第37話 君の部長とお買い物
夏休みの卓球の練習後卓球台を片付けていると部長が話しかけてくる。
「零、今日ちょっと暇か?」
「はい、暇ですけど。」
「なら一緒に卓球ショップ行こうぜ!」
(そんなわけで…)
ラケットを買った時以来の卓球ショップに部長と来ていた。
「欲しい道具があったら言えよ、新しいシューズとか」
部長は自分が買おうとしている卓球ボール確認しながら言う。
「いえ、申し訳ないですよ」
零が否定すると部長は卓球ボールを選ぶのを一旦止めてこう言う。
「もうすぐインターハイ予選で、負けたら引退の俺たちにとってはもう後輩との交流が少ないんだ。今のうちに先輩っぽいことをしときたいんだよ」
実を言うとインターハイ予選は8月の半ば、つまりもうすぐだった。
(この試合で県大会に行けなかったら、先輩達は引退……)
寂しくなる、そう感じた。
「今頃愛芽も、鈴木に何か奢ってもらってるだろう。だから遠慮するな」
「はい……」
すると零のスマホが震え、1件の写真が届く。
その頃愛芽と鈴木は
「奢ってくれてありがとうございます!!クレープ美味しいですね〜」
愛芽は鈴木先輩に奢ってもらったクレープを一口食べて笑みをこぼす。
「そうだね愛芽ちゃん」
鈴木先輩も愛芽と同じクレープを食べてそう返す。
すると突然「あっ」と思い出すかのように愛芽はクレープを写真で撮り、零に送る。
「さっき撮ってた写真は?」
「零にクレープの写真送ったんです」
それを聞いて(青春ぽくていいなぁ〜)と鈴木は思う。
(安めの方がいいよな)
零はそう思いながら部長に買ってもらうものを選ぶ。安いものとなるとやはり……
「これでお願いします!!」
200円のカワウソの柄が入ったボールを見せる。
「それでいいのか?もっと高い物でもいいんだぞ?」
「はい!カワウソ好きなんで!それにボールはずっと思い出として残るんで」
シューズとかでも良かったのにと思っていたが、零が思い出に残る物と言った事が自分の胸にグッとくる。(思い出か……)
「ならお揃いにしよう」
部長はそう言い、”同じ”カワウソの柄が入ったボールを取る。
「ありがとうございます!!いいですね!こういうの」
「そうだな」と部長笑うと零の後ろから
「1年生にはそういうことするんですね〜」
その声の正体は日向だった。
日向は不満げにではなく、笑顔でそう言う。
「俺もいますよ」と八木もひょこっとあとから来る。
「なんでいるんだ!?」
部長が驚いた顔で聞くと
「私もお揃いで買ってくださいよ!」
日向は無視しながらそうお願いをすると、部長はすぐに「いいぞ」と返す。
(ここにいる理由は聞かない感じですか……)
日向が話題を変えて、部長の「なんでいるんだ!?」というセリフを遮って、部長はそのままのせられているのに零は心でツッコミを入れた。
(あれ?俺見えてないのかな?)そう思ってそこで「俺もいますよ」と再び八木が言う。
「八木!お前もいたのか!?」
(部長それ素で驚いてます!?)先程ガッツリ姿が見えてたし、声が聞こえていたのに八木に気づいていなかった部長に零が心の中で再びツッコミを入れる。
「部長それ素で驚いてます?」
零が思っていたことをそのまま八木が言う。
「まぁ!全員お揃いで買うか!!」
そこで自動ドアの開く音が聞こえると同時に
「あれ〜?部長!」
愛芽が指をさして言う。
「それどころか全員いるじゃん」鈴木が真顔で言う。
「なんの話していたんですか?」
愛芽が聞くと、部長の代わりに日向がひょこっと顔を出して
「カクカクしかしか」
鈴木と愛芽に今までの経緯を説明する。
「なるほど!私たちもお揃いに入れてください」
鈴木が部長に頼むと
「じゃあもう全員お揃いで買うか!!」
部長がそう宣言する。
「俺もいますよ」念の為、八木は買う前にもう一度そういった。




