の部屋を一緒にして1部屋分お譲りすることは可能でしょうか?もちろんお詫びとして値引きはさせてもらいます。こちらの勝手であることは承知でお願いします。」
との説明を受けた。
(それって俺と愛芽が同じ部屋になるってことだよな?しかも2人きり?気まずい……けれど人を助けることだと思えば……)
と迷ってしまう。
すると愛芽が
「大丈夫ですよ!」
「ね?」
と零の方を向いて笑顔で言ってくる。
「まぁ……」
曖昧な返事をしてしまう。
「本当にありがとうございます!」
深々とお辞儀をして鍵を1つ渡し、愛芽の荷物を移動させに行く。




