第36話 君の正直な謝罪
(なんでこうなったの?)
美結は草むらの中、身動き取れずにじっと零と愛芽を見る。
3分前
美結は零が星を見て笑っている隙だらけのところを見て、いっちょ脅かしてみようと草むらに隠れていた。すると……
(愛芽ちゃん!?)
愛芽ちゃんが零の隣に座った。
(ここで私が動けば私が見てることがバレる。)
そんな事があって悪気は無いが、2人が居なくなるまで見守ることしかできなくなった。
「覚えてる?」
「え?何が?」
「夏祭りのこと」
夏祭りと聞いて、零は瞬時に「覚えてる!」と答える。答え終わると、心臓はだんだんうるさくなる。
「キャンプは終わってもまだ、夏休みは終わってないんだからまだまだ”皆”で思い出を作ろうね」
「ああ」
そう笑顔でいう愛芽を見るとさらに心臓はうるさくなって、心臓の音しか聞こえなくなる。
(静まれ!!)
しばらく沈黙が続くと愛芽は立ち上がり、
「じゃ、先に戻ってるからね〜」
「それと…お祭り結構楽しみにしてるから、覚えててくれて嬉しかったよ」
そう言って、立ち去る。
愛芽がいなくなってなお、心臓の音はなかなか鳴り止まなかった。
一部始終を見ていた美結は(もう2人付き合ってるの!?)と心中で叫ぶ。
しばらくして、零もいなくなったのでやっとの思いで草むらから出る。
「恋のキューピットはもう終わりかな?」と苦笑いをしながらテント戻る美結。
零がいない間の男子テント
零がいなくて、大輔と2人っきり、稲木は今大輔に謝る最大のチャンスだと思っていた。
(このキャンプの間、罪悪感を抱えたまま遊んで思い知った。俺は罪悪感や気まずさで100%みんなとのキャンプを楽しむことができていない……)
(これがずっと続くのは絶対に嫌だ。これ以上後悔したくない。)その気持ちが俺の背中を押してくれた。
「大輔…話さなきゃいけないことが……あるんだ。」
大輔はそう言ってから心を落ち着かせるために、深呼吸をする。
(正直に言うんだ!!!)
「なんだ?」
大輔は軽く聞き返す。
「大輔が辞書を運んでいて、俺が零に強く当たったのは覚えてるか?」
「ああ」
大輔はそう答えて思い出す。
大輔が零を手伝うために辞書を持ったが、大輔が非力だと知っていた稲木は零が大輔に”持たせている”と勘違いしてトラブルとなった。
(あれは非力だと隠していた俺にも非はあった)そう思い大輔は1度目を下に向け、再び大輔に目を向ける。
「俺はもう一度大輔に謝らなきゃいけない。」
「俺は愛芽さんに気に入られているあいつに”嫉妬”をして、大輔が非力なことを無理やり理由にして零にあたっただけだ。」
「大輔に対してもとても失礼だったごめん!!俺と友達をやめないでくれ!」
稲木は頭を下げて目をつぶる。
(今まで言うのが怖かった……けど言えた。)
けれど怖いのはここからだ。大輔がどんな反応をするのか。
(やっぱり友達じゃ……いられ……)
「そうか、”正直”に話してくれてありがとうな!!」
大輔はそう言う。
「けど……俺は謝る相手が違うと思うんだ。」
(相手が違う?)
自分の思っていることとは違う返答が来て稲木は驚く。
「本当に失礼なのは零に対してじゃないか?」
(そうか……俺はバカだな……)
稲木はそう思い、涙を流す。
(本当に…………)
「ごめん……そうだな」
「それと、俺と稲木は友達じゃない、”親友”だ。」
大輔は笑顔で話す。それに稲木は「えっ?」と声を上げる。
「一度固まった絆はそんな簡単にほどけると思うなよ?」
そう言った大輔。稲木はただ涙を流す。そして本音を話す。
「俺ぇ…昔の友達に正直に謝って………決して許されることでなかったから…しょうがないけど……友達じゃなくなちゃったんだ。だから怖かった。正直に言って大輔と友達じゃなくなるのが。」
稲木のその本音に大輔は静かに頷きながら聞いてくれた。
しばらくして稲木が落ち着き、大輔はひとつ聞く。
「零に正直に謝るのは怖いか?」
(怖い)
その質問を正直に心の中で答えた稲木は自分でも驚く。
(そっか…俺、零とも友達じゃなくなるのが怖くなってたのか……)
たった数ヶ月、その短い時間でも……
零がテント帰ってきた時、稲木は大輔と目を合わせる。(頑張れ!)大輔は心の中で頷き。稲木は零の近くに歩いていき、
「零、今までごめん!!」
そう謝罪した。
次の日の朝
朝早く目が覚めた稲木は
(零、許してくれたな……)
でも、
(今までの事はちゃんと、これからの行動で償う!!)
そう決心して稲木はテントの外へ行く。
ミーンミンミンミーン!そうセミが鳴く。
「今日は晴れたな」稲木はそうつぶやく。




