第44話 君の諦めは悪い
試合はお互い1歩も引かず、進んでいく。スマッシュを何度も打ち込み、セットを最初に取ったのは、麗音。
「やっぱり麗音さんが負けるなんて有り得ねぇんだよな〜」
「相手は所詮、名のない高校だしな」
雪譜高校の人達は安堵する。だがその煽りのセリフは点が「11-8」と決して余裕ではなかったのを隠したかったのかもしれない。
(俺は最後まで全力で!!)
スマッシュを受けては、スマッシュを打つ。そんな持久走をしているような感覚でも諦めず、鷹梨はボールを追う。そんな余裕のない鷹梨の脳内には、昨日の記憶が蘇る。
「あのさ、日頼。明日の試合で君が頑張ったらさ、私達付き合わない?」
そんな普通じゃないあいつなりの、”鈴木”なりの告白に、鷹梨は応えたい。
(だから俺は最後まで諦めない!!)
スマッシュを打ち込む。
「イレブンナイン(11-9)」
「凄い!!」
愛芽に続いて、零達も歓喜する。そんな中、笑顔で(本当に諦め悪いよね、日頼君)と思う鈴木。
この試合が2回戦ないじょう次のセットを取った方が勝者となる。今やこの試合は会場内でも一番に注目されていて、多くの人が観戦していた。
「俺のスマッシュを何度も受けて……そろそろ腕が限界なんじゃないか?」
麗音は、はぁはぁと荒い息を吐きながら煽る。
こんなに麗音のスマッシュに耐える選手はいないため、疲労が出てきていた。
「そっちこそ……そんなスマッシュ…………何度も打って…………限界だろう?」
麗音以上に荒い息で鷹梨は煽り返す。
そこからは一進一退の攻防で点と時間だけが進んでいく。「5-5」「6-6」「7-7」「8-8」「9-9」「10-10」そして試合はデュースへと進み……
鷹梨のサーブで下回転サーブを出すと、麗音は迷わずドライブを打つ。
(一応上回転と下回転の分かりずらいサーブなんだがな……)そう思いながら
(あまりやったことはないけど、この均衡を破るにはここで予想外のことを!)
「!?」
麗音は驚く、ここでスマッシュ攻撃の多かった鷹梨が、カットをしてきたことに。
カットを麗音はドライブで返し、そのドライブを再び鷹梨はカットで返す。そのラリーは2回、3回と続いていく。
つまり……ここからは
((集中力勝負!!!))
先に集中力を切らしてミスった方が負ける。
そこからラリーは10回ほど続き、ついに鷹梨は……
(はっ!!)
鷹梨がカットをしたボールはネットにかかり、ボールはネットを越えない。
「イレブンテン(11-10)」
「ラストーーーー!!!!」
雪譜高校の観客席ではそんな掛け声が起き、零達は
「どんまい!!」と叫ぶ。
それでも人数の差は無慈悲で……
「サー!!」
麗音のサーブは鋭く、鷹梨の予想していた場所とは違う場所に来る。
(ちくしょう!!)
そう心で叫びながら腕を伸ばす。
(お前はこのサーブでも取るだろう……)麗音はそう考えながらスマッシュを構える。
鷹梨の腕をギリギリ届き、何とかサーブ打ち返すがそのボールは麗音にとっては絶好のチャンスボール。
(やはり返すか……だが、)
(これで終わりだ!!!)麗音はスマッシュを打ち込む体勢に入る。
体勢を崩した鷹梨はすぐに
(早く下がれ!あのスマッシュが来る。急げ!!!)
そう自分に言い聞かせるように体勢を崩しながら台から離れる。
鷹梨が麗音の方を向いた時には……ボールがネット際に落ちていた。
(フェイント……!?)
麗音はスマッシュを打つ体制はフェイントでネット際に短くボールを落としたのだ。
「麗音選手の勝利です。」
審判はそう宣言する。
その瞬間パチパチと会場内で拍手が巻き起こる。この拍手は紛れもなく、麗音そして鷹梨に贈られた拍手だった。
(負けた……けど、全力を尽くした!)
「楽しかったなぁ……」
”部長”の眼には雨は一切降らず、快晴だった。そんな鷹梨に麗音は駆け寄り、
「ありがとう」
ラケットを前に出しながらそう一言対戦相手に贈る。鷹梨はそのラケットに自分ラケットをコツンッと当て、2人の試合は終了した。




