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君の手は雨より冷たい「修正版」  作者: 紡雪
第一章

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42/65

第42話 君の気持ちは強い

「ツーラブ(2-0)」

「またさっきのドライブ!!」

柵を乗り出し、愛芽が喜ぶ。

「……」

私が喜ぶのとは裏腹に部長は黙ってじっと零の対戦相手を見ていた。

(なんでだろう?)と疑問に思う愛芽だが、すぐに理由はわかった。


(相手のサーブ…取りやすいのだと嬉しいけど……)

そう思い、すぐに対応できるようにラケットを構える。次の瞬間…相手は全く知らないサーブをしてきた。

(右横回転!?)

零はすぐに反対の回転をかけて、ボールを打ち返した。はずだったのだが……

「えっ?」

ボールはまるで左横回転の軌道で、零の返したボールは台とは全く違う方向に飛んでいき、アウトとなる。

「ツーワン(2-1)」


「今のボールの軌道おかしくないですか?」

愛芽が隣にいる部長に聞くと

「あれは……Ygサーブだ……簡単に言えば逆横回転をかけるサーブ。」

「ならさらに反対に打ち返せば!!」

「横回転より問題は………」


(上回転なのか下回転なのか分からない!!)

零は心の中で叫ぶ。

(横回転もそうだが、上下の回転も分かりずらいサーブなんて……)

(俺がドライブを沢山練習したように、相手はサーブに力を入れていると言うことか……)


(上回転……)

そう思い、スマッシュを打つが……

「違う、下回転だ」

部長が愛芽の隣でつぶやく。部長の予想通りボールは下に落ち、ネットに当たる。

「ツーオール(2-2)」

再びサーブを取れず、点を取られる。


「スリーツー(3-2)」

続いて

「フォーツー(4-2)」

次は零のドライブを笹村は取れず2点を取り返す。

だが、 また……

「フォーオール(4-4)」と追いつかれる。


「零もわかってると思うがこれはもう、どちらが先に相手の強みに適応するかの勝負になってきたな」

「そうね」

部長の考えに日向も賛同する。

(心配なのは、ドライブの方が腰を使うから体力が多く削られるのは零ということ……)

部長はまた静かに零を見守る。


「シックスフォー(8-6)」

そこで零がまたドライブで2点勝ち越して、再び笹村のサーブの時。その時……やっとーーーーー


(上回転!!)

バウンドしたボールが少し高い気がして、そう察する。零は思いっきり叩きつけるようなスマッシュを打ち込む。

「よし!先に適応したのは零だ!!」

そう部長がニヤッと笑いながら言う。

「やった!!」

両手を広げて喜ぶ愛芽


「セブンフォー(9-6)」

(ここで3点勝ち越しはでかい!)

そう心が弾み、笑顔が隠せない。ドクンッドクンと心臓が高鳴る。だが、顔とは裏腹に零は冷静だった。熱が冷めないように、相手がサーブをするまで、足を微かに動かし続けていた。

それと比べると、均衡が崩れた相手は焦っていた。

(まずい……あと2点で1セット取られる………)

(相手にサーブを見切られた………)

そんな不安が笹村を襲う。


「あっ……!!」

その不安は笹村の手を無自覚にも震わせて、サーブの位置がズレる。そのズレは、Ygサーブにとっては致命的だった。上回転と下回転の違いが分かりずらいという利点が消える。


(また上回転!!)

零はその失敗を見逃さなかった。再びサイドステップでボールのバウンド地点に動き、強烈なスマッシュを打ち込む。そのスマッシュに笹村は反応できない。


「テンシックス(10-6)」


「ラスト1点!ファイト〜!!!」

愛芽が観客席から叫ぶ。


(まずい……負ける、負ける……)

ここで1セット取られても、まだ1セット取られなければ負けないのに、さらにネガティブになり、ミスが多くなる。



「ふぅ〜」

零は一呼吸してから、サーブを構える。右の方へ狙うフリをしてから、左側に素早いサーブを出す。その不意打ちに笹村は何とか反応するが、何とか返すのが精一杯で零にはチャンスボールが来る。

(喰らえ!!!)

再び強烈なスマッシュが打ち込まれる。


「イレブンシックス(11-6)」


「やったな零!!」

「このまま頑張れ〜!」

部長と愛芽は祝福の言葉を言う。


(よし!!!!)

零は心の中でガッツポーズをする。1セットだろうと、零にとっては初めて試合で勝てたという喜びは一番の”バフ”となっていた。心が踊る。楽しい。ポジティブな気持ちで舞い上がる。零は卓球を心から楽しんでいた。

(もう1セット!!!)

笑顔でラケットを持つ。


どんなに強かろうと、やる気がなければ負ける可能性は高くなる。大きなミスをした時に、それを引きずればこれもまた負ける可能性は高くなる。スポーツとはやはり、結局は気持ちが試合を左右するのかもしれない。

卓球はダブルスで2人で試合をする時もあるが、基本はシングルスで1人で試合をする。このような基本1人で試合をするスポーツは支えてくれる仲間がそばにいないため、1人の人間の”気持ちの強さ”がより一層大切になる。


そう考えている鷹梨はこうつぶやく。

「勝負あったかもしれない」

笹村の様子をみるに、ネガティブな思考に陥っている。それに対して、ポジティブな思考な零。


高梨のこの予想はあたり、この後の零は強かった。

「イレブンスリー(11-3)」

笹村はネガティブな思考でミスが多くなり、零のドライブは取れないので次々と点を取り、圧倒した。

「ありがとうございました!」

「ありがとうございました……」

お互いに挨拶をして試合が終わる。


「やったぁ〜!零勝った〜!!!」


(初めての勝利……胸が高鳴る)

卓球が楽しい……!

観客席を見ると愛芽と目があい、零は笑顔で喜びを伝え、愛芽は笑顔で祝いを伝える。

「あと一勝で、あいつと……」

そうつぶやきながら、2階へ上がる。

すると、愛芽や先輩達が

「ありがとう!!」

「初勝利おめでっとう!!」

「おめ」

「ナイス!」

と祝ってくれるのだった。

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