表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/31

その4


「これでもぼくはオリュンポスの神々の一員なのです。神の使いである天使なんかよりも、むしろ位は上なのですよ。それをあなたは・・・」

「ハハッ・・・、まあ、まあ、いいじゃない、どうせこれも夢なんでしょ?」

「とんでもない、夢なんかじゃありません!」

「だって、あの時も、私、気がついたらベンチで寝てたし・・・」

「あの時はちょうど、あの場のレンタルスペースの時間が切れてしまったんで、仕方なく。まだ話の途中だったんですけど」


「レンタルスペース?」

「キューピッドの持つ力の一つです。――そんなことより、あの時の話のつづきを・・・」

「あの時の話?」

「もう忘れたんですか? 仕方ないなあ。ホントに頭の悪い人ですねぇ」


 そう言った瞬間、あきれたと言わんばかりにふわふわ浮かんでいたクピトを、ひょいとつばさが両手で掴んだ。

「覚えてるわよ。さっきから頭悪い、頭悪いって、失礼ねえ。その(あと)に『あんな話信じられない』、と言おうとしたのよ。人の話は最後まで聞きなさい」

 クピトを捕まえ、顔を近づけ(にら)むつばさの手に次第に力がこもる。

「く、苦しい・・・。て、手を離し・・・」


「大体ねえ、あなた、なんてカッコして出てくるのよ。オ〇ン〇ンまで丸見えじゃない」

 一瞬、幼児化した全裸のクピトに視線を落とし、頬を赤らめすぐに目を逸らした。


「チッ・・・。昼間はキューピッドのくせに服を着ている、とか言ってナンクセ付けたくせに・・・」

 言いながらクピトが舌打ちをした。


「あのねえ、絵の中の清らかなキューピットと、あんたの実物のそれとじゃ違うのよ!! そんな生々しいモノ・・・」

 ムッとしたつばさが、右手の中指で軽くピンとそれを弾いた。

「んあっ!!」

 その勢いで、後ろに一回転し、小鳥サイズのクピトが、白目をむいて天を仰いだ。そうして真っ赤になって怒りだす。

「イッタ~~! な、何するんですか~~!! 昼間、大人の男の裸体には興味がないって言ってたから~~。わざわざ子供の姿で現れてあげたというのに!!」


「えっ? そんなこと言ったけ・・・、でもだからって、そういう意味じゃないっての~。勘違いしないで!!」

 もう一度クピトを捕まえたつばさの両手に力が加わる。

「く、苦し・・・、勘違いって何ですか? だ、だから、あなたはショタで、少年の裸がお好きなのでしょ~~」

「ちがうから!!」

 叫んだつばさがようやくクピトをその手から解放した。


「ふぅ~、苦しかったぁ・・・」

 再びつばさの目の前をふわふわ舞いながらクピトが言った。

「――じゃあ、やっぱり大人の男性の方がお好きだと?」

「ちょ、ちょっと、言い方がアレだけど・・・。まあ、そうね・・・」

「そうですか。じゃあ、やっぱり元の大人の姿に戻ります」

「ちょっと待って! 裸はダメよ!」

「・・・どうしてですか? 今、大人の男性の裸が大好きだと・・・」

「言ってない、そんなこと!!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ