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橘みおん

 召喚エルフと対話した次の日。

 早朝。いつもより早く教室に到着するが、眠くて机に突っ伏していた。


「あの、大野さん。少しいいでしょうか」


 今度は橘先輩に話しかけられた。

 ヒロインから呼ばれるなんて、主人公になった気分だ。


「裕太ならまだ登校してないですよ」


 当然、本物に用があるのだろう。役目は果たした。ぼく、おねむ。


「いえ、瀬利さんではなく大野さんに会いに来ました」

「如何に?」


 予想外な返答に、脳がスッキリ覚醒してしまう。


「実は……堀田さんについて相談があります」

「相談? それこそ、裕太に相談した方が話題も確保できて一石二鳥だろ」

「瀬利さんは、その、女子の感情の機微に疎いと言いますか……」

「せやな。微妙な変化とか差異なんて、裕太にとっちゃ無きに等しい」


 彼の鈍感力は、ヒロインにまつわる事象ほど捻じ曲げていく。事態が悪化することを予想し、裏で手を回そうと動くとはなかなか気を遣えるじゃないの。


 かつて弱気なお嬢様は理想のアイドルの仮面を押し付けられ、周囲が望むような振る舞いを演じていたらしい。

 だからこそ、直近の花の言動に違和感を生じているのだろう。


「要するに、花が無理をしていないかってこと?」

「大野さんは鋭いですね。流石、瀬利さんのお友達です」

「俺も心配してたところだし、今日聞いてみますよ」


 ふぅ、ため息をこぼした

 お前ら、友人キャラに求めすぎだろうに。

 役割超過で過労死するぞ。無休無報酬な労働環境に、ブラック企業の社長らが列をなして講演会に参加したがる勢いだ。


「……ひょっとして、大野さんも疲れてますか?」

「え、何だって? 元気百倍アンポンタンですけど」


 疲労がピークに達すると、聞き間違いや幻聴が聞こえるらしい。

 つまり、裕太はいつもお疲れさんだった?

 ラブコメ主人公の難聴癖に、微粒子レベルで存在する可能性を考慮すれば、


「んー、これは熱があるかもしれません。まずは自分の体調を気にしてください」


 橘先輩が俺の額に手を当て、瞳を覗き込んでくる。


「ふふっ」

「ふふ?」


 笑われた。モブに対する哀れみか?

 憐憫の乙女に真相を問おうと、彼女は答えを出した。


「これが瀬利さんだったら、うわ! って叫んだり、顔を赤くしたり、面白い反応をしてくれます。恥ずかしがって、可愛いいんですよ」

「あー、そういうこと。俺はラブコメ主人公じゃないゆえ、ヒロインの欲しがるリアクションがヘタクソなんだ」

「ラブコメ? 主人公? 一体、それは――」


 橘先輩が余計なワードに食いつきそうになり、俺は机を叩いて立ち上がった。


「とにかく! 花の件はかしこまり。モブは急げ、校門で出待ちしてくる」

「大野さんがやる気を出してくれてうれしいです。お調子者に元気がないと、周りも暗くなっちゃいますから」

「さいで」


 廊下の階段まで歩き、向かう先が分かれた。


「心配してもらって、どうも。今度、あなたの趣味に付き合いますよ。裕太にもまだ隠してる方で構わない。口が堅いどころか、俺の話は誰も気に留めないんでね」

「な、何のことでしょう! わたし、全然エッチな秘密の趣味とかありませんからっ」


 語るに落ちたとはこのことか。

 エサを奪い合う池のコイより口をパクパクさせ、橘先輩は幼女よろしく嫌々と頭を振り続けるのであった。

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