第20話 君の贖罪3
6年生の頃、俺(稲木)には 竿許庵という名前のいつも元気な男の子といつも一緒に話して、一緒に遊んだ。俺にとっては”親友”、庵が休んだ日はその日の学校がつまんなくなるほどだった。
そう、あの日は桜が学校を包み込み、涙で溢れる卒業式だった。楽しくて楽しくて仕方なかった小学校を卒業する。そんな時、俺は調子に乗った。
「俺、緊張してきた……」
庵はそう身体を震わす。
「庵はすごいよな、最優秀賞に受賞して」
稲木に言われて庵は自慢げに
「ものすごく頑張ったんだからな!色々調べて、先にこんなの作りたいって設計をして!」
「俺もあの花瓶は誰よりも綺麗だと思う。」
稲木が言うと庵は照れくさそうに
「そ、そうか?」
と嬉しさを隠せていなかった。
この小学校では、6年生の時に実際花瓶を作っている場所に行き、それぞれの人が花瓶を作り、コンクールに出す。選ばれた者は卒業式の最初に表彰される。
庵はそれに選ばれていた。
「もうすぐ始まるな」
「俺ちょっとトイレ!」
稲木は早歩きでトイレに向かう。
「緊張してんのか〜?」
と細めで稲木を見守る庵
稲木はスキップで廊下を歩き、トイレに向かう。先程も言った通り、俺はこの時調子に乗っていた。親友が表彰されるのが嬉しかったからだ。トイレに向かう途中、手が何かにあたる。次の瞬間には……
パリンッという耳が逃げたくなるような音が響く。
稲木は周りを確認してから、誰も見ていないことを確認すると、”複雑に割れてしまった花瓶”
「この花瓶って……」
その花瓶は数秒前までは綺麗な”雪”と白いうさぎなどが描かれた立派な花瓶だった。
そう、庵の花瓶だった。
卒業式が始まるまで、廊下に花瓶を飾っていると庵が昨日言っていたことを思い出す。
そこに偶然、いや必然的に庵が現れる。
稲木は心の中で必死に言い訳を考えてしまった。
「誰が割ったんだ?」
と庵はいつもより2段ぐらい低い声で言う。
「お前ではないよな?」
と稲木をまっすぐ見て、まるで割っていて欲しくないような目を向ける。
「俺の苦労を一番知ってる、”親友”だもんな?落ち着いてから、犯人を言ってくれ」
その”親友”という言葉に心を打たれ、嘘はつきたくないと思った。
「とりあえず、先生呼んでくるから落ち着いたr」
「俺が割ったんだ。」
その言葉を遮って俺はそう小声で正直に言う。
ぴたっと庵の足が止まる。次の瞬間
「ごめん!!本当に!庵がすごく努力してたのも知ってる!けど、不注意で割っちゃったんだ!」
と大声で稲木が顔を下げて謝る。
稲木の目には雨が溜まっていた。
その雨が廊下に落ちないように顔を上げる。あげた時に稲木の目に入ってきた景色は………
光のない目に俺とは比べ物にならいない数の、大粒の雨がある。その水は限界を超えて庵の頬をつたって廊下に落ちる。
やがて…一言
「は?」
とだけ庵は言う。その言葉から次々と庵の感情が溢れ出す。
「は?ごめん?いや…許せるわけないだろ!?」
庵は怒鳴る。
「正直に言って許されると思ったか!?」
稲木は再び下を向く。そこで先生が割りはいる。
「もう卒業式始まりますよ!」
そこで先生は2人の様子を見て
「って何してるんですか?庵くん?落ち着いて!」
「この花瓶はな!この花瓶は!!」
泣きながら叫び、先生は庵を連れていく。その後卒業式は行われたが、表彰はスキップされた。そして……卒業式の後、先生から叱られる。
卒業式が終了して、走り、庵を探して見つけた。必死に泣きながら言う。
「待って…庵、本当にごめんね。」
その言葉に庵は振り向かずに、庵の家とは違う方向に歩いていく。
そして最後…桜の舞う、別れの季節………
俺と庵は最悪の別れ方をした。
正直に謝らなければこんなことにはならなかった?
いや、嘘をついてもいずれバレる。その時、今以上に後悔するだろう。
(俺はどうすれば良かったんだ?)
今でも稲木はそう思う。
だからこそ、正直に大輔に謝っとき、友達でいられなくなるかもしれない。それが怖いんだ。
結局ボウリング場で大輔に謝ることはできず、ボウリングが終了し、家に帰った。




