第2話 君の気になる部活
入学してから5日ほど経過した。
そろそろ部活を決めていく時期なため、部活動見学に行く生徒が多い。今どき珍しいかもしれないが、この学校は必ず部活に入らなければ行けないというルールがある。だから仕方なく俺も部活動見学に足を運んでいた...
(文化部を色々見て回ったが卓球部もいいかもな..)
と考えていると、愛芽が話しかけてきた。
「零はどこの部活に入るの?」
「今のところ卓球部か文化部で迷っている。」
と答えると愛芽は...
「早く決めてよね、同じ部活に入るから」
などと勝手なことを言っている。
「自分の好きな部活に入りなよ」
「だって別に入りたい部活はないし、せっかくだったら知っている人がいた方がいいじゃん。」
(確かに知り合いがいるのは心強いが...からかわれる未来が見えているんだよな)
(!!)
ここでとんでもなくすごいことを思いつく
(卓球部って男女で別れているから絶対に同じ部活場所にはならないんじゃないか?)と...
早速そうしようと愛芽に
「俺は卓球部にするよ、運動をした方がいいからね!」
「そう?じゃあ私もそうする!」
と、愛芽はつられてきた
(少し酷なことをしたか?でも常にからかわれているし、たまにはやり返すのもいいか...)
そう考えて特に何も考えずに卓球部に入部届けを出しに行った。
部活当日
部長や部員たちに自己紹介をして貰った
「3年部長!鷹梨です!」
と接しやすそうな男性の先輩
「3年副部長、鈴木です。」
と優しそうな女性の先輩が自己紹介してくれた。
部員は3年生2人、2年生2人、1年生2人で全員合わせて6人程度だった。
「この部活は、人数は少ないけど卓球経験者が多いので、分からないことがあったら言ってね〜!」
と鷹梨部長が明るく言う。
「1年生は最初はラケットを持つことに慣れましょう。」
そのまま部活が始まった。
(おかしいぞ?男女で別れないで部活が始まった)
と混乱していると
「知ってると思うけど卓球部人数少ないから男女で部活わけないよ?」
と愛芽は笑顔で俺に言ってきた。
(...また愛芽に1本やられたな、というか俺の計画も全てお見通しだったのかもしれない)
でも自分がちゃんと文化部だけでなく卓球部に見学に来てればこんなことにはならなかったのでは無いか?
と感じ自分の心の中で反省をした。
でも部活に入ったからには努力して強くなろうと反省と同時に決意した。
「最初は素振りをやってみようか?」
1年生を指導してくれるのは、2年生の日向桜先輩だった。
優しくラケットの持ち方、フォームついて教えてくれる。そのため初心者の俺でもとても分かりやすく、覚えられる。なんでそんなに優しく教えてくれるかって?
それは.....
1年生の部員は俺と愛芽の2人のみだからだ!
部を継続していくために育てておきたいという裏もあるのだろうが、それにしても親切に接してくれる。
(とてもいい部活に入れたかもしれない…)
そう思った。
他の先輩達が卓球をしている方から
「チョレイ!!」や「シャー!」などと声が聞こえてくる。
(卓球って思ったより声を出すんだな)と意外に感じることもあった。
そこから卓球のサーブについて、打ち方についてを軽く教えてもらい。
「今日はせっかくだし、最後に二人で試合をしない?」
そう日向先輩が言う。
「えっと…俺達もまだ始めたばかりでまともな試合は……」
俺がそう言っていると隣で打っていた部長が汗を拭きながら。
「いいじゃないか!やってみな!」
と日向先輩に強く共感した。
「やってみる?」
愛芽が聞いてきたので
「まぁ…試しに……」
と気には乗らなかったけどやってみることにした。
「1つルールを追加しない?負けた方は勝った人の言うこと1つ聞くで」
と愛芽が俺に提案をしてきた。
「罰ゲームってことか…面白そうだな!」
そのルールに同意して試合が始まる。
「じゃあ最初だし、3ポイント先取でやって見ようか!」
「じゃあまずはサーブを決めるじゃんけんをしてみて」
日向先輩が教えてくれたので、じゃんけんをする。
「さいしょはグーじゃんけんぽん!」
俺がグー、愛芽がチョキを出した。
「よし!俺の勝ち!」
小さく呟いてよろこび、サーブ権を手に入れる。
サーブは手のひらにボールを乗せて静止し、約15cmぐらい軽くあげてからサーブを打つ。だが……
「あっ……」
見事にボールを空振る。
「あはは笑」
愛芽が声を上げて笑う。俺は恥ずかしくて耳を赤くする。
「ワンラブ(1-0)」と審判をしてくれている日向先輩が言う。
「難しい…」
すると鈴木先輩は近くに来て、
「ボールをしっかり見てラケットを当てにいってごらん?」
と優しく教えてくれる。
「ありがとうございます!」
お礼を言ってサーブを構える。
(なるほど…ボールをよく見る。)
「今度はできるかな〜?」
と煽ってくる愛芽だが、
「ポン」
と軽い音を立てて愛芽のコートに入る。俺のサーブが成功して愛芽は焦り出す。
「ほい」
「あ…」
愛芽は上手く返して俺はサーブが成功したことに喜びすぎて油断していた。ボールは俺の方のコートをバウンドして行く。
「ツーラブ(2-0)」
次のサーブ権は愛芽だった。愛芽はサーブを構えると早いボールを打つ。
「え?」
「スリーラブ(3-0)、ゲームセット」
「愛芽、お前初めてじゃないだろ?」
「えへへ、バレちゃった?」
「…まぁ負けは負けかぁ〜」
日向先輩は愛芽に
「愛芽ちゃん、強いね〜!」
部活は俺に
「これから強くなればいいさ!」
それぞれ声をかけてくれる。
「それじゃあ今日はこれで…」
「「ありがとうございました!」」
と俺と愛芽は声を合わせて言う。靴箱へ向かう途中。
「忘れてないよね?ルール」
愛芽がにやりと笑う。
(なんか……嫌な予感が…)