第38話 君の救世主
今日は8月10日夏祭り当日
水神神社には多くの屋台と多くの人で溢れかえっていた。零は集合場所に向かおうとするが人が多すぎて前に進めない。
(これ...集合場所に行っても愛芽に会えるのか?)
そう思いながらも少しずつ前に進む。
すると、何故か人が避けていて人混みの中、1つの間隔が空いていた。
(なんであそこだけ?)
零はそこが集合場所の近くである会話が聞こえて来る
「君1人?一緒にお祭り回らない?」
「行きません!人を待っているんです。」
愛芽の声が聞こえたのでそちらの方向を見ると
「いいからさ!彼氏とかじゃないなら別にいいでしょ?」
と無理やり愛芽の腕を引っ張っている人がいた。
(あれってナンパってやつか?)
そう思うのもつかの間
かなり強引にその人は引っ張っており、さすがの愛芽も男性の力にはかなわずにいた。
次の瞬間俺の身体はその2人の方にとっさに動いていた。
「本当にそういうのやめてください」
「いいじゃん少しぐらい〜」
「な?」
(この人たちしつこいな…)
愛芽はどんなに断っても少しも引かない男たちにかなりいらだっていた。
(人が多すぎて、こういうのが目立ちづらいのかな?もうすぐ零が来るのに、でも……)
前を見れば数人の男性に囲まれているので抜け出すことは不可能だ。またしてもそのうちの1人に腕を掴まれ、
「あの!」と愛芽が声を上げると同時に1人の聞きなれた声が聞こえる。
「おい!俺の連れに何か用か?」
零は愛芽の腕を掴んでいる男の手を掴む。男は短く
「冷たっ!!」と驚いて愛芽から手を離す。
「え...?零?」
愛芽はその声にびっくりする。
「こいつがその待っていた人か?なぁ〜彼氏でもないなら今日はこの子とは俺が回るからまた来年来てね〜」
そんな勝手なことを言っている男性に愛芽は鋭い目つきで睨む
(私は今日!零と遊びに来たのに!)
(でも...このままじゃ零を危険な目に合わせてしまいそう……この人はその機嫌を崩せば暴力を振ってきそうだし...)
先程から容赦なく腕を掴んでくる様子からして、零が心配になり、引き下がろうとも思う。
(私達には来年は無いかもなのに...)
心の中でため息をつき、零を帰すために言葉を発そうとしたその時……
「彼氏だけど?」
そう一言、零はその男性に言葉を発する。
もちろん1番驚いたのはその男性じゃなくておそらく私。零はそんなこと言ってくれるとは思っていなかったから。
(……いや言っては、ほしかったかな。)
「それで?まだなんか用ある?」
零が男性を睨みながら言うと、男性達はやっと引き下がり
「こんな陰キャみたいなやつが彼氏だなんて……覚えとけ!」
そう言って男性は立ち去る。
(陰キャは余計だ……)
零は心の中で突っ込む。
この後、愛芽は手を掴まれて零に人混みとは離れた方向に連れてかれる。
落ち着いた愛芽は、
「彼氏なの?」
と聞いてみる。
すると零は
「ごめん勝手にあんなこと言って。身体と口が勝手に動いたというか……」
「それより、浴衣似やってるな!」
零は愛芽を褒める。
(そう……今日はせっかくのお祭りなので浴衣出来たけど、あんなトラブルに巻き込まれるなんて。)
心の中でため息をついて、心を入れ替える。
「ありがとう!それと、零が助けてくれなかったらどうなってたことか...そっちの方もありがとうね!」
そこで零が少し暗いということに気づく
「どうしたの?少し元気ないけど?」
「さっきの人に”陰キャ”って言われた……」
(あ〜これはだいぶ傷ついているやつ〜)
「まっ、気を取り直して夏祭りを楽しもう!」
そう言って私達はまずはお参りをしに神社に向かう。
(……彼氏とか浴衣綺麗だとか、少しドキドキしちゃった……なんか私がからかわれているみたいじゃん……)




